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コロナ禍の地域医療の現場から

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新型コロナウイルス感染拡大で、みなさんに最も身近な医療である「地域医療」が大きく変わりつつあります。このことは、テレビのコロナ番組では報道されません。40年間地域医療に関わり続け…
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#新型コロナウイルス

那珂市医師会地域・外来検査センター2021年(令和3年)度 運営報告

那珂市医師会地域・外来検査センター2021年(令和3年)度 運営報告

 那珂市医師会地域・外来検査センターも開設から今年の6月で3年目を迎えました。令和3年度(令和3年4月1日から令和4年3月31日まで)の運営報告をさせていただきたいと思います。

 月曜日から金曜日までに5日/週の運営で稼働日数は220日、計1254件の受診がありました。患者居住地別にみますと、那珂市61%、ひたちなか市16%、常陸太田市6%、水戸市5%、常陸大宮市3%の割合でした。医師会別で見ま

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2020年末に考える、在宅医療と病院医療

2020年末に考える、在宅医療と病院医療

2022年4月1日に書く序章これは、2020年12月、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)第2波が日本の社会を不安に陥れている世情の中で書きました。今は2022年4月1日です。今、第6波がピークが超えながらも、だらだらとそのしっぽを引きずっている感じです。

 皆が、COVID-19と共にある生活に慣れてしまいました。COVID-19という具体的な脅威は克服したような私たちですが、「

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「不安の時代に、ケアを叫ぶ」を読んで

「不安の時代に、ケアを叫ぶ」を読んで

身障者の自立支援に人生をかけて取り組んで来られた川口有美子さん、在宅医で緩和医療の専門家である新城拓也先生、お二人が2020年10月から2021年9月まで、電話で対談した内容の記録です。この期間は新型コロナウイルス感染拡大第2波から第5波収束までの時期に当たります。

 私が手にしているこの本は、友人である川口有美子さんから頂いたものです。頂いたからには読まなくてはいけません。ところが、普段はさら

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中小・民間病院のコロナ診療における役割

中小・民間病院のコロナ診療における役割

私が勤務する青燈会小豆畑病院は、新型コロナウイルス感染症拡大第5波の時(2021年9月)に、新型コロナウイルス専門病床10床を造って入院診療を行って参りました。42床の急性期病床のうちの21床を潰して10床のコロナ病棟を造りました。2022年の3月現在まで(第5波の終わりから第6波)コロナ診療を行ってきましたので、少し、私たちのような小さな民間病院がコロナ診療を行う意味を考えてみたいと思います。

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那珂医師会地域外来検査センター運営報告

那珂医師会地域外来検査センター運営報告

はじめに那珂医師会地域外来検査センターとは、2020年2月の新型コロナウイルスがダイアモンドプリンセス号と共に日本に上陸したとき、私達の茨城県においても、新型コロナPCR検査ができる場所を造らなければいけないという議論の元、私どもの青燈会小豆畑病院内に造られた施設です。茨城県が那珂医師会に委嘱し、さらに那珂医師会が小豆畑病院に委嘱するという面倒な手続きを経て、運営が始まりました。2020.6.29

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「65歳以上のコロナワクチン、7月いっぱいで終了」について考える。

「65歳以上のコロナワクチン、7月いっぱいで終了」について考える。

新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種を巡り、政府は目標とする7月中の完了に向け、計画を前倒しするよう自治体に働き掛けを強めている。全市区町村の86%に当たる1490自治体が7月末までに完了する見込みと回答したが、医師の確保などを前提条件にした「決意表明」にすぎない。遅れが目立つ自治体には総務省が首長に直接連絡し、相談に乗る体制も整備して接種ペースを上げる構えだ。東京新聞 web 2021/5/1

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2021.5.11「行政が新型コロナワクチン接種を、医師・看護師紹介会社に委託」の問題ー続編

2021.5.11「行政が新型コロナワクチン接種を、医師・看護師紹介会社に委託」の問題ー続編

私が、日本医師会はその力を失っていくだろうと記事を書いた2021.5.11その日の夜、こんなニュースが飛び交いました。

東京都では「まん延防止等重点措置」(まん防)が適用されており、4月20日には、新たに711人の陽性者が確認されるなど感染が拡大。3日後の4月23日には緊急事態宣言の発令が決定した。
  そうした中、中川氏が発起人を務めたのは、自民党の自見英子参院議員(45)の政治資金パーティー

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2021.5.11「行政が新型コロナワクチン接種を、医師・看護師紹介会社に委託」の問題

2021.5.11「行政が新型コロナワクチン接種を、医師・看護師紹介会社に委託」の問題

   この記事を見て、私は日本医師会の力は衰退していくだろうなぁと思いました。日本医師会が政府に対し影響力を発揮できるのは、政府の方針を医師会が指示する・または拒否する力を持っていたからです。それには、医師を束ねる必要があり、かつての日本医師会はそれができていました。
 医師会の組織は、日本医師会ー県医師会ー郡市医師会の序列になっています。地域での実働部隊は郡市医師会です。日本医師会で決めた方針を

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2020年末に考える、在宅医療と病院医療 Part.3

2020年末に考える、在宅医療と病院医療 Part.3

2020年末に考える、日本在宅救急医学会の意味
一年前には考えていなかったことですが、COVID-19拡大は、診療所や病院に、その在り方の変革を急速に、しかも厳しく、求めています。それは、お上からのお達しではなく、「変革できなければ、生き残れないぞ」という、ぎりぎりの、切羽詰まった社会的要求です。私は病院を経営していて、息苦しいような危機感を、2020年の一年間、抱き続けてきました。しかし、あまり

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2020年末に考える、在宅医療と病院医療  Part.2

2020年末に考える、在宅医療と病院医療  Part.2

COVID-19に対する日本政府の政策を考える今、2020年が終わろうとしています。先日、東京都のCOVID-19新規陽性患者数が初めて1300人を超えました。900人代からいきなり1300人代を超えてきたのです。第1波の時期であれば、きっと、市民も政府も大騒ぎしたでしょう。しかし、年の瀬と言うこともあるかもしれませんが、あまり、深刻に語られていない印象です。少し前に、今更の感もあるのですが、政府

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2020年末に考える、在宅医療と病院医療 Part.1

2020年末に考える、在宅医療と病院医療 Part.1

COVID-19拡大が地域医療に与えた衝撃
2020年が、もうすぐ終えそうです。2020年の医療界は、COVID-19対応で一年間が終わってしまった感があります。医療の現場で働いていますと、日本の医療はこれで変わってしまうな、と肌で感じています。

異変の始まりは2020年3月からでした。テレビのワイドショーで新型コロナウイルスの報道が毎日のように繰り返されはじめました。私たちの病院に直接の影響が

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小豆畑病院と地域医療

小豆畑病院と地域医療

 現在、私は、茨城県那珂市で、「青燈会小豆畑病院(せいとうかいあずはたびょういん)」という小さな病院の病院長をしています。那珂市は、人口5万5千人の小さな市です。茨城県、どんな町をご存じでしょうか?水戸黄門や納豆で有名な水戸市、宇宙兄弟で有名なJAXAや筑波大学があるつくば市、ネモフィラやロックフェスが行われることで人気の国立海浜公園があるひたちなか市、下妻物語で一躍スポットライトがあたった下妻市

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コロナ禍の地域医療の現場から

コロナ禍の地域医療の現場から

皆さん、初めまして。

 私は小豆畑丈夫(あずはたたけお)と申します。外科と救急医療を専門にする医師です。最初に、「何故、私がこんな文章を書き始めたか」をお話しさせて頂きたいと思います。それは、新型コロナウイルス感染症診療の生の姿を皆さんに知っていただきたいからです。「そんなの、テレビでさんざんやってるじゃん」と、おっしゃる声が聞こえてきそうですが、それとは、ちょっと違うのです。テレビでやっている

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