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"食欲のしもべ"平野紗季子ワールド

 以前に一度だけ紹介したが、私は"フードエッセイスト"として活動する平野紗季子さんの著書「味な店」に影響されてnoteを始めた。彼女の文章はふわふわと感性的でありながら、時に核心を突いて読者を頷かせる。そんな印象を受けた。

 先日、彼女の別の本を読んだ。「生まれた時からアルデンテ」という如何にもエッセイなタイトルだが、中身はエッセーをはるかに超えていた。仮に評論→エッセイ→ポエムの順に感性的で人を選ぶ文章になるとしたら、これは完全にフードポエム。相性が悪ければ胃もたれする表現ばかりの脂っこい文章に感じるかもしれないが、気に入れば抜け出せなくなる中毒性を持っている。

 正直、「味な店」が好きな私も「生まれた時からアルデンテ」には驚きと多少の胃もたれを感じた。ただ、この人の世界は段階を踏んでいくことで心地よい空間に変わっていくと思うので、そのための案内をここでしようと思う。

 まずは「味な店」から入るのが良いと思う。飲食店案内にエッセイを盛り込んだようなテイストで、料理それ自体だけでなく、店の雰囲気やそのお店で働く人々にまで言及しているのが特徴。追体験として生き生きとお店を感じられるのがいい。

 次は書籍から離れて、ポッドキャストの「味な副音声 ~voice of food~」を聞いてもらいたい。20分前後で聞けるテーマトークが面白いのだが、なぜだか話し言葉として彼女の表現を聞くと、活字よりも色濃く彼女の世界観を受け取る。多分、これが彼女のリアルな表現なのだと、自分の感性との違いを見せつけられているのだろう。

 そして最後に「生まれた時からアルデンテ」を読むと、すっと平野紗季子ワールドを受け入れられると思う。この本は個々の料理というよりも、食という概念をしつこいくらいに掘り下げようとしている。自分の食体験が浅はかで、もっと食に向き合わなければと背筋を正される一冊。

 実はあともう一冊、「私は散歩とごはんが好き(犬かよ)。」という本もあるのだが、これはまだ読めていない。タイトル的にはエッセイとポエムの中間にありそうだが、実際に読んでからまたnoteに感想を書くつもりだ。

 冒頭でも書いた通り、平野紗季子さんに出会ってから"フードエッセイ"を書こうと努力してきたが、自分は"エッセイスト"と言うよりは評論に近い"ジャーナリスト"的な文章だなと感じる。彼女をリスペクトしながらも、自分の文章を書いていきたい。

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 Amazonリンクを貼りすぎてアフィリエイトのような、ステマのような記事になってしまいましたが、決してそのようなことはございませんので。。

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