takeo azuhata 小豆畑丈夫

青燈会小豆畑病院 理事長・病院長 日本在宅救急医学会 発起人・理事 日本大学医学部救急…

takeo azuhata 小豆畑丈夫

青燈会小豆畑病院 理事長・病院長 日本在宅救急医学会 発起人・理事 日本大学医学部救急医学 臨床教授 日本歯科大学外科学講座 客員教授 日本在宅救急医学会を基盤に、在宅医療と病院医療をシームレスに繋ぐ、新しい地域医療を模索しています。

マガジン

  • 医療と制度 ー日本医事新報連載から2023ー

    2022年の一年間、「医療の正義」をテーマに、日本医事新報の「識者の眼」というページに、短い文章の連載をさせて頂きました。それが終わってほっとしていたところ、2023年の一年間、医療制度についての連載をご依頼頂きました。ご依頼を頂いたうれしさで快諾してしまったのですが、少し時間がたってから、ご依頼頂いた内容の適時性と意味の深さに、少したじろいでいます。  昨年1月の「在宅医が患者家族から射殺された事件」から、医師の応召義務について問われています。今年の5月には、新型コロナが感染症法2類相当から5類へ変更になります。企画者の意図を今更感じ始めて、大変なテーマをお受けしてしまったと感じています。  私たちの悪戦苦闘ぶりをお示しして、皆さんの考えるヒントになれば・・・と感じて、書き始めます。  この投稿は、日本医事新報社のご厚意でこちらに掲載させて頂いています。 2023.2.1 小豆畑丈夫

  • 地域医療講義 ー学生との対話ー

    2022年から、2週間に1度、日本大学医学部総合診療科に学ぶ大学生や研修医を対象に、地域医療についての講義をする機会を頂きました。講義後に受講生がレポートを提出してくれています。そこでの学生の質問に答えていきたいと思います。他の学生も見れるようにnote.comに掲載するアイデアを思いつきました。頑張って、書きていきたいと思います。 2023.2.3 小豆畑丈夫

  • 私的常陸国写真館

    私の故郷茨城県。私が歩いて、自転車に乗って、時には車で遠出して、撮り集めた写真を紹介します。 2022.12月に追記 最近は本を読んだり、写真集を観たり、そんなどこにも行かずに心が動いた時も、こちらに写真と一緒に短い記事を書いてます。 travelling without moving

  • そろそろ”医療の正義”の話をしよう ー日本医事新報連載からー

    新型コロナ感染拡大は、医療危機であった。危機時には、日常に隠されている社会の「矛盾と誤魔化し」が見えてくる。この機会に立ち止まってきちんと考えるべきであるが、どうも、世の中、そのようには行かないようだ。  私は、日本在宅救急医学会という学会を立ちあげ、在宅から病院までも包括して、地域医療を巨視的・複視的に構築していきたいと考えている。その視点に立っていることで、今回のコロナ危機をきっかけに、私にはいくつかの「矛盾と誤魔化し」が見えてた。それを「なんとなくの違和感」から、自分の思考の中に定着させる(写真が印画紙に浮き上がってくるように)試みをしていきたい。その経過をここに残し、皆様にも見て頂きたいと考える。 記述した内容は、2022年1月から12月まで日本医事新法で連載される「識者の眼」とリンクしています。note.comに掲載することに関して、日本医事新報社さんにご承認頂いています。

  • コロナ禍の地域医療の現場から

    新型コロナウイルス感染拡大で、みなさんに最も身近な医療である「地域医療」が大きく変わりつつあります。このことは、テレビのコロナ番組では報道されません。40年間地域医療に関わり続けてきた小さな病院からの現場レポートです。

最近の記事

医療と制度⑧

人生における「選択のパラドックス」前半  前3回の稿において、私はAdvance care planning (ACP)について考えてきた。ACPの主軸は共同意思決定であり、専門家や家族の支えを受けながら人が自分の人生の終い方を選択することである。しかし、私は思う。人は自分の人生を自ら選択できるのか?  バリー・シュワルツ(心理学者)が「選択のパラドックス」の中でこのように述べている。  “産業化された社会を繁栄させるために必要なことは、自由を最大化することである。なぜ

    • 医療と制度⑦

      かかりつけ医とACP 前2回は日本のAdvance care planning (ACP)の課題について考えました。私が考える解決法を示させていただきたいと思います。  現在、かかりつけ医の重要性が問われています。かかりつけ医は通常、「日常的に患者に接し、日常の医療を提供する医師」と考えられています。 私は、「かかりつけ医とは、その患者の疾患のみならず、生きてきた背景や家庭環境をも含めて、患者のことを一番よく知る医師」と言い換えることができると思います。かかりつけ医がなぜ大

      • 医療と制度⑥

        ACPの必要性と課題(後半)  前半では、日本にはACPが必要であると述べた。後半は、私が感じている「ACPとして行われている行為(本当の意味でのACPではない)」の問題点について述べたい。  先日、ある高齢者施設に私の患者さんが入所希望をしたとき、施設からこう言われた。 入所前に、DNAR(心停止したときの蘇生処置をしない)のACPを取ってください。それを記載した書類がなければ入所できません。   この発言にはいくつもの本質的な間違いがある。まず、ACPは取れる物で

        • 医療と制度⑤

          ACPの必要性と課題(前半)  今、なぜACP (Advance Care Planning)が必要なのか? 2-3年前から考えるようになった。やっと、自分の腑に落ちる考えに行き着いたので書かせて頂きたい。  現在の日本の医療・介護の特徴は、一人の患者さんに対して複数の施設が関与することである。私が子供の頃、町医者だった私の父は多くの人の診断から終末期までを父の病院だけで引き受けていた。患者さんは地域の方ばかりであり、その子供や孫まで診ていることも珍しくなかった。そういう

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        • 医療と制度 ー日本医事新報連載から2023ー
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        • 地域医療講義 ー学生との対話ー
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        • 私的常陸国写真館
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        • そろそろ”医療の正義”の話をしよう ー日本医事新報連載からー
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        • コロナ禍の地域医療の現場から
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        • 日本在宅救急医学会の道のり
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        記事

          医療と制度 ④

          第8次医療計画における「在宅救急医療」の重要性と、日本在宅救急医学会  一般社団法人日本在宅救急医学会は、2010年代からの在宅医療の充実化が求められる中で生まれた新しい医学会である。2015年に日本在宅救急研究会として発足し、翌2016年に一般社団法人の医学会として本格的な活動を開始した。学会発足の趣意は「“在宅医療に関わるスタッフ”と“救急医療に関わるスタッフ”が同じテーブルについて、在宅医療を受ける患者の本当の良き医療の構築を目標とする」というものであった。この趣意が

          学生との対話⑦ (小豆畑先生達が推奨する)在宅医療と連携した病院で働くために、どのような科を専攻しておくといいなどがありますでしょうか?

          在宅医療に特化すれば、今までは総合診療医がむいているとか、内科医がむいいぇいるとか、私達のように救急医がむいているとか議論されていました。  しかし、これから、在宅医療と病院医療の垣根は、どんどん低くなっていくことは間違いありません。2024年4月から始まる第8次医療計画の骨子の中に、在宅医療と病院医療の連携に関して責任を持って取り組む医療機関を選定することが行政(市や区など)に義務づけられました。  そうなると、もう、在宅医療を行いたいから何科じゃないといけないというの

          学生との対話⑦ (小豆畑先生達が推奨する)在宅医療と連携した病院で働くために、どのような科を専攻しておくといいなどがありますでしょうか?

          学生との対話⑥ 地域医療において、茨城県鹿行エリアと千葉県など、県をまたいだ協力体制を構築することは可能ですか?

          とても大切な視点だと思います。答えは、行政的には難しいが、医療機関レベルであれば可能です。 新型コロナ感染症流行が拡大したとき、重症化した患者さんの受け入れが大変難しかった時期がありました。その時、様々なレベルで対応が検討されました。その時に私が感じたのは、行政の限界です。小豆畑病院のある茨城県では、茨城県内でどの病院がコロナ患者さんが受け入れ可能で、どこがいっぱいなのか?自院で対応できないとき、行政から紹介して頂ける医療機関は?やはりそれは全て県内の医療機関で他県の情報は

          学生との対話⑥ 地域医療において、茨城県鹿行エリアと千葉県など、県をまたいだ協力体制を構築することは可能ですか?

          最近見つけた、芸術の楽しみ方

          今日は、NHK交響楽団が水戸に来てくれたので、聴きに行ってきました。 指 揮:広上淳一 ピアノ:小山実稚恵 管弦楽:NHK交響楽団 プログラム ①ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30 ②ベートーヴェン/ 交響曲第7番イ長調作品92 僕は美術館に絵を見に行ったり音楽を聴きに行くのが好きで、しばしば出かけていきます。でも、「これが好き」という意外に、芸術の楽しみ方がよくわからず何十年も来てしましました。ポップスやロックのコンサートはワクワクするので、それだけで楽し

          最近見つけた、芸術の楽しみ方

          医療と制度③

          在宅医療・ケア提供者の安全を確保するためのワーキンググループ(後半)前回は、「在宅医療・ケア提供者の安全を確保するための合同ワーキンググループ(以下、WG)」が考える在宅医療・ケアの特性とそれに伴う課題について述べた。 前述の在宅医殺害事件直後の2022年2月、一般社団法人全国在宅療養支援医協会は在宅医療を行っている医師に対してアンケート調査を行った。その結果、在宅医療を行う医師のうち、患者本人やその家族の暴力行為により身の危険を感じる経験があったと解答する割合は「毎年ある

          医療と制度②

          在宅医療・ケア提供者の安全を確保するためのワーキンググループ(前半)2022年1月埼玉県ふじみ野市において、訪問診療を行っている医師が患者家族に射殺されるという痛ましい事件がおきた。在宅医療に関わる私たちはこの事件を重く受け止め、決して許容してはいけないと考える。この事件を乗り越え、これからも質の高い在宅医療を提供してゆくためには、在宅医療・ケア提供者の安全を確保することが大切である。 2022年8月から、在宅医療に関わる医師や医療・介護スタッフが会員となっている一般社団法

          坂本龍一さんに捧ぐ

          Acceptance ー映画Little Buddha エンドテーマー に見つけた美しい秘密   この文章は、2021年2月に私が書いたものです。種々の理由でどこにも発表されませんでした。この時期、私は新型コロナウイルスとういう未知の感染症との戦いを、仲間と一緒に始めたばかりでした。不安と孤独の只中で、精神の拠り所を探していました。そんな折、私のsony walkmanにダウンロードされていたこの曲をが、たまたまカーステレオで再生しされた時に、猛烈に心に湧き起こってきた気持ち

          坂本龍一さんに捧ぐ

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          茨城県近代美術館

          茨城県近代美術館

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          学生との対話⑤ 在宅医にはどのような人間がむいていると考えますか?

           在宅医療の特徴は、患者さんが生活する自宅や施設に医療者が出向いていく点にあります。病院医療は医者のテリトリーの中で行われますが、在宅医療は患者さんのテリトリーの中に医療者がお邪魔する点が大きな違いです。  従って在宅医は患者さんの人生や家族に、深く関わっていくことが多くなります。また、社会を支えるお仕事に関わっている在宅医も少なくありません。この「患者さんの人生に深く関わる力」と「医療を通して社会を支えるに対する前向きな姿勢」が在宅医にとって求められる資質だと思います。

          学生との対話⑤ 在宅医にはどのような人間がむいていると考えますか?

          学生との対話④ 在宅医を志望する医学生はどれくらいいるのでしょうか?また、その数は増加傾向にあるのでしょうか?

           正確な統計を私は存じ上げません。しかし、感覚としては増加していると思います。しかし、これは地域医療や過疎地医療にも言えることなのですが、学生時代には在宅医療を含む地域医療に興味を持っていても、大学を卒業するまでに、外科や内科、その他の専門性の高い医療を目指す方向へ変わってしまうことが多いようです。  これは、私達地域医療医がその魅力をきちんと伝え切れていないからだと思っています。私がこの地域医療の講義を担当させて頂いているのも、学生の皆さんの質問に答えているのも、全てその

          学生との対話④ 在宅医を志望する医学生はどれくらいいるのでしょうか?また、その数は増加傾向にあるのでしょうか?

          学生との対話③ コロナ禍によりビデオ通話が広まったことは、医療連携を推進する助けになりますか?

           なると思います。新型コロナ感感染症の拡大以降、webを用いた会議が当たり前になりました。この傾向は病院においても同様です。今のところ、webを用いた医療連携は特殊の範疇にあると思いますが、おそらく、どんどん進んでいくと思います。医療連携においては、患者情報が多ければ多いほどよいので、良い医療連携を目指せば、自然とそちらの方向に進むと思います。  しかし、注意しなくてはいけないのは、webを使えば良くなるというわけではないということです。講義でもお話をしましたが、在宅医療と

          学生との対話③ コロナ禍によりビデオ通話が広まったことは、医療連携を推進する助けになりますか?

          学生との対話② 外科を志望しているのですが、外科医として働いた後にセカンドキャリアとして在宅医になることは可能でしょうか?

           可能です。実際に内科や外科、または精神科などの専門性を経た後に、在宅医療に携わる医師はたくさんいます。これからも、そういう医師は歓迎されると思います。  ただ、付け加えておきたいことは、在宅医療に携わる医師はgeneralist(総合診療)的な患者さんの見方と診療の力が求められることです。さらに、緊急時の対応能力があればさらに良いと思います。従って、私は、在宅医療には総合診療医や救急医が一番適しているのではないかと考えています。  いずれにしても、新しい勉強は何歳からで

          学生との対話② 外科を志望しているのですが、外科医として働いた後にセカンドキャリアとして在宅医になることは可能でしょうか?