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寝れない→細胞性炎症→疼痛感度↑

📖 文献情報 と 抄録和訳

睡眠障害と細胞性炎症の活性化が痛み感度の上昇を媒介する:無作為化臨床試験

📕Irwin, Michael R., et al. "Sleep disruption and activation of cellular inflammation mediate heightened pain sensitivity: a randomized clinical trial." Pain (2022): 10-1097. https://doi.org/10.1097/j.pain.0000000000002811
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✅ 前提知識:4つの睡眠ステージについて
①レム睡眠:夢を見るのは、ほとんどがレム睡眠時です。脳が筋肉を麻痺させるので、夢を実行することはない。
②N1ステージは、眠りについた直後で、非常に短い時間(通常10分以内)。眠りについてすぐの段階で、非常に短く(通常10分以内)、簡単に目覚めることができる軽い眠り。
③N2ステージは、約30~60分続く。この段階では、筋肉がよりリラックスし、徐波(デルタ)脳波の活動が始まることがある。
④ステージN3は深い眠りで、約20分~40分続く。この段階では、デルタ波の脳活動が活発になり、体を動かすこともある。ステージN3の人を目覚めさせるのはとても難しい。

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[背景・目的] 睡眠不足は痛みの感度を高めるが、この関連性を示す経路はわかっていない。実験的な睡眠阻害により、細胞性炎症が増加し、徐波N3睡眠が選択的に失われることから、本研究では、健康な成人の睡眠喪失後の疼痛感受性にこれらのメカニズムが寄与するかどうかを検討した。

[方法] この評価者盲検による睡眠条件のクロスオーバー、シングルサイト無作為化臨床試験には、95名の健常成人(平均年齢[SD]27.8 [6.4]; 女性44 [53.7%] )が参加した。2つの睡眠条件は、2晩の妨害されない睡眠(undisturbed sleep, US)と2晩の睡眠妨害または強制覚醒(forced awakening, FA、8時間の睡眠機会中に8回の疑似ランダムに分布した覚醒と200分の覚醒時間)で、2週間のウォッシュアウト後、クロスオーバーデザインで無作為の順序で実施した(FA-US;US-FA)。主要アウトカムは、熱痛覚閾値(hPTH:すなわち、32℃を基準として、参加者が最初の痛覚 を報告するまで 0.5℃/ 秒で温度を着実に上昇)であった。睡眠構造はポリソムノグラフィーで評価し、朝の細胞性炎症レベルはToll様受容体-4刺激による単球内炎症性サイトカイン産生で評価した。

[結果] USと比較して、FAは徐波またはN3睡眠の量の減少(P < 0.001)、Toll様受容体-4刺激によるインターロイキン-6と腫瘍壊死因子-αの産生の増加(P = 0.03)、およびhPTHの減少(P = 0.02)と関連していた。包括的な因果関係調停分析の結果、FAはN3睡眠の減少とその後の炎症の増加によってhPTHに間接的な影響を及ぼし(推定値=-0.15、95%信頼区間、-0.30~-0.03、P < 0.05)、介在する割合は34.9%であることがわかった

[結論] 徐波、N3睡眠の減少、細胞性炎症の増加は、睡眠障害後の疼痛感度の重要なドライバーである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

自分の中には心身の疲れを癒すための睡眠と、何かを無視するための睡眠がある
マルチョン

今回の論文を読むにつけ、睡眠は、疼痛を無視するためのものかも知れない。
睡眠不足は細胞性炎症を通じて、疼痛閾値を下げる(感度上昇)ことが明らかになった。

これはリハビリテーションにおいて非常に重要なことだ。
リハビリの阻害因子として、疼痛は甚大な影響を与えるものの1つだ。
痛いから、動きたくない。
痛いから、歩けない。
痛いから・・・。
十分に睡眠を取れていたなら、少しだけ、疼痛が軽減するかも知れない。
疼痛が軽減すれば、前に踏み出そうとする気持ちが、挫けないかも知れない。
僕たちは、睡眠と向き合うことにもっともっと、真剣にならないといけない。

リハビリだけではない、全人生的にも、重要だ。
人生、一生懸命に走ろうとするほど、転び、怪我をし、そこに痛みを生ずる。
物理的にも、社会心理的にも。
だから、しっかりと眠ろう。
眠ることで、痛みを忘れよう、回復しよう。
次の日の、勇気が湧き出ずるように。

疲れちょると思案がどうしても滅入る。
よう寝足ると猛然と自信がわく。
坂本龍馬

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