欧州を席巻する「気候テック」
column vol.929
TwitterやMeta、Google、Amazonなどといったビッグテックによる大量人員削減のニュースが続いている一方、米テクノロジーメディアの「TechCrunch」が、「解雇された?気候テックは、技術者と創業者を募集中」といったコラムを出すほど、気候テックは人材不足で悩んでいます。
〈AMP / 2023年2月10日〉
ちなみに、気候テックとは、CO2排出量の削減や地球温暖化の影響への対応など、気候変動対策に焦点を当てた技術やビジネスのことを指します。
TechCrunchのコラムでは、気候テックに特化した人材会社「Climatebase」で大量の求人募集が出ていることを紹介しています。
他にも、世界最大級のビジネス特化型SNS「LinkedIn」でも、「環境分野の人材は需要に供給が追い付いていない」ことをレポートしているのです。
投資額は1,000億ドルを超える勢い
それもそのはず、気候テック業界は年々勢いを増しています。
米マーケットリサーチ「HolonIQ」によると、世界で2022年に気候テックに投資された金額は、総額701億ドルとのこと。
前年比約2倍の驚異的な伸びを記録しました。
アメリカでは第1次クリーンテックブーム(2006年~2011年)での投資額を上回り、このペースでいくと今年は1,000億ドルを超える勢いだそうです。
ヨーロッパでも投資金額は前年比約2倍となり、初めて中国を抜いています。
今年の気候テック投資は、世界的に上昇ペースはなだらかになるものの、他の業界に比べて堅調で、少なくとも2021年のレベルは超えることが見込まれているのです。
この勢いを生み出している要因としては、「技術開発のスピードが上がった」こと。
そして、世界の国々が「カーボンニュートラルについて明確な目標」を打ち出したこと、「環境問題が広く認知され確実な需要が見込める」ようになったこと、機関投資家が「ESG情報を投融資判断」に組み込むようになったことなどが挙げられています。
また、将来の経済活動を担うZ世代・ミレ二アル世代がサステナブルな社会に強い関心を持っていることや、冒頭の通りテック業界から解雇された人たちが気候テックに移ってきていることも、業界の盛り上がりをつくり出しているのです。
そんなわけで勢いを増す気候テック業界ですが、AMPの記事では注目のヨーロッパ企業を3社紹介しています。
欧州で注目の気候テック「Sensoneo」
個人的に特に注目したのが、スロバキアの企業「Sensoneo (センソネオ)」です。
2017年に創業したSensoneoは、都市、企業、国に対し、スマート廃棄物管理ソリューションを提供。
現在70ヵ国に展開しており、スマートセンサーによる廃棄物のリアルタイム追跡・監視、廃棄物の収集ルートや頻度の最適化、廃棄物両低減へのインセンティブプログラムなど、データを活用した様々な機能を開発しています。
世界の都市で排出されるゴミは年間20億1,000万トン…
このままいくと…、排出量は2050年までに70%増加…、量にして34億トンに達すると予測されています……(汗)
同社の技術を持ってすれば、デポジット・リターンシステムなど複雑なロジスティクスにも対応できるので、廃棄物発生量の高精度の把握が可能になり、ゴミを30〜63%も削減してくれるそうです。
技術開発の他にも、「グローバル廃棄物指標2022」を発表して世界に発信するなど、廃棄物問題の根本的な解決と啓蒙活動にも注力しており、リテラシー向上に大きな影響を与えています。
そして、この企業を牽引するのが女性起業家であることも注目される一因になっています。
女性起業家は「投資利益率」を高める!?
なぜなら、国連貿易開発会議のレポートによると、女性が主導する企業はより高いROI(投資利益率: Return on Investment)を投資家にもたらすとの調査結果があるからです。
この調査結果では、女性起業家の方が、社会的ニーズに対応するイノベーションを起こす可能性がより高いとされています。
また、「欧州気候テック×女性経営者」といえば、フィンランドにも好事例があります。
フィンランドの最東端・北カレリアでは、森に根付く栄養価の高いスーパーフードをテクノロジーの力を使って守り続けているのですが、その推進役となっているのが、地元の中小企業を率いる女性たちなのです。
〈Forbes JAPAN / 2023年2月10日〉
現在、世界では大量生産型農業による土壌の劣化などを理由に食べ物の栄養価が減少しています。
そんな中、フィンランドでは6万5千人の会員を有する国内最大の女性を対象とした地域事業開発エージェント「RWAO (Rural Women's Advisory Organisation / 地方女性起業家アドバイザリー組織)」などを通じて、女性起業家をサポート。
北カレリアでも、この取り組みにより、先駆的なフォレストビジネス・エコシステムを築き上げているのです。
そんなところも今後、SDGs視点から求められることなのではないかと感じます。
日本のサーキュラーエコノミーはいかに?
ということで、気候テック分野についての現在地についてお話ししてきましたが、ではでは日本ではどうなのでしょうか?
政府は2030年までにサーキュラーエコノミー関連ビジネスの市場規模を、現在の約50兆円から80兆円以上にすることを成長戦略フォローアップ工程表で目指しており、日本でのビジネス機会も広がっています。
サーキュラーエコノミーは、地域と密着したビジネスも多く、各種スタートアップ支援策も整備されている今、日本各地で「起業のチャンスになる」と言われているのです。
気候テックのみならず、単に売れるだけではなく「社会に役立つ」ことを重視する「インパクトスタートアップ」は日本でもその息吹を感じます。
社会貢献型起業については、非常に注目している分野ですので、今後もちょくちょく記事にしていきたいと思っております。
そして、気がつくと花金です。
本来ならば土日はお休みなのですが、明日明後日は朝から晩まで一日がかりのイベントが続きますので、2日間、noteの記事投稿はお休みさせていただきます。
(つぶやき投稿はいたします!)
月曜日からまた通常営業いたしますので、その際は改めてよろしくお願いいたします。
それでは、良い週末を!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?