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「65歳以上のコロナワクチン、7月いっぱいで終了」について考える。

新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種を巡り、政府は目標とする7月中の完了に向け、計画を前倒しするよう自治体に働き掛けを強めている。全市区町村の86%に当たる1490自治体が7月末までに完了する見込みと回答したが、医師の確保などを前提条件にした「決意表明」にすぎない。遅れが目立つ自治体には総務省が首長に直接連絡し、相談に乗る体制も整備して接種ペースを上げる構えだ。東京新聞 web 2021/5/13

https://www.tokyo-np.co.jp/article/104001

今日は、2021/5/28です。私が病院長を務める小豆畑病院がある茨城県那珂市は、人口55000人の小さな市です。事前の那珂市の集計で、新型コロナワクチン接種を希望する65歳以上の人は15000人いることが分かっています。那珂市では、5/24から一般高齢者のワクチン接種が始まりました。ワクチン接種は以下の4つの方法で行い、予定は以下のようになっています。

1. 那珂市集団接種 (週2回、1回200名程度)
2. 3つのクリニックにおける小規模集団接種 (不定期1回6-24名)
3. 2つの病院、2つの診療所における、一般接種(連日、明らかではないが、おそらく一日20名程度)
4. かかりつけ医による、かかりつけ患者だけの一般接種(15診療所)

予約開始:5/11
接種開始:5/24

1と2、いわゆる集団接種に関しては、申し込みを行政が管理しており、受付状況がHP上に公表されています。第1期集団接種では7月中旬までに2000人の予約枠を設けていましたが、5/11の申し込み開始から数時間ですべて枠が埋まってしまいました。次回の第2期集団接種の申し込み開始は6/14からです。集団接種にもれた方達は3または4で接種を行うことになります。4はかかりつけ患者さんだけの対応で、全て診療所ですから、大きな数を稼ぐことは不可能だと思います。そうなると、頼みの綱は3になります。しかしながら、2つの病院のうちの一つは7月いっぱいまでの接種予約がいっぱいになったということで、受付を終了してしまいました。
 もう一つの病院が私の病院です。土日を除く連日、ワクチン接種を行っています。一日に20名です。しかし、これにも問題があります。本日は5/28ですが、当院では一般高齢者のワクチン接種を始めていません。なぜなら、当院は地域医療機関の医療従事者の方達(歯医者さんや薬剤師さん、ワクチン接種を行っていないクリニックのスタッフなどは、自分の職場で接種できませんから)と当院で運営している高齢者施設約入所者及び職員、約300名のワクチン接種を行っている最中だからです。一日20名以外に、施設入所者に関しては、一日に50名を接種する体制を造っていますが未だに終わりません。私達が一般65歳の接種を始められるのは、6/7からの予定です。しかし、予約だけは開始していますから、連日20名の予約で、5/28現在、9/30までの予約がすでにいっぱいになっています。
 このような状態で、那珂市が7月中に65歳の方の接種終了が可能かというと、今のままでは確実に不可能です。那珂市では接種形式の2,3、4はこれ以上の枠を増やすことは、それぞれの医療機関の限界で不可能であることは分かっています。そうすると、1の集団接種を増やすしか方法がないのですが、6/14からの第2期予約でどれだけ枠を増やせるかが、課題となります。第1期では5-6月の2ヶ月で2000名の集団接種枠を設けました。今の情報では、第2期は7-8月で3000名程度になる予想です。合計しますと集団接種で合計5000名(8月いっぱい)になる予定です。そうしますと、残りの10000名を3,4で対応することになるのです。それを7月いっぱいで・・・。どう考えても不可能です。東京都や大阪のように、大規模接種センターのようなものを茨城県の中に設置して、茨城県全体から一日に5000人接種しますよ、的なものを造らない限り、那珂市だけで対応して7月中に終えることは不可能だと思います。

 このような地域行政ー医療の状態で、86%の自治体が7月中にワクチン接種を終えると言っていること、本当なのか?と、思ってしまいます。どうしても、日本政府が地方行政に無理矢理言わしているか、地方行政が中央に気を遣っているか、のどちらかにしか思えません。もし、そうならば、太平洋戦争前夜、日本の本当の国力を国民に知らせないで、大国に戦争を仕掛けた(そして、何も知らない国民はそれを指示し続けた)大日本帝国の体質となにも変わっていないのではないかと思います。陸軍大臣から敗戦時の首相となった東条英機は、太平洋戦争の終末期に、玉砕ばかり(兵隊に玉砕命令を出す国は日本だけでした。そして、それに従う国民も日本人だけでした。アメリカでは30%以上の兵士が亡くなる作戦を立てた司令官は厳重に処罰されたそうです。)で負け続ける帝国陸海軍の報告を聞いてこう言ったそうです。「日本の兵隊さんは強いと小さい頃から学校で教わってきた。最後には、なんとかしてくれるだろう。」これを今の日本に当てはめると、菅首相がこんな風に言っているように聞こえるのです。「日本のお医者さんは、自己犠牲で勤勉に働くと聞いている。だから、外国みたいな体制を整えなくても、最後にはなんとかしてくれるだろう。」

 日本に、第2の敗戦が来ないことを祈るばかりです。

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