「煙に惑わされて」

 喉が燃えるような感覚に襲われた。目の前には空っぽのショットグラス。

「さすが度数、九十六度は次元が違うな」
 首を抑えながら、椅子に深深く座った。疲弊した僕を見て、笑う友達。こいつら。人が不幸になっているというのに。ため息をつくと近くの客がタバコを吸っているのが見えた。

 そういやそれそれ吸いたくなってきたし、ここは一発決めときますか。タバコを咥えて、火をつけた時、僕は手についたスピリタスに目が入った。僕は死を悟った。

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