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Vol.2:地震がきても揺れない!?制震・免振技術/「住の教科書」黄no+e 災害・防災編 第一章 災害に強い建築物の条件

前回
耐震等級3だけが揺れて、耐震等級1だけが揺れない地震もある。」
というお話をしました。

結局建物を強く硬く固めても、揺れることで建物にダメージが入り、建物の寿命というのは削られていきます。

本記事では
地震が起こす揺れというのはそもそもどんな揺れ方を起こすのか?
建物の構造によって揺れ方に違いがあるのか?
揺らさない為の技術とは?
ダメージを可能な限り減らす為にはどうすればいいのか?
これらをテーマにしていきます



■地震が起こす揺れの違い

地震って全部同じような揺れ方をするわけじゃないんです。
地震の種類によっては、津波が発生するしないと変わりますし、大きな揺れ方を繰り返す地震や、小刻みに激しく揺れる地震もあります。
それぞれを簡単にだけ説明していきます。

直下型と海溝型(かいこうがた)地震??

地震のタイプには大きく分けて2つあります

①直下型(ちょっかがた)→大陸部で発生する地震
②海溝型(かいこうがた)→海側で発生する地震

小難しいことは置いといて、海側で発生するのか、大陸側で発生するのかが大きな違いと覚えてください。

次に二つの地震は何故・どうやって発生するのか?

moshimoストックさんHP引用

直下型地震

大陸内部にあるプレートが引っ張られ、活断層が割れることで発生する地震。
イメージとして硬い板を思い浮かべてください。
それを折り曲げていくと、途中で割れてしまいますよね。
さらに、その板にヒビが入っていたらそこから割れやすくなります。
プレートはある程度柔軟性がありますが、割れた瞬間に発生するのが直下型地震というイメージです。

直下型地震は下から地面に対して衝撃が届くので、横に揺れるというよりも縦にドン!!っと突き上げられたかのように揺れます。
寝ていたら頭を殴られるような衝撃で揺れる地震ですね。

しかも、かなり突然大きく一瞬で揺れるので、予兆がない地震とされており、事前に察知することが困難です。

代表例としては「阪神淡路大震災」「熊本地震」ですね。


海溝型地震

海溝型には細かく分けて3タイプあります。

①プレート境界地震→海洋プレートによって引きずり込まれた大陸プレートが、元に戻ろうとした際にプレートの境界で跳ね上がります。この跳ね上がりが原因で発生する地震。
津波が発生する可能性が一番高いタイプです。

地震の揺れ方としては、大きく長くグラグラ~とした縦にも横にも揺れるようなイメージです。

東京都防災ホームページ引用

南海トラフ地震はこのタイプの地震だと考えられます。
震度はかなり幅があり、震度1もあれば震度7もありえる地震です。。
(※震度は7以上の8とか9は今のところ取り決めがありません。)

このプレート境界地震に関しては、事前に察知ができる!!とされています。
なので、地震が起きる前にスマートフォンから避難の通知が届く可能性があります。

代表例としては、東北地方太平洋沖地震が有名です。


②スラブ内地震

海洋プレートが大陸プレートの下に潜りこんでいきますが、内部でプレートが圧縮されて海洋プレートが破壊されズレが発生し地震となります。

かなり地中の奥深くで発生する地震で、プレート境界地震と比べると規模はそれほど大きくなりづらく、揺れ方は細かく短い揺れが多い地震です。

文部科学省HP引用

スラブ内地震は事前察知がしづらいとされています。
また、津波を発生させることもあるようですが、そこまで大きな津波になることはありません。

代表例としては1994年の「北海道東方沖地震」です。


③アウターライズ地震

海洋プレートが下に潜りこんでいく際、海洋プレートの折り曲がっている部分が海側で破壊されることで発生する地震。
アウターライズ地震のみの場合は大きな地震になるわけではなく、震度も低い可能性があります。
揺れ方として長くゆったりとした地震で横揺れになることが多いようです。

アウターライズ地震の怖いところとして、津波を発生させる可能性が非常に高いという点です。
海面に向けて地面が隆起するので、海が押し出されて津波に発展する。というイメージですね。

徳島新聞デジタル版引用

こちらの地震も事前には察知できません。

代表例としては1933年3月3日に発生した「昭和三陸地震」です。


地震は連鎖するのが怖い

ここまで色んな地震があるんだよ!
地震によっては縦や横に揺れたり、大きく揺れたり、細かく揺れるんだよ!!
ってお話をしていますが、地震がもっとも怖いのは

「1種類の地震ではなく、2種類、3種類と連鎖的に起きる可能性がある」

ということなんです。

例えば、プレート境界地震が発生したらその影響で、同時にアウターライズ地震やスラブ内地震も発生する。
なんてこともあり得ます。

なので、どの地震が発生したとしても、1度だけでなく2度目の発生や、津波が発生する可能性というものを秘めているんです。

地震による揺れの違いとしては、どんな時でも
「縦にも横にも、大きく細かくも揺れる」ということです。


■建物による揺れの違い

地震が発生した際、地震による揺れの違いというのはありますが、建物の形状や建て方によっての揺れの違いも存在します。

重心による揺れの違い

建物の重心が「低い」か「高い」かによって揺れの違いが現れます。

同じ大きさの2階建て建物があったとして、
建物の重心が「低い」場合は全体的に同じような揺れ方をしますが、
重心が「高い」場合は上が大きく揺れやすくなってしまいます。


頭でっかちな建物は大きく揺れやすいということですね。


高さによる揺れの違い

建物の高さによっても揺れ方が変わります。

高さが高くなればなるほど、高い位置の方が横揺れの場合揺れが大きく揺れやすくなります。

マンションやビルの高層階にいたことがある人はわかると思いますが、揺れ方が細かい揺れというのが少ないです。
(縦揺れなら細かくはなる可能性有り。)

なので、設計段階から高層マンションやビルというのは重心を低くするために「下を太く、上を細く」建てれるように設計しているんです。


縦横比率による揺れの違い

真上から建物を見た時の、縦横比率によって揺れ方も変わります。

同じ面積の建物を考えた時に、正方形の建物と長方形の建物で揺れ方が一緒なんてことあり得ないですよね。

長辺方向の揺れには強くなりますが、短辺方向の揺れは揺れやすくなります。


硬さによる揺れの違い

建物の硬さ(強度と靭性)によっても揺れ方に違いが現れます。

いやいや、硬い方が揺れないでしょ!?って思われるかもしれませんが、硬ければ硬いほど、細かく早い揺れで揺れやすくなります。
また、ある程度の硬さの場合は大きくゆっくりとした揺れで揺れやすくなります。
これは共振効果と言いまして、物の一つ一つに固有振動があり揺れやすい周波数と揺れにくい周波数というものが存在します。

前回の記事に紹介動画を挙げているので、そちらも参考にご覧ください。

木造建築だろうが、鉄骨建築だろうが、鉄筋鉄骨コンクリート造だろうが、揺れるときは揺れるということですね。


絶対に揺れない家はない

いくらガチガチに強度を高めたところで、建物というのは揺れる時は揺れる!!
地震がきた時に強度やバランスを考えた設計だけでは、揺れない建物は存在しないのです。

建物は揺れることでダメージが蓄積してしまいます。
金物や構造が痛み、気密性が劣化
1回目の揺れには耐えたけど、2回目3回目の揺れには耐えられない可能性があります。
地震の被害に合う度に建物は倒壊してしまう可能性を高めてしまうんです。

では、揺れを防ぐにはどうすればいいのか?
それが「制震装置」「免震装置」なんです!!

(※大規模な建築の場合は、あえて揺れして力を逃がすといった技術もありますが、今回は地震対策の観点からの記事になります。)


■建物を揺らさない技術

制震装置と免震装置をそれぞれご紹介しますが、詳しい説明は省いてどんなものなのか?を簡単にご紹介します。

あまり専門的な話を知りたい人はお問合せください^^


制震装置

制震装置とは、建物が揺れてしまう振動エネルギー(運動エネルギー)を、ゴムやオイル、材質や構造で吸収(熱エネルギーに変換)して揺らさないようにする装置のこと。

基本的に建物そのものの、構造(柱や梁、土台等)に直接取り付ける形が多く、物によりますが地震の揺れを最大90%もカットするようなものも存在します。
震度5の地震が来ても、震度2とか、1とかぐらいにしか感じないなんていう話もあります。
実際に制震装置を取り付けて、熊本地震を経験した設計士の話がYou tubeにありますので、こちらも参考にご覧ください。

震度1から効果を発揮するものもあり、最近の住宅業界では設置が当たり前のレベルで設置されることも多くなってきました。

私は7年~8年前ぐらいからはずっと設置した方がいいですよ!!って言い続けています。耐震等級1から3にするよりも、こちらの制震装置を設置する方が効果的だと考えている一人ですね。

つけるべき理由として、建物が揺れなくなるのはもちろんですが、コストパフォーマンスが高いということが挙げられます。
30坪程度の木造住宅に制震装置を取り付けする場合は、初期費用が20万~30万円程度で設置が可能なんです。

私は戸建て住宅だけではなく、3階建て以内の賃貸アパートにも設置して欲しいと考えています。
木造や鉄骨の種類に関係なく、可能ならばどんな建物にも設置するべき技術であると考えています。

人の命は何にも代えられない価値があります。
賃貸のオーナー様にこそ知って欲しい技術かもしれません。

しかし、注意点としては商品によっては「断熱材の邪魔」をしている制震装置も存在します。
また、リフォームでは設置できない商品だったり、解析ソフトを使っていない商品などもあるので、選び方には注意しましょう。


免震装置

免震装置も原理として基本的な考えは「建物」と「地面」を切り離して、地震の揺れを建物に伝わらないようにするということなんです。

制震装置は揺れた時に揺れを軽減するに対して、免震装置は建物を地面から見て空中に浮かせて揺れさせないようにする装置になります。

基本的には大型建築に使われる技術で、マンションやビルなどで採用されることが多いです。
建物本体に取り付ける装置ではなく、建物の基礎の下や基礎内部に取り付けるようになっています。

様々なタイプがありますが、戸建てにも採用されているメーカーがいくつかあります。

免震装置を採用すると、本当に地震が来ているのか?と思うぐらい軽減されるなんてこともあるようですが、全く揺れないわけではありません。

免震装置の地震の揺れを軽減する能力は、免震装置の可動域によって制限が掛かってしまいます。

また、非常に高額であるというのがネックになってしまいます。
30坪の住宅に設置するとしても、300万円以上必要になってしまうこともあり戸建てには少し不向きかなと思います。

マンションやビルなどの大型の建築であれば、制振装置よりも免震装置の方がコスパが良くなり設置もしやすくなるのですが、向き不向きがあると思ってください。

こちらも商品によっての注意点としては、縦揺れに明らかに弱い構造をしている免震装置があるということです。
ゴムやダンパーを介して設置している場合は問題ありませんが、レールやベアリングだけで設置している商品はよく検討するようにしてください。


〇まとめ


地震の種類はたくさんあります。
縦揺れだったり横揺れだったり、遅く大きい揺れだったり早く細かい揺れだったりと揺れ方が様々です。
そして、建物の構造によって揺れやすい揺れ方が存在します。
耐震等級が1だろうが、2だろうが、3だろうが、揺れ方によっては建物が揺れてしまいます。

建物が揺れると建物の構造にダメージが入り段々と脆くなってしまいます。
そうなると、揺れそのものを軽減させるものが必要になります。

地震などの揺れを軽減させる為の装置が「制震装置」と「免震装置」という設備です。
制震装置や免震装置を設置することで、建物の揺れてしまいそうになってもブレーキをかけたりして揺れにくくなります。

制震装置や免震装置を設置することで、建物のダメージを最小限に抑え、繰り返しの地震でも耐えることが可能になります。

そして・・・建物が揺れにくくなると

家の寿命を延ばすことにもつながるんです!!


本日は以上です。
参考になりましたか?

次回は
「住の教科書」黄no+e 災害・防災編 第一章 災害に強い建築物の条件
Vol.3:壁の中が真っ黒!?腐る構造を回避せよ
に続きます!

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