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(4) 芸能人(?)を 使い倒してみる。(2024.2改)

「地方から日本社会を変革します。岐阜は列島の中心に位置しますが、国の発電機となり、各パーツにエネルギーを供給する主役を目指します。

地球儀の中で日ノ本の小ささを知り、この国を束ねる発想を初めて抱いた日本人は、皆さんもご存知、信長です。
尾張ではなく何故、海の無い内陸の岐阜と滋賀に中央政庁を構えようと思ったのでしょう?
私は想像するのです。武人としての信長は防御するのに最良の場所としてこの内陸地を選んだのだと。
当時の琵琶湖は澄んでおりましたので水源にもなりますし、水産資源も豊富なので蛋白源を確保できます。信長が籠城するなど考えられませんが、手堅い一面も有る人でしたので、鎌倉期の元寇を万が一の可能性として考えたのかもしれません。何れにせよ、安土城と岐阜城が外部と遮断されても困りませんでした。
また、起業家でありビジネスマンとしての信長は、日本海にも太平洋にもアクセスしやすいこの地の地形と重要性を理解していたのでしょう。
尾張は最初から手にしていますので、浅井氏に妹の市を差し出します。日本海へのアクセスがどうしても必要だったのだろうと私は想像するのです。市の嫁ぎ先と、日本海のアクセス権の相関関係を説いている歴史学者を私は知りませんが、私はそうに違いないと、一人の母親、姉として確信しています。

信長になったつもりで今の岐阜を眺めてみましょう。富山はバチバチの同盟国なので、日本海へのルートは既に手にしています。信長と完全に逆ですね、私たちには太平洋ルートがどうしても必要になります。だから尾張であり、名古屋なのです。嘗て、学生時代を過ごした彼の地で、デートスポットにもならなかった小汚い海とコンテナだらけの商業港が、今は恋しくって仕方が有りません!」
岐阜県庁の吹き抜けの大会議室に笑いが起きる。初登庁した村井幸乃岐阜県知事が県の職員を前にして述べていた。

「・・富山県に代表される社会党知事による地方行政・地方自治が、政府の中央行政の遅れを如実に示し、劣化し続ける政令指定都市自治の有り様を示しているのは、皆さんもご存知かと思います。自浄作用があり、クリーンなのは地方です。既存政党に染み付いているカネと利益のために癒着する構造が払拭され、公平な政治が実現しています。
岐阜はどうでしょう?当県が選出している国会議員は全員与党議員です。県議会も市議会も金権体質の染み付いた議員達で構成されています。富山も栃木も岡山もバリバリの保守地盤でした。それが新知事就任のたったの数ヶ月で変化したのです。地方行政、地方自治では企業や団体と政治家の癒着が強くなる構図は過去のものとなりました。知事の交代だけではありません。もう一つ背景があるのです。それは「平成の大合併」です。全国3200以上もあった市町村は、今では半分近い1700余りにまで減り、2001年に6万1千人だった地方議員は、が21年に3万2千人となり、20年で半減していています。

我が県も同様ですが、住民が陳情や要請する対象が減ってしまったので政治家に頼らない自治に目覚めたのです。女性活躍を掲げる政策ネットワークや、住民の若手を中心とした勉強会などが各地で数多く立ち上がりました。

21世紀になり、談合や汚職事件が相次いだ反省から一般競争入札の制度が整いました。また、多くの自治体で地方議員からの要望や働きかけに見せかける「口利き」行為の防止策となる、しっかりと記録に残す規定が出来たのも多分に影響しているでしょう。
また、地方自治体では、政治倫理条例による審査会開催も容易ですし、地方自治法の百条調査権により議会や会派の詳細情報を簡単に調べられます。既に何も隠せないオープンな環境になっていたんです。国政調査権では証人喚問や記録の提出を求める以上の規定もありません。皆さん職員の尽力、先達のご苦労のお陰で地方の透明性が高まっているからこそ、私達社会党知事はコンスタントに成果を挙げられるのです。

従来の与党による杜撰な治世の悪影響で、日本全体が縮小しているのはご存知の通りですが、規模の拡大を追い求めた与党の政治家が吸っていた甘い汁を、地方では最早吸うことはできません。
彼らは自分達で自分の首を締めたのです。

停滞する一方の国の経済状況下で、票を取りまとめる力のある大企業も団体もなくなり、金権体質の与党議員はグリップを利かせられなくなり、コントロール出来なくなっているのです。
この地方の状況を私達社会党は「神風」と密かに呼んでいます。ここだけの内緒の話にしますね。

地方に神風が吹いている今だからこそ、私たちはゼロスタート出来る、実は絶好の環境となっているのです。
賄賂や中抜きの無いプロジェクトを推進し、プロジェクトを実現する然るべき投資を行ない、県内で事業を起こして需要を喚起して地方経済を活性化すれば、結果は自ずと付いてきます。
富山、栃木、岡山で成功し続けている同じロジックを、ここ岐阜でも実践して参ります。

更に富山県とのタイアップ「しらさぎ経済圏」により投資規模は何倍にもなります。当県を日本でも有数の優良県に格上げするのが私の夢であり目標です。どうか、皆様県職員のお力を貸していただきたいと考えております!」
新知事に向けて、大きな拍手が起きる。

「・・とはいえ、皆さんにハードワークを強いるのは本末転倒です。そこで社会党恒例、お助けマンの登場です!本日は皆さんの助っ人をお連れしました。どうぞ、皆さんお入り下さい!」

幸乃が言うと、モリのバンドメンバー3名を先頭に、プルシアンブルー製のPCを持った30人の助っ人社員の元CAが、会場内にゾロゾロと入ってくる。全米アルバムチャートで4週連続一位のメンバーの登場に、県の職員は大騒ぎだ。

「おはようございます!
アルバムが北米で売れまくって儲かってますので、私達3人はタダ働きします!
先ずは知事のサポートがメインですが、イベントなどの営業が中心になると思います。岐阜は観光地が多いですからね。
各課の皆さん、他県や県内企業、県内各市役所との折衝や打合せにもどんどん連れってって下さい。
ウチのドラム担当者から、物凄く頭のいいAIを貸与されているので、与党の失言ジジイどもの様にはなりませんのでご安心下さい。
また、30名のエキスパート職員の皆さんも、栃木、岡山と一緒で県は人件費負担の必要はありません!
岐阜県庁の皆さん、岐阜県民の皆様、私達新人をどうぞ宜しくお願い致しまーす!」 
リーダーでギター担当で歯科医の由布子が言うと、拍手喝采の大騒ぎとなった。

実際に新知事就任初日から、県職員の残業はゼロとなった。この日のトップニュースとなったのは言うまでもない。

ーーー

来年度の予算を決める通常国会が開催されていた。が、来年度予算の「目玉」を与党は未だに据えられずにいた。
コロナ特効薬バスターCの浸透により、政府税調が審議を重ねてきた、数十兆円にも上るコロナ対策費が宙ぶらり状態になってしまった。然らばコロナ後の経済対策だと慌てて舵を切ったら、富山県と岐阜県が総額3千億円にもなると言われている「しらさぎ経済圏構想」を打ち出し、既に動き出している。

国家プロジェクトとしても前例にない規模のプロジェクトなので、政府と官僚達が後追いで経済対策を考案しても、全て霞んでしまう。

社会党も、しらさぎ経済圏のプロジェクト推進のために全力の姿勢を見せている。モリのバンドメンバー3名を担ぎ出して、岐阜県副知事兼プロジェクト推進担当として広告塔に据えた。
「3人のうちの誰かが名古屋市長選に立候補します。残りの2人も何処かの市長選に出ます」と言えば、世界中でニュースとして取り上げられてしまう。岐阜県の新人事が、各国のトップニュースになったのだから呆れるしかない。
その上、名古屋証券取引所には海外投資が殺到し、自動車株、重工株、建設株を中心に朝から大商いとなっているのだから。

政府予算は来年度予算なので、4月以降に使える予算となる。故に経済対策案を予算化するにしても、実際には夏以降の実施となる。
既にプレアナウンスの段階で実態経済にプラスを及ぼしている「しらさぎ経済圏」にどうしても見劣りしてしまうのだ。

首相はこの事態を知っていたかのように、急にリーダーシップを取り存在感を誇示するようになっている。来年度予算に対して2つの柱を掲げて、提言し始めている。

1つ目だが、首相は防衛大臣経験者で与党内防衛族の第一人者でもある。
普天間基地の米軍撤退を受けて、国防体制の見直しを掲げている。先日の訪米時では、思いやり予算減額分の防衛費増額を新大統領と国防長官に提案し、賛同を得ている。
閣議決定レベルなので、国会で議論する必要があるが、前内閣が進めていた戦闘機F35 100機の購入を中止して、計画していた1兆円以上の購入費を米国製のUAVやドローンを数百台で代替購入し、日本の防空網をより強化するプランを打ち出している。
米国も各国からF35の発注が嵩みバッグオーダーを抱えているので、日本のキャンセル要請を好都合と判断して、応じる姿勢を見せている。

代替となる機体の調達を米国国防総省に打診中で、無人機500機、ドローン300機購入の予定となっている。無人機UAVはB-117、ドローンは80キロ輸送ドローンで、中身はシンガポール企業のプルシアンブルー製だが、公の場では米国製として販売する。機体に搭載する弾丸や小型ミサイル、UAVとドローンのレーダー波を反射する特殊塗料は、米軍からの提供となるからだ。

首相は尖閣諸島問題で中国と対峙する海上保安庁の装備も増強して、より広範の意味での国防強化策を掲げている。
もう一つ首相が前のめりになっているのが、「北朝鮮復興支援」だ。 
首相は新大統領から平壌以外の韓国寄りの北朝鮮都市部の開発支援の打診を受けた。
帰国後、首相は経産省に対して北朝鮮4つの小都市のデザイン設計を要請している。
多国間協議の場でラフスケッチを紹介するのと同時に、実際に視察の為に現地をスタッフを派遣して、具体案を纏める必要がある。

北朝鮮を新たな市場として注目している国内企業も少なくなかった。
地元の企業や担当業界からの陳情を受けた与党議員、族議員達が、北朝鮮への企業進出を実現する為に、日本も多国間協議に参加して欲しい旨を綴った要望書が、政府を代表して官房長官に手渡された。

一方であちこちから要望を受けている経済産業省と経産大臣は頭を抱えていた。
輸出競争力の低下した日本企業が、中国や韓国の企業と競合出来うるだろうか?と考える。
輸出が伸び悩んでいるのは日本企業だけではない。中韓の企業、特に製造業はプルシアンブルー社の海外進出によってアジア周辺も含めた各国市場で売上が落ち込んでいるからだ。

北朝鮮市場参入を狙う上で、十分なマーケディングが出来ていないが、恐らく、北朝鮮の購入層は所得が低い。それ故に安価な中国や韓国製品の方が分がありそうだと見ていた。
1割程度のシェアを獲得できれば万々歳と見ているが、果たしてどうなるか?引き続き精査する必要があった。

そんな経産省の悩みを、見て見ぬフリをする前田外相が居た。

今までの日本は、アメリカの属国であり、犬であり、ATMだった。
今までの自滅党政権は米国の求めに応じて金をバラ撒き続けてきたが、少なくともATMのポジションからは脱し、日本は無駄金をビタ一文出す必要が無くなった。
本来、北朝鮮の経済支援にも関わる必要もない。北朝鮮への資金援助は一切しないと事前に密約を交わしているからだ。
それが許されたのもコロナ特効薬のお陰であり、金正思の襲撃に、特定の日本人が大きく関与したからだ。
プルシアンブルー社も、北朝鮮には関与しない方針を掲げている。市場としての北朝鮮を競合企業に明け渡すつもりでいた。

前近代的な国であり、手間の掛かる市場だと北朝鮮を分析していた。
参入するなら半世紀過ぎてからだろう。資本主義の波に晒された北朝鮮が、ある程度ボトムアップしてからのんびりと参入する方がラクだと判断した。社会党とプルシアンブルー社は、余計な手間暇を掛ける必要性を 今の北朝鮮には感じていなかった。

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源 翔子から齎された新情報、「沖縄4区補選への立候補」を受けて、金森鮎を初め、モリ家の面々と、プルシアンブルー社は調整に入る。

ゴードンとサミア夫妻は八重山諸島にマーケディング部隊の派遣を決める。各島のニーズを分析して島内経済、一次産業を始めとする産業を活性化するプランをモリより早く分析するためだった。

選挙区となる島には小さな空港があるので、30人乗りのSAABb340の小型プロペラ機をモリ専用機として用意して、羽田、富山、名古屋、那覇間を自由に移動できる様に対象機とパイロットとクルーの選定に入った。

杜 蛍は沖縄へ向かうメンバーの人選を行なう。
議員公設秘書を源 翔子と屋崎 由真の従姉妹コンビとし、八重山諸島の個人事務所、居住地要員として安東姉妹を始めとするママ友4名、国会期間中の都内滞在中の議員会館秘書を宮城南三陸の2名に据える。

大学生と新高校3年生は都内在住と一本化し、新高校2年生以下中学生女子は沖縄、八重山諸島へ転校の方向で動き出した。

鮎もサミアも蛍も、沖縄4区入りは予め想定していた。
モリの次の狙いは対台湾・対中政策の推進と、米軍撤退を睨んだ国防になるだろうと。

「専用機って何なのよ・・」
蛍は​SAABb 340の資料を眺めながら、そういや一応ロックスターでもあったっけなぁと思い出し、富山県知事室で一人で笑っていた。

(つづく)


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