高田航成|ライター
全29巻のビジネス系物語(ライトノベル)です。1巻~15巻まで公開(試し読み)してます。気楽に読めるようベタな作りにしました。是非読んでね!
旧twitter(X)で展開中の【短い物語】の置き場です。1~2ヶ月遅れくらいでコチラにUP。
全50話(無料)くらいの物語です。ダメな主人公が周囲の支援を受けながら、人生を再起動する、って内容です。とにかくベタな展開を心掛けました。
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フリーライターの私は雑誌社の依頼を受け、ホテルのクリスマスイベントの取材に訪れていた。そのホテルの中庭では青いサンタのタレント達が仕切るカップル対象のパーティーが行われていた。 もちろん主役はカップルの参加者だ。皆、赤を基調としたサンタっぽいコスチュームで身を固めている。イベントは開始直後から青いサンタのタレント達の努力もあって大いに盛り上がった。 その盛り上がりの隅に緑のサンタが、緑色の袋を担いでうろついていた。見ると、どうやらイベント中に出るゴミを緑の袋に集めているみ
66(X2年7月) 大喧嘩後、流石に反省した。 既成事実化を進めて強引に押し通すなど、やはりあり得ない。板東先生の頃とは時代が違うのだ。 実際、池谷さんの勉強会で、起業宣言を表明した私も含めた3人全員が、結局失敗に終わった。それも大失敗だ。 1人は普通に口論で敗退し、数年掛けてじっくり進める事にしたそうだ。もう1人は、私以上に危機的状況に陥ってしまった。現在奥さんが子供を連れて実家に帰ってしまっており、やり直しには、板東塾を辞め真面目に働く、池谷さんと縁を切る、
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63 「じゃあ、説明して」と麻子が促すが、想定と違う展開になってしまったのだろう。雄輔は、話す内容が浮かばないのか、しばらく口をモゴモゴとさせた後で「その前に、何か言いたい事があれば言って?」と逆に質問を投げた。 「えっ何? 私が言うの?」 「うん。ちゃんと聞くからさ」 「あ~。分かった。じゃあ、どうして、その説得の仕方で私が納得すると思ったの?」 「えっ? あ~」 雄輔の目が泳ぐ。しばらく目が泳いだ後で「麻子が急に反対したからビックリした」と言い出した。麻子は「えっ
59麻子と智美(X2年7月) ここ最近、いつものカフェレストランからすっかり足が遠のいている。 というのも、そのカフェレストランが複数の雑誌やテレビの情報番組でも紹介され、やたら混むようになってしまった。その混雑への対処なのか、店内の席数を大幅に増やした事もあり、窮屈で騒々しい空間へと変貌。ゆっくり、おしゃべりを楽しむ空間では無くなってしまったのだ。 こうなると2人の目的には適わない。以後、麻子の自宅でティータイムを過ごすようになった。 今日も、智美が都内のデ
54(X2年6月) 改めて起業を決意して以後、どんどん仕事が怠くなってきた。 今まで、どんなにヘルプ地獄の日々が続いても、仕事で朝起きるのが億劫という経験は無かったのだが、このところ、毎日にように2度寝をし、時々、麻子に起こされるようになった。 それだけではない。いつもは朝に大の方を済ませてから出掛けていたのだが、遅刻ギリギリで起きた日は大をせずに家を出る。遅刻ギリギリなものだから、駅まで走る事も多い。ギリギリ電車に乗ってホッとするのも束の間、今度は便意に襲われる
49(X2年6月) 一旦は収まった退職ドミノだったが、2週間もしない内に再発した。ここに至って過労からダウンするスタッフが続出したのだ。加えて派遣社員のドロン(突然来なくなる)も重なり、またもやヘルプ地獄に突入した。 今週は吉祥寺店に張り付きっぱなしだった。店舗マネージャーが過労で倒れて入院したのが原因だ。何でも仕事中にお腹の辺りに激痛が走り病院に運ばれ検査したら結石に過労と診断されたそうだ。(肝臓の数値が異常だったらしい)。 ほぼ同じ時期、配属後1ヶ月も経たず
45(X2年5月) 5月下旬から始まったヘルプ地獄は6月も続いた。 嫌がらせなのかと思うくらいの連日のヘルプで、小便の黄色がどんどん濃くなっていった。6月に入ると大井町接骨院への出勤は週1日~2日まで減り、残りはリラクゼーション事業部のヘルプ地獄へと駆り出されっぱなしだった。 アホ専務一味の横暴により減った人員を、補充が終わるまでの間ブラック労働で埋めるものだから、そのブラック労働で酷使したスタッフが辞める、倒れる。その補充をさらなるブラック労働で埋めるものだから
41(X2年5月) しばらくして、少し古めのビルに前に到着した。 幅の狭い階段を降り、持ち手がガムテープで補強され外枠の塗りが剥がれている扉から室内に入ると薄暗い通路が続く。薄暗い通路を奥まで進むと、今度は黒の鉄製の重そうな扉がある。先導するスタッフが、その重そうな扉を開くと、中は先ほどの狭い通路からは想像がつかない程に広く、奥がステージになっている。 天井はデザインなのか内装費削減が目的なのかは分からないが、決してオシャレには見えない配管がむき出しになっており
37(X2年4月) 起業熱が高まると同時に、仕事に対するモチベーションはどんどん下がっていった。 小堀はやる気ゼロだし客も全然来ない。1人でも間に合うくらいの仕事量だが、にも関わらずスタッフは多い。今日も、小堀、赤羽さん、さらに八木君という寡黙な男性に私を加えた4人ものスタッフがシフトに入っている。 八木君は先月、小堀が現地採用したスタッフで、柔道整復師資格(接骨院を開業出来る資格)に、鍼灸師資格を保有している。業界歴は8年で腕も良い。何で、こんなクソみたいな職場
32(X2年4月) 4月から板東塾がスタートする。 麻子には、来年開業か転職かの2択に絞ったと説明しておいた。転職の場合でも、マネージャー・院長としての転職になるから、経営の勉強をしたいと説明し、どうにか板東塾に通うことだけは納得してもらった。麻子からは「開業の場合でも転職の場合でも必ず相談して欲しい」と言われたので「必ず相談するから安心して」と伝えたものの、話した感触からして起業には反対なのが分かる。 正直、私は接骨院で開業するつもりは無い。 何か新しいビジ
26(X2年2月) 休憩時間中、私は隣の席の男性と話していた。 彼は興奮した口調で「もう入塾を決めた」話している。話を聞くと、セミナーに参加すると決めた段階で入塾を決意し入塾後に会社も辞める予定だそうだ。彼も会社で理不尽な目に遭い続け、ずっと我慢してきた。上司がクソ碌でも無い奴で、何かあると見せしめにと彼を怒鳴りつけては、彼を駄目キャラに仕立て上げ、延々虐げ続けてきた。 30歳になり、そんな理不尽に耐えられなくなり、次の道を探すべくインターネットで色々調べていたと
24(X2年2月) 休日、新宿の喧騒を避けるように、地下と地上と広い通りと狭い通りを駆使しながら急ぎ歩いていた。新宿駅の地下街から地上に昇って10分程だろうか、やっと目的のビルが見えてきた。ビルの入口には第6期板東塾セミナーと書かれた案内板があり、まだセミナー開始時刻の30分以上前だが、吸い込まれるように次々と人が入っていく。 他にもセミナーが開催されているみたいなので、全員が板東塾セミナーでは無いのだろうが、それにしても私が案内板を見つけてから入り口に到着するまでの
21「麻子と智美」(X2年1月) 麻子と智美は梅ヶ丘駅から数分の場所にあるカフェレストランに来ていた。 麻子と智美は小学1年生のクラスの席替えで席が前後になり仲良くなってから中学卒業まで、行きの通学路、休み時間、帰りの通学路、帰宅後のお出掛けまで、いつも一緒に居た仲だ。 高校生になると、麻子が公立高校、智美が私立の有名女子校に進学した為、別々になってしまったのだが、自宅が近くだった事もあり、時間を作っては毎週のように遊んでいたくらい2人は仲が良い。今もほぼ毎週のよう
16(X1年12月) 年末年始は暇だった。リラクゼージョン事業部が運営する店舗は、場所にもよるのだが、基本31日の大晦日と1日の元日以外は店を開ける。2日はそれほど混まないのだが、3日から家族の買物中のお父さんの待機場所として、または居場所に困った人達や、年末年始に仕事に駆り出された人達がどっと押し寄せてくる。 一方、人員(シフト)は常に手薄になると共に、加えて年末になると派遣やバイトスタッフが突然止めてしまったり、無断欠勤からそのままドロンしたり、インフルエンザ(仮