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2020年末に考える、在宅医療と病院医療 Part.2

COVID-19に対する日本政府の政策を考える

今、2020年が終わろうとしています。先日、東京都のCOVID-19新規陽性患者数が初めて1300人を超えました。900人代からいきなり1300人代を超えてきたのです。第1波の時期であれば、きっと、市民も政府も大騒ぎしたでしょう。しかし、年の瀬と言うこともあるかもしれませんが、あまり、深刻に語られていない印象です。少し前に、今更の感もあるのですが、政府(内閣支持率が急速低下したためかどうかはわかりませんが)は、GO TO トラベルキャンペーンを全面中止しました。それなのに、一年延期された東京オリンピック・パラリンピックは行うと強硬な姿勢を崩しません。その理由を、COVID-19に対するワクチンが開発されたことに根拠を求めています。確かに、イギリスとアメリカで認可され、医療関係者や高齢者を対象に接種が始まっています。来年の3月には、日本でも認可される見込みです。感染拡大が止まらないことが大統領選挙にも影響を与えた米国では、早々にCOVID-19ワクチンの使用が承認されました。承認作業も異例の早さです。しかし、世界の歴史上最速で造られた新型ワクチンには、副作用の懸念が払拭できていないのも事実です。米国国民の40%が、副作用を恐れてワクチンを接種したくないと意思表示しているとのアンケート調査が報告されて、波紋を呼びました。また、ある種のCOVID-19変異株には、現在作成されたワクチンは効果がない可能性が報告されています。このワクチンが順調に接種されたとしても、国民が集団免疫を獲得してCOVID-19感染拡大が止まるまでには、2-3年の時間が必要だと試算する専門家がいます。ワクチンが、一年後の東京オリンピックに向けてCOVID-19の被害を収めてくれる特効薬になるという見解は、あまりに楽観的すぎると思います。楽観的と言うよりも、考えることから逃げている気がします。これだけを見ても、日本の政治家のご都合主義が見え隠れして、その政治生命をかけて、この国家的危機に立ち向かっているようには到底思えません。

日本政府は、先の見えないCOVID-19対策のために、普段では考えられない、ばらまきと言えるような国家財源の使い方をしています。2020年、日本政府は、医療機関に様々な経済支援を行いました。しかし、そのやり方は対象が無差別で、本当の意味でCOVID-19診療を行って疲弊している医療機関を助ける、というものではありませんでした。私には、医療機関を支えますよというパフォーマンスとしか思えません。小豆畑病院もこの支援を受けました。しかし、COVID-19感染拡大から受けた経済的ダメージは、到底、この経済支援でまかなえるものではありません。このCOVID-19による医療危機は、そんな一時的な対応で乗り切れるものではないということは誰の目にも明らかです。一病院の院長として、病院のあり方自体を変えていかなければいけない、そんなぎりぎりの局面に来ていると危機感を募らせています。

日本政府は医療機関への経済支援と同時に、コロナ不況に陥ることを恐れて金融緩和政策をとっています。そのため、株価が1990年代のバブル期に近づく勢いで上昇している、と、2020年を締めくくるニュースが今年のトピックスとして話していました。医療機関が疲弊し、飲食店が開店自粛で続けられるかどうかの瀬戸際にあり、人々の心の中に年末だというのに来年の希望が見えない中で、自殺者の増加も指摘されています。日本のGDPが28%も低下していたことが報告されています(2020年4-6月期の報告)。これは、戦後最大の低下です。その一方で、国の誘導で株価だけが上昇し、目先の利いた投資家達が利益をどんどん計上している。これが、正しい国家的危機への対処法なのでしょうか?なんか、間違っていると思いませんか?私は医療のことしかわからないので、これ以上、経済のことを話すことはできません。しかし、国の場当たり的な対策が、このような怪奇現象を引き起こしていると思わざるを得ません。日本人の政治不信は、戦後数十年間、解消されることがありませんでした。しかし、今までの不信感は、消極的不信であったと思います。「どうせ、何も変わらないから」、という諦めです。しかし、このねじ曲がった日本の社会状況が続けば、日本国民の感情は、政府に対して“諦め”から“拒絶”に変わっていくと思います。医療機関への経済支援もそうは続かないでしょう。医療保険の維持の危機が指摘されています。そうなれば、COVID-19の院内感染が原因ではなく、経済的理由から医療機関が破綻する時代が来るかもしれません。コロナバブルで経済的格差が拡大し、日本が誇る医療体制も崩れるかもしれない。もし、そんな社会になってしまったら、日本の社会のどこに希望を見いだせるのでしょうか? 私は経済のことはわかりません。しかし、医療者として、なんとか、日本の医療だけは守らなくてはいけない、そのためには、声を上げるだけではなく、自らが行動を起こさなくてはいけないのかな、とも感じています。

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