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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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2021年9月の記事一覧

 【140字小説】かんかんかん

【140字小説】かんかんかん

「かんかんかん、って聞こえるよ。」

寝室で絵本の読み聞かせ中、急に娘が言う。私には何も聞こえない。

「かんかんかん、って近づいてくるよ!」

大丈夫、何も聞こえないよ…と娘をなだめる。

「かんかんかん、来たぁぁあ!」

私の目の前で、娘は泣きながら消えていった。

 【140字小説】優しい風

【140字小説】優しい風

子供の頃は公園でバドミントンするのが好きで、「邪魔しないで」とよく心の中で風に悪態をついていた。

そんな私が今ではウィンドサーファー。「いい風来て」と願う毎日。

「相変わらず我が儘なお姫様だ」風は優しく微笑んで私のセイルを駆け抜ける。

波も私達を見て笑ってる。

 【140字小説】僕と母と写真

【140字小説】僕と母と写真

「辛い時は写真なんて撮る気になれんけどね、いつか写真見ながら『こん時辛かったね』って笑い合う未来を想像するんよ。ある意味願掛けかも知れんね。」

…そう言って俺が壊した壁の写真を撮る母。

今、壁の写真見ながら1人で笑ってるよ。
思い出と愛をありがとう、母さん。

 【140字小説】真夜中のリプライ

【140字小説】真夜中のリプライ

「お休みなさい」と呟いてログアウト。

翌朝ログインすると、私の呟きに真っ黒なアイコンの見知らぬアカウントが大量リプ。

「お休みなさい」
「無視?」
「寝たの?」
「起きてる?」
「確認に行くよ」
「…寝てたw」

驚いてアイコンを拡大すると暗闇に薄ら笑う人の顔…。

 【140字小説】なぜウチの庭

【140字小説】なぜウチの庭

 木を植えようと庭の隅を掘り返していると隣の婆さんがニコニコ話しかけてきた。

「そこはねぇ…掘らん方が幸せよ」

 無視して掘り進めると骨が大量に出た。婆さんは昔シリアルキラーだったらしい。

「…いや、人の庭!」

 怒鳴った瞬間手際良く殺られ俺も埋められた。

 【140字小説】虹と君と私

【140字小説】虹と君と私

お迎えの保育園。

西の空に薄ら日が差して長い虹。
見惚れてたら
花壇の煉瓦に蹴つまずいた。
君と見たくて
急いでヒールを脱ぎ教室に向かう。

丁度君は癇癪真っ最中。
私の頭から虹はすっぽり抜け落ちた。

夜、眠りに落ちる直前、
虹の事を思い出したけれど、
今日はもう、お休み。

 【140字小説】悩≠脳

【140字小説】悩≠脳

「悩」と言う字は「脳」と似ているでしょう?
あなたが悩んでしまうのは全て脳の仕業だったのです。つまり脳がなければあなたは悩まずに済むのですよ。取って楽にして差し上げます。

馬鹿げたこじつけ…だが悩んでいる奴は結構簡単に騙され脳を提供してくれるのだった。

 【140字小説】深夜のドライブ

【140字小説】深夜のドライブ

母の車は深夜の国道をひた走る。

後部座席の僕は
ただ流れ去る街灯と工場を見ていた。

車内には
母の好きなバンドの曲が流れていて
「悲しい時に笑うのが大人だ」
と歌ってる。

そっと覗いた母の口元は微笑んでいた。

僕は途端に
この車内が悲しみで満ちている事を知り
ぎゅっと目を瞑った。

 【140字小説】正常反応

【140字小説】正常反応

小難しい事は嫌いだから考えない…
そうやって生きてきたけど、いざ自分の身に問題が起きれば途端に慌てだす。
そんな風では駄目かい?
人間なんてそんなもんだろ?
だから今慌ててる君は至って正常。
安心して。

おかしいのは君を計画的に待ち伏せて誘拐した僕の方だから。

 【140字小説】雑草

【140字小説】雑草

「こんな雑草みてぇなガキ使えねーな」
そう言って処分されかけた私を、
「雑草と思うから雑草なのですよ」
と救ってくれた紳士。

ついて行ったその屋敷の庭は雑草だらけ草茫々の酷い有様。
立派な建物も雑草のせいで台無し。

私は「雑草は…やっぱアカン…」と悟り自ら身を引いた。

 【140字小説】カミのキモチ

【140字小説】カミのキモチ

半年に一度ここへ来る。

見つめられ、徐に貴方の手が伸び私をそっと包み込んで優しいkiss…じゃなかった、cut。

その後、普段は到底使うことの出来ない高価なシャンプーで洗われ、丁寧にゆっくりとkiss…じゃなかった、dryer。

次回も楽しみだな、美容院。

 【140字小説】Stray cat

【140字小説】Stray cat

待ち合わせ。
今日は田中家の庭。
昨日は山田家の車庫。
明日はきっと鈴木家の屋根。

こんな日々がずっと続くと思ってた。

でも貴方は突然
「もう会えない、飼い猫になるんだ」って。

そんなの絶対許さない。

苗字のない私は、今日も佐藤家の窓の外から
佐藤ミケ君を呼び続ける。

 【140字小説】神様?

【140字小説】神様?

保育園舎の裏手は静かだ。
グラウンドで遊ぶ友達の声が時折響く。

誰もいない事を確認し私は「神様」と呼んだ。
いつものように茂みからガサガサと神様が現れる。

私が午前中に園で起きた理不尽を拙い言葉で捲し立てると、いつものように頭を撫でて飴玉をくれた。

誰だったんだろう、神様。

【140字小説】素敵な目覚めの為に

朝起きられないのは、
新しい1日に希望が見出せないから。

だから私は起き抜けに
大好きなチョコレートを用意して食べる。

だけど最近チョコ程度じゃ満足できない。

本当は目覚めた時、
大好きな貴方が隣に居てくれれば良いのに。

…とか言いつつ寝起きうだうだ1時間経過中。