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身体活動量と転倒。私は動いた方が安全ですか?

📖 Special Issue:My Narrative Review

身体活動量と転倒の関係性について、自分の知る論文をレビューする

■ レビュークエッション

このツイートと先行研究を見て、かねてより感じていた疑問が明確になった。

「身体活動量と転倒の関係を考えたときに、動いた方がいいの?、動かない方がいいの?」

これまでぼんやりとしていたことに、自分なりの答えを出してみたい。

■ 車椅子使用者は転倒傷害リスクが低い
・研究①:車椅子使用者は、外来対照者と比較して、転倒傷害リスクが低かった。結論:車椅子使用に伴う不動は骨折や、転倒傷害の危険因子と見なすべきではない(📕Axelsson, 2023 >>> doi.)
・研究②:転倒率はFIM移乗スコア4で最も高い(📕Kato, 2022 >>> doi.)

・考察:常時車椅子使用者は転倒リスクが低い。また、動けるか動けないかの境界者で転倒リスク↑。活動機会があって能力がないと最も転倒の危険性が高いのではないか?

■ 座位(sedentary behavior, SB)時間が長いと転倒リスク増大
・研究:歩行可能な地域在住高齢者が対象者。座位時間が最も長い四分位の高齢女性は、転倒のリスクが有意に高かった(📕Rosenberg, 2021 >>> doi.)
・考察:歩行可能な高齢者にとっては、座位時間が長いことは転倒リスクを高めることにつながる。活動機会が少ないことは身体能力を低める→身体能力が低下することは長期的に転倒につながるのではないか?

■ 多量の身体活動(physical activity, PA)は転倒リスクを低める
・研究①:LIPA無はLIPA有と比較して、転倒リスクが平均34%高かった。MVPAの1/3グループは最高1/3グループに比べて転倒リスクが平均51%高かった(📕Bielemann, 2022 >>> doi.)
・研究②:【Umbrella Review】定期的な身体活動は、転倒に関連した傷害のリスクを軽減することができる(📕Loretta, 2019 >>> doi.)
・研究③:【Systematic review and meta-analysis】身体活動は高齢者の転倒,特に傷害を伴う転倒を有意に減少させる(📕Thibaud, 2012 >>> doi.)

■ 多量すぎるPAは転倒リスクを高める
・総説:高齢者/高齢障害者は活動量が増加すると転倒する頻度は増加する(📕眞野, 1998 >>> site.)
・研究①:❶非活動的,❷中程度に活動的,❸非常に活動的グループに分類。転倒発生率は❷ < ❶ < ❸であり、PAと転倒率の間にはU字型の関係があることが示唆された。
・考察:PAは高いほど転倒リスクが下がるという一軸、線形の関係ではないのか。動作能力と活動機会(量)の2軸が関わり、U字型を描くのかもしれない。

■ まとめ:身体活動量と転倒は2軸から理解すべし

軸①:Can you move? → 身体機能としての動ける or 動けない
軸②:Do you move? → 日常活動機会として動く or 動かない

この2軸によって、4象限に分かれ、転倒リスクについてより妥当な解釈が可能となる。

象限①:『動けなくて、動かない』
・転倒リスクは低い
・例. 日常的に活動機会の少ない車椅子使用者の転倒リスクは低い
象限②:『動けるが、動かない』
・転倒リスクは長期的に増大
・例. 座位時間が長い人→身体機能が低下することで長期的な転倒リスク↑
象限③:『動けないが、動く』
・転倒リスクは最高
・例. 日常的に活動機会の多い歩行不安定者や身体機能低下者の転倒リスクは最も高い
象限④:『動けて、動く』
・転倒リスクは高い
・例. 歩行能力や身体機能が高くとも、活動機会が多すぎれば転倒リスクは高くなってしまう

身体活動量と転倒を考えたときに、自分の中でずっとモヤモヤしていた正体がわかった。
大きく2軸ある関係性なのに、それらが混在していたために、訳が分からなくなっていたのだ。
今回、1つのツイートと論文を皮切りに、今までストックしてきた論文が大きな結論に収束してくれた。
大概は、この考え方で間違いないのではないかと感じる。
そして、この考え方でいけば、「車椅子使用に伴う不動は転倒の危険因子として見なすべきではない」(📕Axelsson, 2023 >>> doi.)という結論は検討の余地があると思う。
価値の区分が必要だ。
車椅子使用に伴う不動は、①活動機会の側面からは転倒リスクを減らし、②身体機能の側面からは不活動により身体機能が低下するため活動に伴う転倒リスクを増大させる、と思われる。
Axelsson, 2023の論文においては、常時車椅子使用者を対象としているため、①のメリットが大きく、②の弊害は表出しにくい、ということなのではないだろうか。
今後、身体活動量と転倒の関係性を検討する際には、常にこの2軸の両サイドから光を照らそう。

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