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「優しい世界」のつくり方

column vol.1017

小売業のマーケティングコンサルをしていると、クライアントを通してさまざまな課題を耳にします。

例えば、昔から対応が難しいとされているのが「トイレ籠城」

こちらは、トイレの個室長時間に渡って占拠するお客さんのこと。

用を足す以外にスマホでゲームしたり、読書仮眠をしたり、中には食事をとる方もいらっしゃるのです…(汗)

長居しているだけなら…まぁ…というところもありますが…、個室で気分が悪くなって動けない方がいては大変…

そういう意味では切実な問題なのです。

そんな課題に光明を照らしてくれる新たな一手も見られます。

他にも、トイレ籠城だけではなく、小売業で行われている「優しさ」へのチャレンジがありますので、そちらも併せてご紹介させていただきます😊

「長居」する人の心を優しくノックする

まずは話を戻しましてトイレの事例から。

長居する方に気遣いを芽生えさせるシステムが開発されているのです。

その名も「Airknock(エアーノック)」

〈FNNプライムオンライン / 2023年5月15日〉

こちらは、個室にサイネージを設置することで使用時間などを表示するシステムのこと。

これからトイレを利用しようとしている人もスマホで見られるので、どこのトイレが空いているかを確認することができます。

さらには、どの個室も混雑してくると「混雑してきました」というアナウンスが表示される他、使用開始から何分が経過しているかも確認することができるのです。

株式会社バカンWebサイト

開発した株式会社バカンは当初、一定時間を過ぎるとチャイムなどの警告音を発したり、トイレ内を携帯電話の電波圏外にする方法なども考えたそうです。

しかし、「それは少々きつめのアプローチかな?」と考え直し、今のさり気ない形に。

それでも実証実験では、このモニターを設置しただけで、個室を30分以上利用している人が64%減ったそうです。

このシステムには日本人の譲り合いの精神が根底にあるようにも見えるのですが、海外での実証実験の結果も上々とのこと。

優しく「気づき」と「気遣い」を促す。

今の時代を反映したシステムだと感じますね。

「クレーム」の視覚体験で自分事化を促進

小売業の課題といえば、店員がお客さんに激しく怒鳴られ、暴言を浴びせられる「カスタマー・ハラスメント」に頭を悩ませている会社を多く見かけます。

連合が2022年11月、直近3年以内に被害を経験したことがある1000人にアンケートを実施した調査では、76.4%

「出勤が憂鬱になった」
「心身に不調をきたした」
「仕事に集中できなくなった」

などの生活上の変化があったことが判明しています。

そんな中、厚生労働省カスハラ被害を疑似体験できるVR動画を制作。

企業のハラスメント研修での活用を促しています。

〈ITmediaビジネスONLINE / 2023年5月14日〉

動画の舞台はコンビニ

画面には、こちらに向かって威圧的な態度で振る舞うお客さんが映し出されています。

厚生労働省「あかるい職場応援団」

そうなのです、視聴者は店員の立場でカスハラを受けている設定で、被害を受ける側の視点を疑似体験できるのです。

しかもVRということもあり、1画面で360度映像として視聴が可能。

その場にいるようなリアルな感覚を味わえます。

厚労省の担当者はVR動画の制作意図を

カスハラの被害に遭った側がどのように感じるのか、臨場感をもって体感し、自身の言動を見返すきっかけとなるよう動画を作成しました

と仰っています。

他にも、加害者側の視点の動画と、傍観者側の視点の動画もあり、さまざまな視点で擬似体験することで、カスハラの理解を深められるようになっています。

動画は厚労省がハラスメント対策総合サイトとして運営する「あかるい職場応援団」で公開していますので、気になる方はぜひご覧いただければ幸いです。

〈NOハラスメント / VRカスタマーハラスメントをもっと考えよう!〉

「障がい者」向けの新しい挑戦

コンビニといえば先月、ファミリーマートで新たな優しい取り組みがスタートしました。

聴覚や言語に障がいのある方高齢者の来店時、買い物をサポートするための取り組みとして、コミュニケーション支援ツール(ボード)を導入したのです。

〈流通ニュース / 2023年4月4日〉

同ツールは、レジ接客時において顧客に確認する内容を記載しており、購入を希望する商品や要望について、指をさして伝達できるボードとシートとなっております。

イメージはこんな感じです。

ファミリーマートWebサイト
ファミリーマートWebサイト

昨年11月より東京都や神奈川県などの一部店舗で先行展開していましたが、今回、文字やイラストのサイズを大きくするなど、より分かりやすいデザインに改良を加え、全国の店舗レジカウンター内に設置しています。

内容は

●ポイントカードの有無
●はしやスプーンの要・不要
●電子レンジによる温め
●支払方法の選択

などが記載されており、より多くのお客さんとのコミュニケーションをスムーズに行うことを目指しています。

また、障がい者といえば、企業のマーケティングを行う国際組織MCEIの東京支部が、茨城県つくば市上横場のスーパー「シティーマーケットうおまつ本店」で今月、新たな試みに挑戦。

障がいを持つ方々がロボットを遠隔操作してスーパー店頭で接客

商品をPRするという全国初の実験を実施しました。

〈産経新聞 / 2023年5月17日〉

行われている実験は2つありまして、1つは接客ロボット「OriHime(オリヒメ)」

スマートフォンなどに、専用アプリを導入して、ボタンを押すことができれば動かせるため、会話に不自由がなければ障害がある方でも操作できます

しかも、全国どこからでも操作できるため、障がい者だけではなく家族の介護などで在宅の方通勤が難しい高齢者も現場で働けるのです。

そして、もう1つは配膳ロボット「KettyBot(ケティボット)」

こちらは商品PRの実験を実施。

ロボットに商品のトマト缶を載せ、前面の大画面でトマト缶を使ったサバ缶カレーやパスタなどの作り方を紹介しました。

さらに面白いのが、カレーの香りも噴射し、視覚、嗅覚などの人間の五感に訴える試みも行っているのです。

五感に訴えてかけるというのが良いですね。

私は他のものを食べようと思っていてもカレーの香を嗅ぐと、すぐに心移りしてしまいますから(笑)

今後、こうしたロボットが導入されることで、さまざまな事情のある方を救うことができそうですね。

優しい世界のつくり方

ということで、本日は3つの事例をご紹介させていただきました。

新しいアイデアのきっかけに。

そんなことを願っております😊

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