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筋原性収縮:4週間の股関節固定により明らかになった関節拘縮の最重要ファクター

▼ 文献情報 と 抄録和訳

股関節単関節固定による股関節拘縮のラットモデル

Minamimoto, Kengo, et al. "A rat model of hip joint contracture induced by mono-articular hip joint immobilization." Clinical Biomechanics 90 (2021): 105487.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ ハイライト
- 股関節を固定して屈曲拘縮を誘発するラットモデルを開発した。
- 大腿骨と腰骨に挿入したKワイヤーを固定し、股関節を固定した。
- 筋原性収縮は時間依存的に4週間まで増加した。
- 意外なことに、4週間の固定でも関節拘縮はほとんど見られなかった。

[背景・目的] 股関節屈曲拘縮の形成過程と治療標的を明らかにするために、我々は股関節単関節の固定によって引き起こされる股関節屈曲拘縮のラットモデルを開発した。

[方法] 大腿骨と腰骨に挿入したキルシュナーワイヤーを、固定化群では股関節を屈曲させた状態で固定し、シャム群では固定しない状態で4週間まで放置した。対照として,年齢をマッチさせた無処置のラットを用いた。股関節伸展可動域(ROM)は,筋切開前,大腿筋膜張筋,大腿四頭筋,腸腰筋を順次筋切開した後,残存するすべての筋肉(中殿筋と内転筋)を筋切開した後,連続した筋切開ステップごとに3つの異なる伸展モーメント(7.5,15,22.5N・mm)で測定した。また、股関節の組織学的分析も行われた。

[結果] 4週間の固定後、22.5N・mmの筋切開前のROMは、対照群に比べて29°有意に減少し、偽装群ではこの値は変化しなかった。筋切開後の解析では、これらの筋切開によってROMが増加したことから、筋原性収縮の原因となっている構造は、大腿筋膜張筋、腸腰筋、中殿筋、内転筋であることが示唆された。意外なことに、4週間の固定後も、7.5N-mm以外のモーメントでは、関節原性収縮は検出されなかった。組織学的分析では、股関節の前嚢に病理学的変化が見られないことが確認された。

[結論] 今回の結果は、筋原性収縮が固定化による股関節屈曲拘縮の重要な治療ターゲットになることを示唆している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

ベッドレストは筋力低下や関節可動域の低下を引き起こす。

今回の論文が明らかにしたことは、理学療法士にとって重大だ。
なぜなら、「筋原性収縮をどうするか?」は、可変的な可能性が高く、理学療法士がなんとかしなきゃいけない主戦場だから。

ラットの研究だと、やはり、人ではできない思い切ったことができる。
・固定もワイヤーでがっちり固定(ギプスとか外的でなく)
・筋原性の推測も、筋切除という「あり」「なし」で明瞭な論理思考がとれる
・主観的な要因に影響されにくい

今回の結果から、とくに入院中の比較的短期間(数週間〜1-3ヶ月)に生じる関節拘縮は、理学療法士の責任であることが明瞭に示された。
さて、ベッドレスト中・直後の筋原性収縮に、どんな介入ができる?
その重荷を背負って、臨床に向かおう。
うれしいな、これは僕たちの荷物だ。

最近、こんな風に思うんだ。
人間、いろんなものを背負い込めば背負い込むほど、どんどん身軽になっていくんじゃないだろうかって。
あの頃の俺達より、今の俺達の方がよっぽどどこまでも、よっぽどどこまでも行けるぜ!
竹原ピストル STAY FREEより

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