「真夜中の牛丼」

 無音が支配する深夜。酒に頭を狂わされながら、僕は町外れの牛丼屋に入った。

 店内には疲れた顔の中年男性が一人で、厨房を切り盛りしていた。

 注文すると数秒で品が出てきた。

 出来立ての牛丼と湯気が立つ熱い味噌汁。気だるげな体を動かして、口に運んだ。ああ、これだ。うまい。牛丼のセットは味噌汁と丼で奏でるドラマが違う。

 まずは牛丼。食べ応えたっぷりな牛肉と溢れ出る肉汁。そして、胃にずっしりのしかかる白米。素晴らしい。

 次に味噌汁。酒で汚れた体を洗い流すような温もり。体内を洗浄しているような感覚に陥る。素晴らしい。ああ素晴らしい。気がつくと僕は泣いていた。あまりにも美味しいものがお手頃な価格で食べられるのだ。

 牛丼を食べ終わった後、僕はいつもより輝いて見える星を目にしながら帰った。

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