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#風習
失恋墓地|毎週ショートショートnote
「よう、マスター」
私が右手を上げると、マスターは「いらっしゃいませ」と小さく会釈した。相変わらずオールバックがキマっている。もう10年来の付き合いたが、マスターの外見は全く変わらない。
カウンターの中心から、少し左の席に座る。
「水割りでよろしいですか?」
「ああ、頼むよ」
このバーで水割り以外の酒を頼んだことがない。いや、そもそも水割り以外の酒は置いてあるんだろうか。
「今月は1通だ
ルールを知らないオーナメント|毎週ショートショートnote
妻と娘がクリスマスツリーに飾り付けをしている。普通なら微笑ましい光景なのだろうが、今の私の表情は「無」に近い。
私の実家には「飾り付けは一切してはならない」という決まりがあったので、クリスマスにも正月にも、何かの行事があっても、飾り付けというものを一切したことがなかった。実家だけではない。実家がある西日本のとある地域には、今もそういう風習がある。
「飾り物をすると、それを盗りに来る奴がいる」
ご飯杖|毎週ショートショートnote
茶碗に盛ったご飯に箸を立てて、故人にお供えする「枕飯」、もしくは「一膳飯」という風習を言っている人は多いと思う。しかし、私の祖父母が住んでいる田舎ではちょっと違い、ご飯に箸ではなく菜箸を立てて、それを杖に見立てる「ご飯杖」というものだった。なぜ菜箸なのか、なぜそれを「杖」に見立てているのか、私は知らなかったし、別に知りたいとも思わなかった。
その日、祖母のお葬式を滞りなく終え、ちょっと休憩してい