「学び直し」の最前線
column vol.860
今週は起業をテーマにした記事を2本書きましたが
予測不能のVUCA時代を会社に頼らず自立(自律)して歩んでいくには、常に「学び直し」をしなくてはなりません。
政府も10月に、今後5年間で1兆円を「リスキリング」(スキルのアップデート)の支援に投じる方針を打ち出しています。
というわけで、最近の社会人の学習事情はどうなのでしょうか?
まずは、海外で素晴らしい取り組みが行われているので、そちらから紹介したいと思います。
“全国民”向けにAI無料講
それは北欧、フィンランドの話。
ヘルシンキ大学とリアクターというフィンランドのテクノロジー企業が手を組み、「Elements of AI」という無料オンラインAI講座を全国民に向けて実施しているのです。
〈Forbes JAPAN / 2022年11月29日〉
例えばこれによって、それまでAIの知識が全くなかった57歳の歯科医師が修了後、患者のカルテや、歯科矯正の治療など、自身の仕事に生かそうとされています。
Elements of AIの開発に携わったリアクターの新規ビジネス担当で、運営会社MinnaLearn共同創業者のヴィーヴィ・ピトカネンさんはこのように話します。
当時、フィンランド政府も、国民向けのデジタル教育の機会を模索していたこともあり、2018年5月にローンチ。
全国民550万人の1%に受講してもらうことを目標に掲げました。
そのため、ユーザーフレンドリーな設計やデザイン、コース内容にこだわり、コースを修了すると、ヘルシンキ大学から2単位をもらえるようにしました(単位取得も無料)。
さらにその単位はヨーロッパの大学の単位互換システム(ECTS)にも対応している、本格的なものなのです。
そういうわけで、ローンチからたったの3ヵ月で当初の目標を達成!
現在までにヨーロッパの言語を中心に26ヵ国語に翻訳され、81万5000人が受講。
そのうち42%が女性で、25%が45歳以上とのことです。
ちなみに、英語のコースで良いならば、日本に住む日本人でも無料で受講することができます。
自国民だけではなく、他の国の人々も活用できるなんて素晴らしいですね。
興味のある方はぜひトライしてみてください。
日本でも注目高まる学習プラットフォーム
日本でも最近よくベネッセコーポレーションが運営する「Udemy」のテレビCMを目にします。
Udemyについては、これまでもご紹介させていただきました。
あと、著名なところで、初めてご紹介したいのが「schoo(スクー)」です。
「school」の「l」がないのは最後の文字をなくすことで「世の中から卒業をなくす」という意味が込められているとのこと。
11年前にローンチし、現在の会員登録数は約80万人。
法人導入企業数は2700社を超えています。
特にこの3年での成長は目覚ましく、2021年から高等教育機関向けDX推進支援(延べ30校)や地方自治体と連携してのデジタル学習支援(27自治体)の事業にも力を入れています。
ウェブサイト上に公開されている授業は、計7千以上。
会計資料の読み方や初心者向けデザイン入門など、多彩なジャンルの生放送授業を何度でも無料で受けることができ、過去の人気授業など録画での受講は有料になります。
〈schoo / Webサイト〉
schooの特徴は
例えば、生放送授業に参加してすぐに多くの会員が押す「着席ボタン」。
チャット欄に「着席しました!」というコメントがずらりと並びます。
授業中に絶え間なくコメントが投稿され、活気のある教室のような雰囲気に。
ワイワイ楽しく授業を受けたい方は、ぜひ一度schooを覗いてみてくださいませ。
各大学では「社会人学生」の取り込みを強化
もう1つ注目したいのが大学です。
少子高齢化に伴い、学生の確保が難しくなるこれからの時代においていかに社会人学生を取り込むかが焦点になります。
例えば東京大学では10月、「東京ミッドタウン八重洲」に、サテライト拠点「東京大学八重洲アカデミックコモンズ」を開設。
〈読売新聞 / 2022年12月3日〉
社会人が集える場所を探す東大に、施設開発を主導する三井不動産が入居を提案。
オフィス街に近い利便性は駒場や本郷キャンパスでは得られない利点となります。
ここでは、ITを活用したまちづくりを学ぶ社会人向けプログラムを実施。
期間は約4ヵ月で、合宿などを含めた受講料は200万円。
不動産開発業や金融、自治体職員など計23人が通っているそうです。
昭和女子大でも、大学院の「福祉社会研究専攻」に設けた社会人コースは、平日夜間と土曜日に開講。
最短1年で修士号が取得できるのですが、学費は1単位4万5000円で、履修単位分を納めればよいというもの。
上智大は20年、実業界と連携して社会人向け教養講座を開講しました。
というように、各大学取り組みがどんどんスタートしています。
内閣府がこの夏、18歳以上を対象に行った世論調査では、29.3%が「大学や大学院などで学び直しをしてみたい」と回答。
4年前の同種の質問より約10ポイント増えています。
実際に社会人の学び直し講座の情報検索サイト「マナパス」の大学などの講座登録数も21年度末時点で6125件で、前年度末から700件以上増加。
世界的に先行きが見通せない時代の中で、皆、組織に頼らずたくましく未来を切り拓こうとしています。
私も学びを止めず、光明を見出したいと考えております。
とはいえ、本日は花金です。
この後はゆっくりと晩酌を楽しみたいと思います!
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