#ホラー小説
洞窟の奥はお子様ランチ|毎週ショートショートnote
電車の中で、赤ん坊の泣き声が響き渡った。その瞬間、友人がすっと席を立つ。「降りよう」という無言のアピールだ。
今まで何度か同じことがあり、僕は「赤ん坊の泣き声が苦手なんだろう」と、特に何も言わなかった。しかし、苦悶の表情を浮かべ、「はぁ」とため息をついてプラットホームのベンチに座る友人に、思わず「そんなにイヤなの?」と聞く。
「いや、違うんだ」
次の言葉を待つ。
「俺の実家は長野の山奥で、夕
白骨化スマホ|毎週ショートショートnote
DF25S7W500H91
警察からスマートフォンを預かり、製品番号をメモする。
――白骨遺体か……。
スマホの持ち主の成れの果てを知り、少しだけ背筋が寒くなった。
「えーと、DF25S7、W500H91……」
会社のパソコンに、さっきのスマホの製品番号を打ち込む。
みんな携帯電話の製品番号なんて気にしたことはないだろうが、実は電話会社や携帯端末製造会社の間では、この製造番号に特別に気
強すぎる数え歌|毎週ショートショートnote
真っ直ぐ行けば、遠回り。
右に曲がれば、鉢合わせ。
左に曲がれば、真っ逆さま。
昔、俺が住んでいた田舎にあった歌だ。でも、この歌が何を意味するかは知らない。
中学の時、通学路の途中に小高い丘があり、その丘は雑木林になっていて、不気味なので、みんなその丘を迂回する小道を通っていた。
ある時、付近一帯が再開発されることになり、例の丘の木々はほとんど切り倒され、前よりも不気味さはなくなった。部活
ご飯杖|毎週ショートショートnote
茶碗に盛ったご飯に箸を立てて、故人にお供えする「枕飯」、もしくは「一膳飯」という風習を言っている人は多いと思う。しかし、私の祖父母が住んでいる田舎ではちょっと違い、ご飯に箸ではなく菜箸を立てて、それを杖に見立てる「ご飯杖」というものだった。なぜ菜箸なのか、なぜそれを「杖」に見立てているのか、私は知らなかったし、別に知りたいとも思わなかった。
その日、祖母のお葬式を滞りなく終え、ちょっと休憩してい