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“青葉”の活力

column vol.1243

書店チェーン「有隣堂」社長の松信健太郎さんイノベーションを起こす上で、若手社員の力が必要であると仰っています。

イノベーションを起こし、「次に稼ぐもの」を見つけるための挑戦には、優秀な若い人材が必要だ。既成概念や業界慣習にとらわれず、新たな発想でイノベーションを起こしていく人材
(中略)
一番のリスクは、疲弊している現場でイノベーティブではない「先輩」が優秀な若手を潰してしまうことだ。

〈PRESIDENT Online / 2024年7月10日〉

「既成概念や業界慣習に囚われていない」というところが非常に大切で、若手社員は組織や業界に染まりきっていない分、生活者(ユーザー)の視点に近い

また、時代の新しい風を素直に感じられていると感じています。

こうした「若葉の力」をいかに活かしていくのか?

今回は「リバースメンター」という新しい取り組みを通して、そのヒントを探りたいと思います。


講師は「新入社員」

リバースメンターとは、若い社員上司や経営者に対して、新しい技術やトレンド、若者文化などを教える役割を担うメンター制度のことです。

つまり、部下「先生」になるわけです。

最近のホットな話題といえば、NECの「リバースメタリング研修」でしょう。

今月5日に、新入社員が講師となり、役員が抱える課題デジタルで解決するユニークな研修が行われました。

今年入社した約680人の新入社員の中から立候補した35人が、35人の役員とともにアプリケーションの開発に挑戦

新人役員5人程度のチームに分かれ、

「NEC社員のウェルビーイングが小さく向上する企画を実装せよ」

をテーマに、まずは新人が役員へのヒアリングを通じて課題を洗い出したそうです。

そして、システムの構想を決め、ノーコードツールを使ってアプリを完成

新人たちは、自由な発想で意見を出し合うブレインストーミングなどで役員をリードしながら、問題発見や課題解決のフローを話し合ったとのこと。

同社曰く

「積極的に意見を出す新人に可能性を感じた」

研修になったようです。

これまでグループ企業も合わせると社員数が10万人を超えるNECでは、新人が役員と話す機会はこれまでほとんど得られなかったそうです。

研修を企画したNECカルチャー変革エバンジェリストの森田健さん

「入社数年で離職してしまう若手が多い。社内に挑戦する場をつくってやりがいを感じてもらい、外に出てしまうのを食い止めたい」

と今回の意図を話しております。

若手のモチベーションアップが焦点となったコメントですが、新しい視点やアイデアは経営者の望むところでしょう。

非常に素晴らしい取り組みだと感じました😊

異なる部署の先輩との出会い

他にも、例えば資生堂でもリバースメンターを取り入れていて、組織活性化につなげています。

昨年9月の日経新聞の記事では、延べ1千人の社員が参加していることが報じられていました。

〈日本経済新聞 / 2023年9月14日〉

資生堂の顧客対応部門で約80人の部下を率いる50代の社員は、月に1度、マンツーマンで20代の社員から生成AIなどの最新テックの動向のレクチャーを受けるようになったそうです。

若手社員はAIの普及が広告に与える影響や可能性について、問題意識なども伝えているとのこと。

同社では、役員や部門長などの幹部と若手がペアを組みSNS(交流サイト)やデータ活用などの最新のデジタル技術美容ファッションなどのトレンドを共に学んでいます。

そして、研修成果を人事評価に結びつけず、所属や階層の壁を取り払った絆を増やすことにつなげていく。

リバースメンターは、他にも住友化学三菱マテリアルなど様々な企業でも導入。

時代が急速に変化する中で、いかに中堅・ベテラン社員が“進化”していくかが肝要になります。

そうした中、謙虚に耳を傾け、若手の知見や発想を引き出す意識とスキルが求められるわけですが、このフラットで距離の近い関係性こそが令和のマネジメントとも言えるでしょう。

サッカーW杯で強豪に勝ち決勝トーナメントに進出させた森保一監督や、WBCで日本を世界一に導いた栗山英樹監督リーダー像に注目が集まっていますが、リバースメンターはそうした新しい上司哲学に切り替えるための良きトレーニングになりそうですね😊

知事の先生は「高校生」

こうした動きは、行政でも見られます。

例えば、群馬県では若い世代の声を県政に反映させようと、「高校生リバースメンター」と呼ばれる事業を通して、政策を提言してもらう取り組みを始めているのです。

〈高校生リバースメンター事業〉
・県内在住の10人の高校生知事の相談役に任命。
 →応募者の中から面接などを経て選抜。
提言が採用されると予算化され、事業展開へ。
 (9月補正予算に500万円計上)

〈NHK / 2024年4月18日〉

昨年11月、高校生が学校生活で抱いた“違和感”を知事に政策提言する発表会が行われました。

「校則を変えることができる仕組みを作りたい」
「“サイクルツーリズム”を推進して、県の観光を活性化させたい」

など、様々な意見が聞かれたそうです。

「校則」については、先ほどのNHKの記事では一人の女子生徒のプレゼンが紹介されています。

その生徒は

「女性用制服を着用していた頃、急にうつ病と不安症になり、理由がわからないまま学校に行けなくなりました。理由を考えたときに、制服が一番ネックでし。男になりたいとか、女になりたいとか、そういうことではなくて、ただ『自分らしい格好とは』と聞かれたときに、女子の制服は嫌ということがあったので、まずそこから変えていこうと」

という想いを持っていました。

中学生の時は大人に相談してもなかなか理解が得られず、無力感を感じていたそうですが、高校に入学をして信頼できる先生に出会って意識が変わったとのこと。

その先生のコメントに、私は多様性時代の上司像を感じました。

「生徒の気持ちは本人にしかわからないと思いますが、こういう考え方もあるのだと、日々、自分も勉強させてもらっています

「こういう考え方もあるのだと、日々、自分も勉強させてもらっています」、まさにこの考え方です。

私もこの意識は大切にしないといけないと改めて思いました。

こうして悩んでいた生徒が肯定され、世の中に希望を持っていく

そうして、今回の政策提言では

①制服、頭髪に関する男女の区別の撤廃
②教員向けのLGBTQに関する 講演会・講習会の必須化

をプレゼン。

知事からは

「本当に頭に入れて、県の政策を作っていかないといけないなと感じています」

とコメントをいただけたそうです。

きっと、彼女の心に新しい希望が灯ったことでしょう。

ビジネスの現場に話を戻しますと、社員の声をよく聞くというのは「社員に希望を与える」ことでもあるのかもしれません。

希望が育まれれば、「この会社でやっていこう」と活力が生まれる。

大切なのは制度を機会に、「聞く文化」の醸成していくことなのでしょう。

こうした気づきを活かして、今後の経営につなげたいと思います😊

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!

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