見出し画像

2020年末に考える、在宅医療と病院医療 Part.3

2020年末に考える、日本在宅救急医学会の意味


一年前には考えていなかったことですが、COVID-19拡大は、診療所や病院に、その在り方の変革を急速に、しかも厳しく、求めています。それは、お上からのお達しではなく、「変革できなければ、生き残れないぞ」という、ぎりぎりの、切羽詰まった社会的要求です。私は病院を経営していて、息苦しいような危機感を、2020年の一年間、抱き続けてきました。しかし、あまり、そういうことが公の場で話されていません。これは、危ないな、と感じます。医療機関が立ちゆかなくなるかもしれないという話は、社会に不安を煽ると危惧している人がいて、躊躇されているのかもしれません。しかし、「政治の間違いは、本当のことを言わなかったことから始まる」というのは、日本が、20世紀において、中国進出から満州事変、そして太平洋戦争へと進んでしまった歴史から、我々日本人は痛いほど学んでいるはずです。政治家にとってどんなに都合の悪いことであっても、この危機的状況にあっては、きちんと問題を公に提示し、それに関わる職種のしかるべき代表が、今から真剣に考えていくべきだと思います。

私は、日本在宅救急医学会(参考・注釈)にはこの問題を解決する可能性があるのではないかと、かすかな光を感じています。なぜなら、この学会が、日本の医療の矛盾を解消するために結成された学会であるという、その出自に望みを感じるのです。在宅医療や病院医療という医療体制の枠、医師や看護師やMSW、ケアマネジャーといった職域の枠、そういう様々な枠を超えることで、医療界の矛盾の解決策を考える場所が初めてできるのだと思います。日本在宅救急医学会は結成されたばかりで、まだ、社会に影響を与えるような成果はなにも生み出せていませんが、その可能性を有する類い希な学会だと思うのです。日本在宅救急医学会のメンバーが核となり、「日本医師会COVID-19有識者会議の在宅医療に関する提言」をしています。これは2020年の7月に日本医師会のHP上にアップされ、医療界の中でも非常に早い段階で発表された提言でした。ここでは、在宅医療に関わるスタッフと病院医療に関わるスタッフがお互いの情報を寄せ合い、頻繁に意見交換をして、一つの提言を作り上げたのです。専門家の境界線を越えることが甚だ難しい医療界では、希有なことだと考えます。この提言は、2020年12月の今でも、充分に利用価値の高い情報と考えます。COVID-19の診療、特に在宅医療や介護に関わっている方には有意義なものだと考えますので、こちらから見てほしいと思います。

https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/2942

 写真は、2019年9月、新型コロナウイルス感染第3波が吹き荒れる中、最小限の人数が集い、新型コロナウイルス感染対策をwebで発信した、第4回日本在宅救急医学会学術集会のときの写真です。

医療は変わらなくてはいけない。それが、お題目としてではなく、切羽詰まった社会問題として、急に立ち上がってくる時代が、突如到来してしまいました。そして、私はふと、思うのです。この学会の設立の趣意である「“本当の良き医療”の構築」とは、この危機的時代が求めている医療のことではないのか、と。

(参考・注釈)
日本在宅救急医学会
2017年に救急医の小豆畑丈夫と在宅医の照沼秀也を中心に結成された、日本在宅救急研究会が前身。上記2名は、2000年に入ってからの在宅医療の拡大に伴い、日本の医療は、病院・診療所だけではなく在宅(自宅及び施設)を含めた場所で行われていることに気づき、地域医療の完成の為には、在宅医療と病院医療が一体となることが必要であると提唱した。それに賛同する医療者が集って研究会を結成した。2018年に、一般社団法人日本在宅救急医学会として活動を開始。この学会の特徴として、医師だけではなく、看護師・介護士・Medical social worker・ケアマネジャー・理学療法士・救急救命士など、幅広い職種の専門家が学会に属していることが挙げられる。
一般社団法人日本在宅救急医学会HP:

http://zaitakukyukyu.com/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?