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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2023年3月の記事一覧

『天水桶の深みにて』(R.ボーレン/加藤常昭訳/日本基督教団出版局)

『天水桶の深みにて』(R.ボーレン/加藤常昭訳/日本基督教団出版局)

1998年発行の本である。この本についての言及が時折他の本であったので、気になっていた。価格の面で折り合いがつかなかったので手が出なかったが、その値がいくらか下りてきたので、思い切って購入した。
 
知識のない私は、「天水桶」というものをそれまで知らなかった。そもそもどう読めばよいのかさえあやふやであった。「てんすいおけ」、それは江戸時代からあるという防火用水としての水槽であるという。雨水を溜める

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『神の国』

『神の国』

アウグスティヌスの『神の国』を読み始めた。ふと、読みたくなったのだ。あまりにも高価だと手が出ないし、大きな本の塊の購入は、家族に叱られる。これは五巻あるが、文庫本である。お許しを戴こう。古いものなので、定価よりも安く手に入るものが多い。第一巻は、少し質の悪いものしか買えなかったが、読むのには何も差し支えない。
 
これが、なかなか面白いのだ。ドイツ観念論や現代フランス哲学と比べると、あまり深く考え

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『旧約聖書の思想 24の断章』(関根清三・岩波書店)

『旧約聖書の思想 24の断章』(関根清三・岩波書店)

天邪鬼なもので、この本が、講談社学術文庫にあると聞いたとき、オリジナルの方を探してみる、というのが私のよくやることである。というのは、新しい方は定価かそれ以上で出回っている場合があり、元の方がそれに応じてか、値が下がっている、という場合がしばしばあるからである。ひとは、新しい文庫が出ると、ハードカバーのほうは避ける傾向にあるらしい。
 
関根清三というと、旧約の権威としてとみに有名な関根正雄の息子

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『箱舟に8時集合!』

『箱舟に8時集合!』

(ウルリヒ・フーブ作・イョルク・ミューレ絵・木本栄訳・岩波書店)
 
図書館で選んだのは偶然ではある。だが、大当たりだった。岩波が児童書についてはよい仕事をしていることは知っていたが、これは見事な作品である。
 
2007年にドイツで出版されている。ドイツでも大人気で、世界でも何十カ国と広く読まれているそうだ。
 
そもそもタイトルが、あの伝説の番組「8時だョ!全員集合」をもじっているようで、知っ

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ブルーナと東日本大震災

ブルーナと東日本大震災

ディック・ブルーナ。亡くなったのは2017年。「ミッフィー」の作者として知られるが、福音館書店のシリーズでは「うさこちゃん」として知られる。原語では「ナインチェ」というのだが、「うさちゃん」という感覚なのだそうだ。英語訳からいつしか「ミッフィー」というほうが日本でもメインになってきたようであるが、その辺りの事情が、この本には書いてあった。『ディック・ブルーナ』(森本俊司・文春文庫)である。
 

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『救いはここに』(加藤常昭・キリスト新聞社)

『救いはここに』(加藤常昭・キリスト新聞社)

ふと本棚で見つけて、宝物を見つけたような気持ちにさせられた。情けないことだが、この本をいつどのように手に入れたのか、全く記憶がない。次に読もう、と思って置いていたまま、すっかり忘れていたようなのだ。
 
加藤常昭先生の本はいろいろ読んでいる。これも、手に入れてきっと嬉しかったに違いない。だが、もったいないような思いで一瞬いたら、そのままになってしまっていたらしい。
 
なかなか厚い。450頁以上あ

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