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欧州で進む「オーバーツーリズム」対策

column vol.1103

イギリスに本社を構える国際市場調査会社「ユーロモニター社」が手がける「サステナブル・トラベル・インデックス(持続可能な旅行指数)ランキング」の最新レポートが発表されました。

〈やまとごころ.jp / 2023年8月28日〉

このランキングは環境、社会、経済、リスク、さらに観光需要、交通、宿泊という7つの主要な項目合計57の指標を採用。

99の国と地域を分析したもので、旅行先の観光業がより持続可能で目的主導型の観光モデルを促進する指針としています。

1位に輝いたのは「スウェーデン」

2位「フィンランド」3位「オーストリア」

…というよりも…、30位をほぼヨーロッパの国が独占しています。

ちなみに、ユーロモニター社が毎年末に発表する「世界の都市デスティネーション・トップ100」でも、首位はオーストラリアの「メルボルン」に譲ってはいるものの、ヨーロッパの都市が大半を占めています。

ヨーロッパ諸国はこれまで、観光のエコロジカル・フットプリント(人間の活動が自然環境に与える負荷をわかりやすく表したバロメーター)を最小限に抑えることを目指して、持続可能な観光モデルを提唱。

そのモデルを実施する最前線に立ってきました。

例えば、8位アイスランドは最近、長期旅行を推進し、マスツーリズムを抑制するキャンペーンを立ち上げました。


「スペイン」「フランス」の取り組み

「オーバーツーリズム」対策ということでいえば、他にもたくさん事例があります。

各国の取り組みが良くまとまっているのが、こちらの記事です。

〈IDEAS FOR GOOD / 2023年8月7日〉

例えば、スペインPalma Beachに位置する11のレストランでは、2022年からディナータイムにドレスコードを導入。

ノースリーブ、水着、ビーチサンダル、仮装、サッカーチームのユニフォームTシャツ、露天商から購入したアクセサリーや、金のチェーンネックレスを着用しての来店を禁止しました。

それまでは、ビーチやナイトクラブなどでお酒を飲み、酔っぱらったまま来店したお客さんが迷惑行為を行うことも…

しかし、ドレスコードを求められることで、一度宿泊先に戻り、シャワーを浴びたり、身だしなみを整えたりすることにつながるので、迷惑行為が減少したそうです。

また、南仏マルセイユ近郊のカランク国立公園では、岩に囲まれた入り江が美しい自然保護地区ですが、1日400人に制限することにしました。

理由は、もともとロッククライミングトレッキングの場所として国内外から人気が高かったのですが、インフルエンサーがビーチの様子を紹介したり、Netflixドラマ「マルセイユ」のロケ地となったことで、1日に2,000人以上の観光客が訪れるようになったからです。

400人に制限した結果、人の足で踏み潰されて固くなっていた地面から、新しい草の芽が出てくるなど自然環境の改善が見られるようになったとのこと。

成果に結びつきました。

進む「文化遺産や博物館」の制限策

他にも、ビジネスインサイダージャパンでは、ギリシャのアテネにある「アクロポリス」のオーバーツーリズム対策を紹介。

今月から1日の入場者数が2万人に制限されたことを報じています。

〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2023年9月10日〉

遺跡の見学を希望する場合は、事前に予約サイトで訪れる時間枠を確保する必要があります。

世界中の他の文化遺産博物館も同様の方針を実施しており、保護意識の高さが垣間見えます。

ちなみに、本日はユネスコの世界遺産委員会「水の都」として知られるイタリアのベネチアについて、「危機遺産」登録を見送ったことが報じられていました。

〈REUTERS / 2023年9月15日〉

危険遺産とは、ユネスコの世界遺産登録物件のうち、その物件の世界遺産としての意義を揺るがすような何らかの脅威にさらされている、もしくはその恐れがある物件のこと。

世界遺産としての価値が失われたと判断された場合は、世界遺産リストから削除される可能性もあるので…、サッカーでいえば「イエローカード」のようなものです…

今回は、高潮による浸水を防ぐ可動式水門「モーゼ・システム」や、来年から導入される入場料などの観光制限への取り組みが評価されたことで回避されたとのこと。

一方で、ユネスコ側

委員会は、マスツーリズムや開発事業、気候変動に関連する問題を含め、市の適切な環境保全に関する未解決の重要課題に改めて懸念を表明した

と声明で述べているので、まだまだ予断が許されない状況ではあります…

また、イタリアといえば、政府が短期滞在向けの住居貸し出しを制限する法律を提案し、市民の間で賛否が分かれるなど議論が巻き起こっていることも注目されています。

オーバーツーリズム対策先進エリアにあって、まだ途上であるヨーロッパの事例を見ても、改めて世界的な問題であると感じますね…

京都で「地下鉄」利用を促進

最後は日本の事例から。

京都でも行楽のシーズンが始まりますが、バスが観光客で混雑して、地元の住民が乗車できないことが以前からの課題となっています。

〈NHK NEWS WEB / 2023年9月13日〉

そこで、京都市は混雑を解消するため、市内を走るバスに一日に何度でも乗り降りできる乗車券の販売を9月いっぱいで終了

来年3月で廃止することを決めました。

さらに、11月の行楽シーズン本番には、バスの乗客に地下鉄への乗り換え券を配り、バスよりも空いている地下鉄の利用を呼びかけることにするそうです。

特に混雑する夕方に京都駅に向かうバスの利用者に配付するもので、途中で地下鉄に乗り換えても、この券を使えば、地下鉄の料金は支払わずにバスの運賃だけで京都駅まで行くことができます。

ちなみに、乗り換え券を配付しているバス停

●東山三条駅
●金閣寺道駅
●銀閣寺道駅
●岡崎公園美術館・平安神宮前駅

の4つです。

また、地下鉄を利用して観光地に行くルートが書かれた案内図をJRの駅や観光案内所に置いて、混雑の緩和を促しています。

他にも、ごみのポイ捨て対策などの取り組みも見られますので、気になる方はぜひ上記NHKの記事をご覧いただけると幸いです。

ということで、本日は「オーバーツーリズム」対策についてお話しさせていただきました。

私の実家もザ・観光地である鎌倉にあるので、夏休みや行楽シーズンなど観光のハイシーズンは、なかなか帰る気力が湧きません…(汗)

もちろん、地元に活気があることは良いことなので、ほど良いバランスがとれることを願っております😊

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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