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Vol.1:耐震だけでは命を守れない!?劣化する建築物/「住の教科書」黄no+e 防災意識編 第一章 災害に強い建築物の条件


黄no+eは災害・防災について考える
「住の教科書」


今後の記事の予定や構成は下記をご確認ください。


2024年の始まりは衝撃的な大地震から始まりました。

ニュースやYou tube では様々な地震による被害やこれからの地震対策について議論されていますが、今回の能登半島地震では「新耐震基準」と呼ばれている住宅でも倒壊しているという情報もあります。

耐震基準というのは、1981年に1度、2000年にも1度改正されています。

今回2000年以降に建築された建物(現行基準の建物)には全く被害がなかったのか?
いや、おそらくあったはずです。
今回の被害はごくわずかだったかもしれませんが、熊本地震の時は2000年以降に建てられた「耐震等級2」の建物であっても倒壊してしまうというニュースがありました。

地震対策完璧の建築物を建てる!!それが日本建築においてかなり重要な使命と言っても過言ではないと思っています。
そのための対策として、今回は大きく2つの方法について記事にしたいと思います。

災害日当日にも地震についての記事を書こうかと思いましたが、流行に乗っているようで嫌だったので、少し期間を空けて書こうと思い時期を見計らっていました。
純粋な気持ちで地震対策を皆様にキチンと考えて欲しいと思ったからです。

住宅や学校、ビルやマンションなどどんな建築物であっても、取れる対策は全て取って欲しいと私は考えています。

そのために一緒に、日本の建築物について考えていきましょう。

この度の震災に際し、心よりお見舞い申し上げます。
皆様方の一日も早いご復興をお祈り致します。

それでは本編をどうぞ




■耐震等級3だけでは不安がある

「大地震の被害を0にする」
それは非常に難しい問題だと思います。

それは、建物の老朽化を見抜くことができるかどうかという問題もあれば、金銭面的に地震で建物を強化することができないこともあれば、賃貸に住んでいるから自分ではどうしようもないこともあります。

また、地面が液状化や地割れを起こしてしまうと、建物がいくら良い性能だったとしても倒壊・崩壊してしまう可能性があるからです。

しかし、建物が地震で倒壊や崩壊しない為の知識や対策というのは可能な限り知っておくべき

命を守る為にできることは知っておいて損はしませんよね。


2000年基準の耐震性能?

日本では直近で2度の地震に関しての基準を改正しています。
①1981年に新耐震基準の制定
②2000年に現行基準の制定

耐震等級というのは②の時期の「品確法」に沿って制定された、素人でも数字で家の強さの違いがわかるようにと用意された表示です。

耐震等級は以下のように表示がされています。

こう見ると確かに耐震等級3が良いんだな!!
耐震等級3なら防災拠点になるぐらいの性能じゃないか!!
ってなると思うんですが、注目すべきは「一度だけ」ということなんです。

そして、もう一つ考えて欲しいのは
その「強さ」というのは「いつまで」続くのか?です。


強度を高める≒地震に負けない

耐震等級というは強さ(硬さ)=強度を高めて地震に強くしよう!!という考え方です。
具体的にはどのように強度を高めるのか?

●接合部分の金物の量を増やす
●耐力壁というような地震に強い壁の枚数を増やす
●壁をバランス良く設置する
●構造計算をして、それに基づいた寸法の設計で建築する

難しい話は置いといて、構造計算ではどんなことを考えるのか?
建物がどんな方向に力が加わって、どう曲がるのか?

建物はどんな重量で、揺れた場合にどんな揺れ方をするのかを想定しているのか?

確かに地震が来た時に負けないように想定して計算はされているのですが、それだけでは耐えることができていない建築物があったのも確かなんです。

では、計算されていない、想定されていない部分というのはどんなことなのか?


計算されない重要な構造部分

大地震で一番多い建築物の倒れ方ってどんな倒れ方なのかご存じですか?

正解は「1階部分が崩壊し、2階以上の部分がそのまま残っている」という倒れ方が一番多いんです。

中日新聞より引用

なんでこんな倒れ方するのか?
様々な理由があるにはあるのですが、こんな木が原因だったりします。

「ほぞ」と呼ばれる穴が空いており、そこにそれぞれの木をはめ込んで組み立てていく工法なんです。
これは昔から大工さんに伝わっている工法なんですが
「細い部分って頼りないと思いませんか?」

特に1階と2階に連なる柱のことを通し柱と言います。

柱に3分の1程度の穴を空けているんですが、このことを「断面欠損」と言います。
今の木造住宅は柱の寸法が105mm×105mmとかもあるので、その約3分の1の35mmを組みあわせて家を作っている。

昔ならではの木造軸組在来工法ではよく見かける工法なのですが、お寺とか昔の家のように「大きな木に穴を空けて組み合わせる」ならまだわかりますが、10cmそこらの大きさの木にこんな大きな穴を空けて地震が来ても大丈夫?
私は大丈夫って言えないと思います。

耐震等級の計算する時に設計士側で「断面欠損を考慮する・考慮しない」って選択できるんですよね。

計算上はこうすれば力が加わらず~とかあるんでしょうが、耐震の考え方は基本的に強度を高く保つ方向性です。

穴が大きく空いて強度が高いのか?

今は「ほぞ」を作って組み立てるよりも、金物工法が一般的です。

ドリフトピン工法

これはこれで怖いところもあるんですが、少なくとも「ほぞ」を作るよりは強固な家ができます。

「いやいや、通し柱を無くせば良いんじゃないの?」
という声も聞こえてきそうですが、それもそれでかなり危険なんです。

接合部分が増えれば増えるほど、その接合部分がどれだけ強固に接合できているのか?
また、通し柱がない場合の家とある場合でこんな違いをイメージしてください。

TOTOリモデルサービス引用

基本的にはあった方が良いと考えています。

そして、剛床工法の考え方も大事だと思っています。
これは住宅を例に紹介しますが、ビルやマンション、アパートなどでも参考にして欲しい工法です。

最近では一般的な工法ですが、今の木造住宅は壁面の構造体を点と線と面で地震力を分散させる方法というが知られています。
それを床でも再現しようというものです。

詳しくは敷島住宅さんのHPを参考にしてください。

言いたいことは、この剛床工法も計算にはあまり考慮されてないけど大事なことだと思っているということです。

そして、計算されないけれどもっとも大事なこと・・・

それは「構造の劣化は計算されていない」ということなんです。


■構造(強度)は劣化するもの

建築物は時間が経てば劣化していくものです。
その為のメンテナンスなんですが、表面だけメンテナンスを行っていてもどうしようもない劣化が存在します。

湿気や結露が最大の敵!!

建築物において、湿気というのは最大の敵です。
まずは木造住宅においてどのような問題が考えられるのか?

①壁体内結露
②床下結露

この二つが大問題につながるのです。

まず①壁体内結露が起きている状態の家の写真をいくつかご紹介します。

アイジースタイルハウスさん引用


馬渡ホームさん引用


アート・宙さん引用


日経クロステックさん引用

これ全て、壁体内結露が原因で起きている現象なんです。

壁の中の黒いのはカビもありますが、カビだけではなく別のモノだったりしますが置いといて

この状態で地震に耐える力が落ちていないって言えませんよね?

さらに②床下結露の画像をご紹介

ハウスサポート有限会社さん引用

こちらは床下の換気不足で起きているんです。

新しい建物でも、夏場地域や場所によっては床下結露を起こしている可能性があります。

ここまでくると、地震に耐えられるわけがないと感じませんか?
木材が湿気てしまうと、地震が起きた際金物が外れて倒壊する可能性があります。

写真は木造でしたが、鉄骨でも同じような結露というのは発生します。
鉄骨の場合は結露→錆となりますので、同じように構造が劣化して地震に弱くなってしまいます。

マイベストプロさん引用

そして、RC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)でも同じように劣化してしまうことがあるんです。


SRC造が倒壊!?劣化するの?

SRC造とは?
鉄骨鉄筋コンクリート造の略称で、主に警察署や消防署などのような防災を意識している建物に採用されることが多い工法です。

※阪神淡路大震災の時の写真がたくさん載っているサイト

今回の能登半島地震では、SRC造7階建てビルが地盤補強の杭ごと抜けて倒壊してしまうなんてこともありました。

接合部分の虚弱性だったり、重さの考慮がされてなかったりもあるでしょうが、私は建築物の劣化も非常に大きな影響を与えているのではないかと考えています。

SRC造やRC造、S造のように強固な建物でも倒壊や崩壊をする。
その原因が「酸化・中性化」です。
錆びていくってことですね。

鉄はほっといたら錆びるもの。それは皆さんご存じですよね?

もちろん塗装である程度長持ちするようにはできているのですが、鉄筋コンクリートの鉄筋が錆びて、コンクリートが剥がれることがあるってご存じでしょうか?

コンクリートメディカルセンターHPより引用

コンクリート内は基本的にアルカリ性です

ですが、炭酸ガスを吸収することによって少しずつ内部が中性に変化していき、中性化が進んでいくと内部の鉄筋にまで到達

その後、鉄筋が錆びていき、その錆により鉄筋が膨張
その影響でコンクリートがひび割れたり剥離してしまうんです

HAGSさんHPより引用

このような状態になって、耐震等級3維持できていると思いますか?

まぁ、難しいですよね。

構造の計算というのは、劣化は考えられてませんし対策も乏しいのが現状です。

そして、次に考えることは
「揺れないように設計されているのかどうか?」

構造計算を行っていても「家の硬さ」や「強さ」を計算しているだけで、揺れないように考えられているわけではないことがほとんどです。
大型の鉄橋などは、あえて揺れるように設計して力が逃げるようにという考え方をしていますが、ほとんどの建築物は「耐えること」を前提に設計されています。

何言ってるのかわかりにくいと思いますが
家が固い・強い≠揺れない
ということを知っていて欲しいのです


耐震等級3だけ揺れて、耐震等級1が揺れないこともある?

まずはこちらの動画をご覧ください

今回はevoltzさんの動画を参考にしていますが、この「共振」という考え方は制震装置を取り扱っているところ全て共通で認識していることです。

「1:14」ぐらいから実際に揺らされているところが見れますが

営業トークスクリプトとしてこんな感じ

「1,2、3のうちどれが一番揺れると思いますか?」
「1ですよね?」

と言って、1を揺らし始めます
「1が一番大きく揺れているんですが、これは私が1を共振させているだけにすぎません。」

「揺らすスピードを速くすると?」
2が一番揺れ始め

「さらに早くすると?」
3が一番揺れ始めるんです

どういうこと?っていうと、物の一つ一つで揺れやすい周波数と揺れにくい周波数というものがあるんです。

揺れやすい周波数のことを「共振」と言います。

建物の硬さによって、揺れにくい揺れやすいというものが発生するので、どれだけ建物の耐震等級を上げようが、揺れてしまうことで建物にダメージが蓄積されてしまいます。

建物が揺れれば
・接合部分が緩んでしまう
・構造自体が曲がり脆くなってしまう

建物を硬くするのも大事なんですが、建物を揺らさないようにするという技術も同じぐらい大事になってくるんです。


〇まとめ

建築というのは建て替えたりリフォーム前提で作られてはいます。

ですが、そもそも何年新築の状態と変わらないよう維持できているの?
耐震等級ってどんなものか理解できている?
構造計算でどんなことを計算しているの?
実際に地震があった時の被害ってどんな被害にあっているの?

地震は怖い!!でも、地震に対しての知識を身に着けようとする人って少ないように感じます。

これからこの「住の教科書」黄no+eでは、防災意識を高める為に地震・地震対策・建築劣化対策について記事にしていこうと思います。

本日は簡単に耐震について、劣化について、揺れる建築について触れていきました。

Vol.2~は具体的に一つ一つ、事象と対策について学んでいただこうと思います。


以上です!!

参考になりましたか?

次回は
「住の教科書」黄no+e 災害・防災編 第一章 災害に強い建築物の条件
Vol.2:地震がきても揺れない!?制震・免振技術

に続きます!

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