見出し画像

那珂医師会地域外来検査センター運営報告

はじめに

那珂医師会地域外来検査センターとは、2020年2月の新型コロナウイルスがダイアモンドプリンセス号と共に日本に上陸したとき、私達の茨城県においても、新型コロナPCR検査ができる場所を造らなければいけないという議論の元、私どもの青燈会小豆畑病院内に造られた施設です。茨城県が那珂医師会に委嘱し、さらに那珂医師会が小豆畑病院に委嘱するという面倒な手続きを経て、運営が始まりました。2020.6.29 月曜日から診療が始まりました。まだまだ、PCR検査が特別な場所でしかできない時期で、茨城県では6つめ、民間病院では初の施設です。写真のように壁に覆われていますが、最初は壁がなく、周りからのぞき込めば見える状態でした。そうしましたら、「あそこでコロナのPCRを行っている」との心ない非難がSNS上に相次ぎ、病院長の私もスタッフも精神的に追い込まれる事態も発生しました。少しでも風評被害を避けるために、急遽、壁を造り、写真のような形態になっています。オープンから一年以上がたち、感染拡大第5波では大忙しの大活躍でした。そのためか、今やそのような風評被害はなく、地域において頼りになる存在とご評価いただいています。しかし、地域において新しい医療を行おうとする場合、一般市民の方からあのような評価を下されることがあるのか、と、知っていることは大切だと思います。

以下の文は、那珂医師会報という雑誌に、運営報告して欲しいとのご要望があり、2021.9.27に那珂医師会に提出したものです。コロナ診療に従事される方に、少しでも参考になれば、と思い、報告させていただきます。

本文

那珂医師会地域外来検査センターの運営報告

2020年6月29日から新型コロナウイルスのPCR検査を行ってきました那珂医師会地域外来検査センター(以下、検査センター)の運営状況の報告をさせていただきます。当初週3回・各2時間の運営でしたが、開始から2ヶ月の時点で、患者増加に対応するために週5回(月曜日―金曜日)の運営となっています。医師5名で対応していますが、うち3名は小豆畑病院から、2名は茨城県内の医師の協力で診療しています。検査センターでは、新型コロナPCRだけではなく、インフルエンザ抗原検査、溶連菌抗原検査、血算・生化学検査、CT検査なども同時にできます。


 はじめに、2021年9月4日までの実績を報告します。稼働日数268日で1238人の検査を行いました。一日平均4.6人検査したことになります。男女比は、男52.7%、女47.3%でした。年齢別では多い順に、40代19.5%、30代17.9%、50代12.9%、20代12.4%、60代が10.5%でした。患者の所在地をお示しします。那珂市が50.6%、ひたちなか市17.3%、常陸太田市7.8%、水戸市6.3%、常陸大宮市4.2%、日立市4.0%、その他9.7%でした。PCR陽性者は43名で、全体の3.5%でした。
 次に8月15日以降9月4日まで、いわゆるコロナ感染第5波における状況説明をさせていただきます。この時期は茨城県全体で新規感染者数が300人/日を超える日が続き、検査センターも大忙しでした。その間の稼働日数:15日で検査件数140件でした。一日平均の検査数は9.3人であり平均の2倍以上でした。その間に陽性患者が16人あり、陽性率11.4%でした。陽性率に関しては平均(前述3.5%)の3倍弱です。7月までの陽性率は1%台でしたので、第5波到来と共に陽性率がいきなり10倍くらいに上がった感じがありました。全期間中の陽性患者43人中の16人、すなわち37%がこの3週間に発生した計算になります。
 今日は9月24日です。茨城県内の新規陽性者は、一日30人程度まで落ちています。当検査センターにおいても、検査件数は5件/1日程度まで低下し、9月15日以降、陽性患者は出ていません。一段落した印象です。


 検査センター開始から一年以上が立ち感じたことがあります。2021年4月に、茨城県医療行政のコロナ担当官が変わりました。その時は第4波と第5波のはざまで、検査件数も少ない時期でした。それを見て、担当官から検査センターの検査日数を減らすようにいきなり勧告されました。「だいたい、週三日から五日に増やした理由が書類に残っていない。私が担当になった以上、認められない。」と強硬に伝えてきました。それに対して、那珂医師会の●●さんと一緒に県庁に赴き説明をさせていただきました。書類がないのは、県が必要ないと言ってきたこと、保健所も含め周囲でPCR検査を行う機関が減っていること、少しずつ感染者数が増えてきていることなどを説明し、なんとか現在の週五日を維持することができました。那珂医師会●●●会長、●●さんのご尽力がなければ不可能であったと思います。本当に感謝しています。あの時、週三日に検査日を減らして第5波に直面したらどうなっていたのだろうと、今考えてもヒヤッとします。このような非常時の医療機関の運営は、社会の安全を守る基本的なインフラです。その運営については、慎重さとある程度の余裕を持った対応が必要だと学ばせて頂きました。皆様のご協力を頂き、一人の院内感染者も出さずに、安全に運営を続けることができています。新型コロナの重症化予防において、感染早期のPCR検査は必須です。これからも、地域のために尽力していく所存ですので、お力添えの程、よろしくお願いいたします。

那珂医師会検査センター センター長
青燈会小豆畑病院 理事長・病院長
小豆畑丈夫(あずはたたけお)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?