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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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#仏教

『不要不急』(新潮新書)

『不要不急』(新潮新書)

著者の名が10人並んでいるので、この場でご紹介する。横田南嶺・細川晋輔・藤田一照・阿純章・ネルケ無方・露の団姫・松島靖朗・白川密成・松本紹圭・南直哉
 
なんだこの表紙は。著者である10人の僧侶の顔写真にも魅力があって購入したが、そのカバーの下に、茶系のグラデーションのデザインの、ふつうの新潮新書のカバーも隠れているではないか。カバーが二つ着けられているのである。
 
サブタイトルが「苦境と向き合

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『希望のつくり方』(玄田有史・岩波新書)

『希望のつくり方』(玄田有史・岩波新書)

とにかく一冊、「希望」という言葉だけを綴っている。それは、文学者の思いつきではなく、ライフワークとして「希望学」を打ち立てて、地道なフィールドワークも行っている人だ。これは新書とはいえ、ここまでの集大成の観がある。
 
そのために、実例や体験を含め、丁寧に書かれている。最後のまとめは、本書の何頁にこれがあった、と挙げ、またそこを見ることがしやすいように配慮してあった。
 
どうにも閉塞感に包まれて

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『遺体』(石井光太/新潮文庫)

『遺体』(石井光太/新潮文庫)

2011年10月に発行されたものの文庫版が、2014年に発行されている。
 
東日本大震災の後間もなく取材に入り、関係者と接触する。東北に特に関係があるのでもない。著者は、いわばルポライターである。現場での取材をモットーとして、報道されない人間の真実に近づいて描こうとする。東日本大震災は大きな課題となった。だがもちろん、それは自分の仕事のためだということで素材にしているというわけではないだろう。こ

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『寂聴 般若心経 生きるとは』(瀬戸内寂聴・中公文庫)

『寂聴 般若心経 生きるとは』(瀬戸内寂聴・中公文庫)

30年も前にベストセラーだったそうで、私も鈍い。やっと手にして読んだ。般若心経については何冊か解説書を開いたことがあるが、これがいちばん親しみがもてたし、分かった感覚がした。
 
最近は、寂聴さんについても知らない若い人が増えてきたと思うが、その説明はここでは割愛する。女性である。小説家である。いろいろあって、出家して僧となった。作家活動も続けており、本は非常によく読まれている。その寂聴さんの語る

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『人口減少時代の宗教の危機と対応』(勝本正實/いのちのことば社)

『人口減少時代の宗教の危機と対応』(勝本正實/いのちのことば社)

教会関係者の誰もが心に懐きながら、口に出すことをためらうことを、言ってくれたものだと感心する。私もどちらかというと、この側面を正面から論じるべきだと考えている。そう、教会の未来は暗い。閉塞感という言葉で打ち出した本もあったが、それどころの話ではない。閉塞ならばまだ存続する。だが消滅するとなると、話が大きく変わってくる。

ユニークな著者である。キリスト教の牧師相当の方であるが、仏教を深く学んでいる

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