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体性感覚の過活動は、関節拘縮を引き起こす

📖 文献情報 と 抄録和訳

感覚神経細胞における過剰なメカノトランスダクションが関節拘縮を引き起こす

📕Ma, Shang, et al. "Excessive mechanotransduction in sensory neurons causes joint contractures." Science 379.6628 (2023): 201-206. https://doi.org/10.1126/science.add3598
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[背景・目的] 関節拘縮症(Distal arthrogryposis, DA)は、結合組織、腱、筋肉の短縮による関節可動域の制限を特徴とする疾患である。これまで、骨格筋収縮装置のタンパク質をコードする遺伝子の変異がDAと関連しているとされていた。本研究では、感覚神経細胞におけるピエゾ型機械感受性イオンチャネル成分2(PIEZO2)の過剰な活性がDAを引き起こすことが示された。

[方法] PIEZO2は、軽い触覚や固有感覚(空間における自分の手足の位置の感覚)を知覚する体性感覚ニューロンの主要なメカノセンサーであるとされている。主に筋紡錘体や腱を支配する固有感覚神経細胞にPIEZO2機能獲得変異を発現させ、DAの発現を調査した。

[結果] マウスモデル(発達に敏感な時期)を用いて、筋肉や腱を神経支配する固有受容ニューロンに変異型Piezo2対立遺伝子を発現させると、関節拘縮、腱の短縮、筋力や機能に依存する行動テストの成績不良を引き起こした。神経伝達を阻害するボツリヌス毒素(ボトックス)を筋肉内に注射すると、これらの遺伝子改変マウスの関節や腱の欠陥が大幅に改善された。これらのデータは、マウスのDA5様病態を引き起こすには、感覚ニューロンのPIEZO2の過活動が十分であるという結論を支持するものであった。

📕Müller. Science 379.6628 (2023): 137-138. >>> doi.

[結論] PIEZO2のような神経機能に関連する遺伝子もDAと関連していることが分かった。このように、筋肉と脊髄をつなぐ神経細胞の変化もまた、DAを引き起こす可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「外傷者は、妙に関節拘縮の進行が早いよな」と感じていた。
実際、先行研究でも外傷は関節拘縮を加速させることが報告されている(📕Hildebrand, 2008 >>> doi.)。
でも、そのメカニズムが何か、についてはあまり知らなかった。

今回、Science誌で明らかにされた事実は、このメカニズムを説明するものかも知れないと感じた。
つまり、体性感覚の過活動が、関節拘縮を引き起こすというものだ。
外傷後には、疼痛をはじめ、さまざまな体性感覚情報が、通常時と比較して過剰に入力されていることが推察される。
その場合、このメカニズムによって関節拘縮が誘発されるのではないかと思った。

だが、注意が必要なことに、今回の研究はあくまでもマウスの発達時期に操作が行われたもので、人の外傷後を説明しうるものではない。
この仮説が証明されるのは、もう少し先のことだろうと思う。

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