3.18 加熱する「睡眠市場」
column vol.911
突然ですが、3月18日は何の日かご存知でしょうか?
このスイーツがヒントです。
3月といえばホワイトデーですが、それは14日。
正解は、「春の睡眠の日」です。
と、ご存知のない方に解説しますと、睡眠の日は睡眠についての正しい知識の普及と国民の健康増進への寄与を目的に、睡眠健康推進機構が日本睡眠学会との協力によって制定したもの。
3月18日を「春の睡眠の日」、9月3日を「秋の睡眠の日」と定めています。
実は2011年に制定されたものなのですが、ここ最近にわかに注目度が高まってきております。
実際、各社「春の睡眠の日」に向けて、マーケティングに力を入れています。
〈DIAMOND online / 2023年1月23日〉
まずは、盛り上がりを見せる「睡眠市場」を確認していきたいと思います。
睡眠市場は大ヒットが続々
フジ医療器の「第9回 睡眠に関する調査」によると
など、9割以上の生活者が睡眠の質に不満を感じているとのこと。
睡眠に関する投資額は年々増加傾向にあり、睡眠をサポートするためのマーケットも活気を帯びているのです。
このムーブメントを牽引しているのが機能性表示食品の存在でしょう。
特に2020年はコロナの出自粛の長期化により、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)の市場は前年比34.2%増の大幅な伸長を見せました。
しかも、睡眠カテゴリーにおける機能性表示食品の届出数は2015年はわずか8件だったのですが、21年度の届出数は148件にも上っています。
ここ最近の大ヒットといえば、ヤクルトの機能性表示食品「Y1000」でしょう。
日経トレンディの「2022年ヒット商品ランキング」でも1位になりました。
また、冒頭のチョコの写真は、江崎グリコの「メンタルバランスチョコレート GABA フォースリープ」。
睡眠の質を高める機能が報告されている「γ-アミノ酪酸 (GABA)」を配合した機能性表示チョコとして人気を集めています。
他にも、ハウスウェルネスフーズの機能性表示食品「ネルノダ」は発売から1年経たずに累計出荷数500万個を突破。
KSP-POSによると商品名称に「快眠」を謳う商品群は大幅増で推移しており、昨年3月以降はデザート類も活性化が加速しているのです。
非食品分野も「快眠サポート商品」は好調
もちろん、食品以外でも「快眠サポート商品」への人気は高まっています。
その代表例の1つが、P&Gジャパンの「レノア オードリュクス スリープ」。
ジャスミンローズ、カモミール、スイートオレンジの香りが特長のプレミアムリラックスアロマを配合した柔軟剤で、寝具やパジャマなどに使用することで高い睡眠環境をサポートしてくれます。
他にも、発熱体が耳を温めることで寝る前にやすらぎを与えてくれるイヤーピース(耳せん)「小林製薬 ナイトミン 耳ほぐタイム」が、売上好調とのこと。
これは、自律神経が集まる耳の温め+遮音効果という目新しいアプローチが惹きになったことも要因となったでしょう。
また、注目成分「CBD」はこれからの睡眠市場を席巻しそうです。
CBDは麻(大麻草)の茎や種子から抽出されるカンナビノイドの1つである「カンナビジオール」の略称。
幻覚作用や依存性がなく不眠や不安状態の緩和に一定の効果があるとされており、安全性についてもWHOで認められています。
これまでは化粧品などに用いられてきましたが、カリフォルニアなど、先進的なエリアではチョコなどのスイーツにも用いられ、日本国内でも新たな健康食材として期待されているのです。
ちなみに、投稿写真や検索キーワードなどのデータを基に住まいや暮らしについて調査・研究をする「RoomClip住文化研究所」によると、寝室における「癒し」と「くつろぎ空間」の投稿水準は2013年に比べて、前者は263倍、後者は78倍と急増(2022年時点)
〈PRTIMES / 2023年1月26日〉
SNSのユーザー分析から見ても、睡眠への関心が鰻上りで高まっていることが伝わってきます。
この春の睡眠の日に向けて、各社これまで以上にプロモーションを仕掛けてくるはずなので、ぜひ睡眠市場の動向を注視してくださいませ。
福利厚生にも「睡眠」がキーワードに
というように、「マーケティング」の観点から快眠ニーズがどれほど高いか感じていただけたかと思いますが、これは労働市場でも同じ傾向が見られます。
従業員への「快眠サポート」を提供することで自社への求心力を高める動きが出ているのです。
〈幻冬舎 GOLD ONLINE / 2023年1月26日〉
実際、企業が従業員の健康を気遣い、デジタルデバイスを利用して体調を管理させたり、手厚い福利厚生を設けたりする事例が相次いでいます。
例えば、従業員の仮眠スペースを設けたり、就業時間中に仮眠の時間を設けたり。
不動産業のM社は、2018年に働き方改革の一環として仮眠制度を設け、社内に仮眠室を設置。昼12~15時の間に、30分まで仮眠室を利用できるようにしたそうです。
NASAの実証実験では、26分間の昼間の仮眠で、認知能力が34%、注意力が54%も向上するという結果に。
厚生労働省も午後の早い時間に30分程度の短い昼寝をすることで、眠気による作業効率の低下に効果があると公表しています。
M社による検証でも、30分の仮眠を2週間実施し、パソコンのタイピングをする際の集中度を眼鏡型のウェアラブル端末で計測したところ、仮眠を取らない2週間と比べて集中度が高かったとのこと。
社員アンケートでも利用者の3分の2が「仮眠後は集中力があがった」と回答をしております。
他にも、システム開発企業のA社が、2021年からシエスタ制度を導入。
午後の昼寝休憩に限らず、「業務時間中は眠くなった時はいつでも昼寝をしてよい」というルールにしているらしいのです。
SDGsでは、「全ての人に健康と福祉を(目標3)」、「働きがいも経済成長も(目標8)」を掲げていますが、各企業でブランディングの一環として従業員の健康サポートは充実させてきています。
睡眠は健康に直結していることから、このような事例は今後ますます増えてきそうな予感です。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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