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『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』見た直後の雑感

MOVIXさいたまでリー・ダニエルズ監督作品『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』を見てきました。

作品は晩年のビリー・ホリデイが麻薬で逮捕された10年前からその時に至るまでをインタビュアーに語る内容を映像化したもので、その主軸となるのが歌手ビリー・ホリデイと連邦麻薬局の黒人捜査官ジミーとの関係を描いたもの。

このビリー・ホリデイが政府から睨まれているのは麻薬の件だけではなく、彼女の持ち曲「奇妙な果実(Strange Fruit )」に纏わる対応もある。この曲が当時人種差別で横行していたアメリカの反リンチ 抗議曲にも当たったので、政府から睨まれていた。

その模様や出所後の復活や、麻薬やアルコール依存で徐々に衰え、インタビュー後の病床の最晩年も描く。ジミーとビリーの付かず離れずや、麻薬を微妙にやったりやってなかったりな感じで見せはしてたが、その麻薬描写に関しては必要最低限で、あくまでもステージ上のビリー・ホリデイの素晴らしい歌で封殺していた。

その辺りはリー・ダニエルズ監督のビリー・ホリデイに対するリスペクトが勝り、彼女の負の部分が少なかったように思える。それよりも、政府が反リンチ抗議曲「奇妙な果実」を歌わせないヤバさや、未だに反リンチに関する法案が通ってない事実を強調していて、そっちのメッセージが強く感じられた。考えてみれば公民権運動が本格化したのは彼女の死後だから、要は公民権運動以前の問題がまだある、ということか。

そのメッセージ性に重きを置いたからか、これまでのリー・ダニエルズ監督作品と比べるとドラマ性が薄く、過去作から期待しているとイマイチな感じである。

社会派作品としての咀嚼やビリー・ホリデイという歌手の素晴らしさに触れるにはいいかな。

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