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入院患者の移動。障壁と実現要因(200人のインタビュー)


📖 文献情報 と 抄録和訳

「人生とは移動することであり、生きているものはすべて移動する」:高齢患者の視点から入院患者の移動の障壁と実現要因を理解するための混合法研究

📕Byrnes, Angela, Prue McRae, and Alison M. Mudge. "‘Life is about movement—everything that is alive moves’: a mixed methods study to understand barriers and enablers to inpatient mobility from the older patient’s perspective." Age and Ageing 52.7 (2023): afad111. https://doi.org/10.1093/ageing/afad111
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[背景・目的] 入院中の移動は、自立を維持し合併症を予防するために重要である。我々の多施設共同研究は、高齢患者の視点から移動能力を測定し、移動参加の障壁と促進要因を明らかにすることを目的とした。

[方法] 12の病院の20の急性期病棟における成人入院患者の直接観察、および各病棟における65歳以上の成人への半構造化面接を含む混合法研究。インタビューは訓練を受けたスタッフが入院中に行った。量的データは記述的に分析された。質的データは、まず理論的領域枠組み(theoretical domains framework, TDF)を用いて演繹的にコード化し、その後帰納的アプローチを用いて信念の記述の枠組みを作成した。

[結果] 成人入院患者503人の日中観察10,178件のうち、歩行または立位で過ごした時間はわずか7%であった。200人の高齢患者のインタビューを分析した。ほとんどの患者(85%)は、入院中の移動が非常に重要であることに同意した。最も一般的な8つのTDF領域にわたって23の信念声明が作成された。高齢の入院患者は、移動の利点を認識しており、体力と健康を維持または回復し、自宅に戻るという目標に突き動かされて、入院中の移動に自発的に取り組んでいた。しかし、多忙なスタッフに迷惑をかけたくない、あわただしく雑然とした環境の中で、痛みやその他の症状、新しい障害や既往症の管理に苦慮していた。移動器具、意味のある歩行目的地、個人に合わせたプログラムと目標があれば、移動は容易になるが、患者には許可、励まし、適時の援助も必要であった。

[結論] 入院患者の移動能力は低かった。高齢の急性期入院患者は、個々の能力をサポートしない物理的・社会的環境にしばしば直面していた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、患者の移動に関するスタッフ側の認識についての文献抄読をしたことがある。

その中で、「決して転倒を起こしてはいけない」という信念は、患者の移動を制限する環境をつくることが明らかになっていた。
今回の抄読研究は、逆の立場、患者側の立場から移動の認識を理解しようとした研究だ。

特に印象に残ったのは、「多忙なスタッフに迷惑をかけたくない」である。
実際に臨床現場において患者さんの口から聞いたことが何度もある。
この部分は、事前に医療者-患者間のコミュニケーションを十分に取っておくことで解消が可能と思われた。
例えば、書面にて、
「当院は患者さんの移動量が増大することを症例します。それによって、スタッフが見守りに入る必要がありますが、それを迷惑と思う必要は全くありません。患者さんが少しでも動く量が増えることを、我々の重要事項と捉えています」
などの文章を事前共有しておけば、この心配は少なくなるかもしれない。

今回の研究の中で、医療従事者が特に貢献できる箇所として「許可を与える」の部分だと思う。
文字が擦り切れるまで読み込みたい。

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