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【エッセイ】絶望の中にある光を見つける方法

絶望の中にある光

「僕の人生、このままでいいのかな?」

その日も、私は会社の帰り道、いつもの歩道橋の上で立ち止まった。東京の夜景が一望できるはずのその場所で、私の目に映るのは、ただぼんやりとしたネオンの光の群れだけだった。

30代も半ばを過ぎ、毎日の生活に埋没していく自分を感じる。そんな私の心は、この街の夜景と同じように、ぼやけて見えにくくなっていた。

光を探す旅の始まり

光を探すのは簡単なことではない。特に、自分の内なる光となると尚更だ。私たちは往々にして、外の世界に答えを求めがちだ。だが、本当の光は意外と近くにあるものなのかもしれない。

私は歩道橋を降り、いつもと違う道を選んだ。狭い路地に入ると、古びた本屋が目に入った。店内に入ると、埃っぽい匂いと共に、懐かしさが私を包み込んだ。ふと手に取った一冊の本。それは、かつて夢中になって読んだ小説だった。

本を開くと、そこには若かりし日の私のメモが残されていた。「いつか自分の小説を書くんだ」そう書かれていた。

忘れていた。いや、忘れたふりをしていたのかもしれない。その頃の私には、世界を変えられるという根拠のない自信があった。

忘れられた夢との再会

本を買い、家に帰る。いつもより遠回りをした。雨上がりの舗道に、街灯の光が映り込んでいた。その光の中に、かつての自分の姿を見た気がした。

家に着くと、本棚の奥から埃をかぶった日記帳を取り出した。ページをめくると、そこには10年前の私が書いた言葉が並んでいた。「今日もまた、小説が書けなかった。でも、明日は書けるはずだ」

私は笑った。そして少し泣いた。あの頃の私は、毎日が希望に満ちていた。それは、ある意味で幸せな時間だったのかもしれない。だが、その希望は現実の壁にぶつかり、いつしか忘れ去られていった。

光を見出す瞬間

翌日、会社に向かう電車の中で、私は昨夜読んだ本の一節を思い出していた。「絶望は、希望の裏返しだ」という言葉だ。

その瞬間、私は気づいた。絶望を感じられるということは、まだ希望があるということなのではないか。完全に諦めてしまった人間は、もはや絶望すら感じないのかもしれない。

私たちは、光を求めすぎるあまり、目の前にある小さな輝きを見逃してしまうことがある。毎日の生活の中にも、確かに光はある

朝、目覚めたときの最初の一杯の水の美味しさ。電車で偶然聞こえてきた誰かの優しい言葉。帰り道に見かけた、思いがけない美しい夕焼け。

それらは、確かに大きな光ではないかもしれない。だが、そういった小さな光の存在に気づくことが、私たちの人生を少しずつ明るくしていく。

そして、そういった小さな光に気づける感性こそが、私たちの中に眠る大きな光なのかもしれない。

光を育む日々

その日から、私は少しずつ変わり始めた。毎晩、その日見つけた「小さな光」を日記に書くようにした。

最初は、ほんの些細なことしか書けなかった。「今日は、久しぶりに青空を見た」「同僚が美味しいコーヒーを淹れてくれた」程度のことだ。

だが、不思議なことに、そうして小さな光を意識し始めると、徐々に周りの世界が変わって見えてきた。いや、変わったのは世界ではなく、私の見方だったのかもしれない。

ある日、いつもの歩道橋で立ち止まった私は、ふと気づいた。街の灯りが、以前よりもずっと鮮やかに見える。それは、まるで私の心を映し出しているかのようだった。

新たな一歩を踏み出す勇気

そして、ある日のこと。私は長年温めていたアイデアを、小説として書き始めた。昔のように、毎日書けるわけではない。むしろ、書けない日の方が多い。だが、少しずつでも前に進んでいる実感がある。

小説を書くことは、私にとって大きな挑戦だ。完成するかどうかも分からない。でも、それは問題ではない。大切なのは、自分の中にある光を信じ、一歩を踏み出したことだ。

私たちは、時に人生に絶望することがある。だが、その絶望こそが、新たな光を見出すきっかけになるのかもしれない。

絶望は、私たちに「変化」を求める。そして、その変化の中にこそ、新たな希望が生まれる

光は常にそこにある

今、私はまた歩道橋の上に立っている。街の灯りは、以前と変わらずそこにある。変わったのは、それを見る私の目だ。一つ一つの光が、誰かの人生を象徴しているように感じる。

私たちは皆、この街の光のように、小さくても確かな輝きを持っている。それに気づくことが、絶望の中にある光を見つける第一歩なのだと、私は信じている。

そして、その光は決して消えることはない。たとえ見えなくなったとしても、それは雲の向こうに隠れた太陽のようなものだ。必ずまた、姿を現す。

私たちにできることは、その光を信じ続けること。そして、自分の中にある光を、少しずつでも大きくしていくこと。それは、決して簡単なことではない。でも、不可能なことでもない。

今日も、私は小さな一歩を踏み出す。それが、どんなに小さな一歩であっても、確実に私を前に進ませてくれる。そして、その一歩一歩が、私の中の光を少しずつ大きくしていく。

人生は、絶望と希望が織りなす物語だ。その物語の中で、私たちは常に主人公である。そして、その主人公が持つ光こそが、物語を動かす原動力なのだ。

あなたの中にも、必ず光はある。それを信じて、今日も一歩を踏み出そう。そうすれば、きっと新たな景色が見えてくるはずだ。

終わり


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