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「社員教育」の本当の意味

column vol.928

昨日、ある経営者の方のお話を聞く機会があり、その時とても胸に刺さった言葉がありました。

社員教育とは自社の理念を理解させることと、その仕事の面白さを伝えることである。

決して、スキルやノウハウを教えることではないと仰るのです。

もちろん、極端な物言いではありますし、スキル・ノウハウも当然教える必要はあるのですが、重きは前者にあるということです。

その経営者の方は

スキル・ノウハウだけを教えていたら、ある程度成長したら会社を出ていってしまう。だって、その会社に共感していないんだから

と続けます。

そんな話を聞いていたら、最近読んだある記事を思い出しました。

それは、中小企業の組織風土改革のコンサルティングを行う小堀健一さん【経営者が必死に考えた「理念」は、なぜ社員に届かないのか?】という記事です。

〈PHPオンライン衆知 / 2023年2月8日〉

社員は本当に理念に共感しているのか?

経営者は、理念を押しつけていないか?

そう問いを立てる小堀さん。

考えてみると創業者「自分はこういうことがやりたいんだ」と情熱を持って会社を創るわけですから、当然その理念は大きなモチベーションになっています。

その対極にいるのが新入社員です。

特に新卒社員であれば、アルバイトは別としてそれまで社会で仕事を本格的にしてきたわけではありません

その理念の言葉は分かっても、その奥底にある意味までは分からないはずです。

例えば、当社の企業理念

生活者を主人公にした社会の実現

なのですが、私はこの言葉が自分の中で腹落ちするまでに20年かかりました…(汗)

それでも、創業社長が100だとすると、自分が100%意味を理解できているかというとそうではないでしょう。

この先、まだまだ「なるほど!そういうことだったか!」と発見していくに違いありません。

要するに、理念とは「意味(理解)の解像度」を上げないといけないのです。

腹落ちさせるための「体験」と「対話」

経営者や理念に共感した幹部努力しないといけないのが、この意味の解像度を上げるための「体験」「対話」の提供です。

よくあるのが、朝礼で復唱する会社です。

もちろん、これもあっても良いのですが、しかし言葉を記憶(確認)している作業でしかありません。

まずは、この理念を叶えることが「どんなやりがい」があって、実現すると「どんな喜び」が待っているのかを実感してもらわないといけないのです。

例えば、理念とは少し違うかもしれませんが「顧客第一」という言葉がありますが、自分が一生懸命努力して尽くしたことで人生で味わったことのないぐらいのお褒めの言葉をいただいたり、喜んでくださるお客さまの姿を見ない限り、実感は湧きません。

逆に、その実感が湧きさえすれば、その人は言わなくても勝手に顧客主義を貫いてくれるわけです。

この実感を伴った経験意図して与えることが教育になります。

つまり、今風にいえば「自走する社員」を育てることなのです。

一方で、そんな簡単に「実感→自走」を促すことなんてできません。

仕事は上手くいかないこともたくさんあるので、やはり心が折れそうになるわけです。

そして、働く意味を一旦置いておき、「生活のため」「家族のため」とそっと社員は心を閉ざしていく

その心を再び開くアクションこそが「対話」なのです。

これは本当に時間がかかります。

私も20年かかっているわけですから…(汗)

そう考えると、創業した先代社長には感謝していますし、自分も辛抱強く社員一人一人の意味の解像度を上げていければと思っております。

意味の解像度が上がると仕事が幸福になる

解像度が上がり、腹落ちするまでになると仕事が幸福に感じるようになります。

その分かりやすい例が「3人のレンガ職人」の話でしょう。

〈幻冬舎 GOLD ONLINE / 2022年12月7日〉

例えばレンガ職人が忙しく働く工事現場で、レンガ積み職人に「あなたはなにをしているのですか」と尋ねたとします。

1人目の職人は「私は給料が安いのにレンガを運ばされています。ああ、しんどい」と答えます。

続いて2人目の職人は「私は塀を作っています」と答えました。

そして最後の3人目です。

その職人は

「みんなが祈りを捧げるための大聖堂を建てています」

と言ったのです。

この3人のうち誰が一番モチベーションが高いかは言うまでもないでしょう。

これが意味の解像度が上がって腹落ちした状態です。

同じレンガを積む仕事でも幸福感が違います。

1人目お金のため、2人目義務のため、3人目理想(喜び)のためにレンガを積んでいるのですから。

ですから、経営とは、そして教育とはいかに3人目の職人を育むかということになります。

たとえその事業が微々たるものであろうと、自分の利益は少額であろうと、国家必要の事業を合理的に経営すれば、心は常に楽しんで仕事にあたることができる。

渋沢栄一さんの名言ですが、まさに仰る通りです。

もちろん、利益は高い方が良いのですが(笑)

社員は「仲間」「同志」である

この3人目の職人を育む上で、一番大切なのが経営者や幹部の謙虚さでしょう。

変に自分が偉いと思わない方が良い。

無駄に上下関係を植え付けてしまえば、社員は表向きは良い顔しますが、心の中では…という状態になってしまいます…

理念や自分の考えを押し付けることなく、体験と対話を通じてじっくりと同志を増やしていく

もっと言えば、同志度を上げていく必要があるのです。

これは会社の規模が大きくなればなるほど難しくなります。

ですから、経営者はエバンジェリスト(伝道者)をいかに社内で育成するかに力を注いでいかないといけないというわけです。

面従腹背の社員をつくらず、同志を増やしていける経営者、幹部というのは、やはり人格者でないと難しい

交際の奥の手は至誠である。理にかない調和がとれていればひとりでにうまくいく。

もう1つ渋沢栄一さんの名言をご紹介させていただきましたが、社員に対してそういう想いを持ってこそ人は教育できる。

大切なのは、やはり真心です。

最近、そんなことをつくづく思う今日この頃です。


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