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"韓国の深層に分け入る"緻密な食レポであり、感性的なフードエッセイを読む

 韓国料理を分かった気になっていた自分を反省した。韓国は5回も旅行した上に、新大久保にも入り浸っている私は全てを知り尽くした気でいた。表面をすくうだけのグルメ本にはない、"韓国の深層に分け入る"緻密で感性的なフードエッセイ。

 これまで平野紗季子さんやスズキナオさんのフードエッセイを紹介したが、今回紹介する平松洋子さんはまた違うベクトルで食体験を描く。それは緻密な食レポであり、小説のような美しい表現をアクセントにした、彼女だけの読み味。どうやら30年以上韓国の味を探求しているようで、文章からもその熱量と愛を感じ取れる。

 流行りのグルメではなく、むかしの味を題材にしているのが唯一無二の点。インスタ映えなどない時代の、ただひたすら味を追求した"おいしい"の起源を辿る旅。そこにはハルモ二*¹やハラボジ*²が代々受け継ぎ、更にその下の世代へ脈々と繋げる歴史と伝統があった。

 この本は韓国料理のイメージを変える。SNSに上げたくなる派手な見た目ではない。野生をそのまま皿に移したような素朴さには全く映える様子がない代わりに、先人の技術と知恵が詰まっている。地味ではあるが、滋味に溢れた料理の数々。それを理解するには時間がかかるかもしれないが、入ってしまうとかなり奥の深い世界なのだろうと思う。

 何度も食べたはずのビビンパも、彼女の文章を通すと新鮮に、そしてより鮮明に味を追体験できる。私は”食の都”全州まで足を運んだ自負があったが、元祖と言われる晋州ビビンパの魅力に引き込まれた。いつかの韓国旅行に向けて読んでおきたい、想像と食欲を掻き立てる文章。


※1 ハルモニ:おばあちゃん
※2 ハラボジ:おじいちゃん


平野紗季子さん↓

スズキナオさん↓

雪濃湯(ソルロンタン)↓

韓国おいしいまとめ↓

韓国旅の思い出↓


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