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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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2023年1月の記事一覧

松居直さんと聖書のこと

松居直さんと聖書のこと

松居直(ただし)さんが亡くなったのは、2022年11月2日のことだった。悲しかった。いくらかの本を読んでいたのもあるし、信仰者として尊敬していた面もあった。特に、私がずっと懐いていた絵本についての考えを、支えてくれることを言っていた人だ、というように後から知ったとき、本当にうれしく思ったからであった。
 
先日、Eテレの「こころの時代」で、松居直さんのインタビュー番組が再放送された。2001年9月

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『生きる勇気』(P.ティリッヒ・大木英夫訳・平凡社ライブラリー102)

『生きる勇気』(P.ティリッヒ・大木英夫訳・平凡社ライブラリー102)

ティリッヒとくれば、20世紀の神学者として、カール・バルトと並び称される偉大な人物であるという定評である。哲学を学んだとあって、その神学は哲学的思考に導かれている。本書も、非常に抽象的で、読むのに骨が折れた。殆ど何も具体的な事例が出てくることなく、比喩のようなものも感じられず、ひたすら抽象的に論じ続けるのである。
 
そのため、ここで感想を述べようにも、実に苦しいものとならざるをえない。内容を辿れ

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あなた宛の福音

あなた宛の福音

⇒信仰経験とは、主の教えを理解することではなく、理解もできず共感もできぬ絶対に外部的な、絶対的に他者的なメッセージを「自分宛」だと直感し、そのことによってこの世界に「人間の理解も共感も絶した他者」のための空位を穿ったということなのである。僕はそう理解します。(p163)
 
内田樹氏が『日本霊性論』(NHK出版新書・2014)の中で述べていることを引用した。「空位」というのは、これに先立って考察し

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通訳者の使命

通訳者の使命

国語を中学生に教えることがある。優れたテキストには、優れた文章が掲載されている。そこから教えられること、考えさせられることによく出会う。今回も、「通訳」についての長井鞠子さんの文章を味わうことができた。というより、読みながらもう興奮して、笑ったり膝を叩いたり、もう分かりすぎるほど分かる経験をしたのだった。
 
『伝える極意』という新書からの引用であった。本の、殆ど初めの箇所である。通訳者が、元の発

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『説教 いかに備え、どう語るか』(フレッド・B・クラドック/吉村和雄訳/教文館)

『説教 いかに備え、どう語るか』(フレッド・B・クラドック/吉村和雄訳/教文館)

憧れの本だった。小さなサイズで400頁にも満たないのにこの価格である。しかも新刊としては販売されておらず、古書しかない。その古書の価格が、元の価格を上回っていた。何倍にもなっている時期もあり、とても手が出なかった。買えるかも、と思った時もあったが、他の牧師に買われてしまった。SNSを見てそれを知った。また価格が跳ね上がった。そうして待つこと何年か過ぎた。まだ定価を上回るが、清水の舞台から飛び降りる

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