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教育のはしくれ

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塾産業の中で教育などと偉そうには言いませんが、父親として息子たちと向き合ってきた一人としての体験と意見。時代的に早すぎた「イクメン」としての背景から、言葉を零してみます。
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2023年10月の記事一覧

語学も数学もできないけれど

語学も数学もできないけれど

それなりに不安を抱えながらも、もうひとつ勉強に集中できなかった中学三年生。ここへきて、志望校を決める段階に入ってきたことで、悩みが深刻になってくる。「先生、英語の成績を上げるためには、どうすればよいでしょうか」というような、あまりに漠然とした問いを、その女子生徒は授業後に私にぶつけた。
 
だいたい英語の劣等生たる私が、英語の授業をすることがあること自体、間違っているのだが、自分ができないことと、

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化学反応

化学反応

CHEMISTRY(ケミストリー)というツインボーカルユニットがある。美しいハーモニーと共に、数々の名曲を世にプレゼントしてくれた。20年以上の音楽活動歴がある。一時数年間、活動休止の時期があったが、近年再び2人ででも活動している。「男子ボーカリストオーディション」で選ばれた2人が組まれてCHEMISTRYとなったのだが、それは「化学」の意味をもつ言葉である。つまり、1+1=2でしかなかったことが

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『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

キリスト者として、何かしら重荷を負うというものがあるという。どうしてだか分からないが、そのことのために心血を注ぐしかない、という思いで生きるのだ。生きることが、考えることが、すべてそれのために営まれている、という気持ちになる。
 
著者にとり、「教育」がその重荷であるのだろう。しかも、「キリスト教教育」である。キリスト教を信じさせる教育だという意味ではない。教育する側が、キリスト教精神を以て教えて

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書くこと

書くこと

「問題をよく読みなさい」とだけ生徒に言っても、「読んでるよ」としか答えようがない。しかし、現に読み間違いがあり、なかなかなくならない。
 
文が実は読めていない、という衝撃的な事実を提示したことで、『教科書が読めない子どもたち』といった本は、一時的に話題を蒔くことができた。だが、事の深刻さは世を変えるほどには至っていないように見える。その本を著した新井紀子氏は、AIの研究家である。その研究過程で、

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