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転倒者のプロフィール。クラスター解析により5つが明らかに

📖 文献情報 と 抄録和訳

自宅で転倒した65歳以上の人々のプロファイルと、それに伴う転倒による傷害を特定する。フランスのChuPADom研究

📕Torres, Marion J., et al. "Identifying profiles of people aged 65 and over who fall at home and associated falling-induced injuries: The French ChuPADom study." Injury (2022). https://doi.org/10.1016/j.injury.2022.02.021
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🔑 Key points
🔹高齢者の個人的な特性だけでなく、転倒を取り巻く状況も異質であることが浮き彫りになった。
🔹フランスの高齢者における家庭内転倒者(HF)の5つのプロファイルが明らかにされた。
🔹本研究の結果は、より的を絞った転倒予防の介入戦略の実施について新たな考察を促すものである。

[背景・目的] 高齢者における転倒は、関連する罹患率および死亡率のために公衆衛生上の大きな問題である。その原因は、多くの場合、多因子性である。目的、デザイン、対象者本研究の目的は、ChuPaDomと呼ばれ、ChuPAdom研究のデータを用いて、転倒して入院した65歳以上の人の中から、自宅転倒者(HF)(ここでは居住地で転倒する人と理解)のパターンまたはプロファイルを特定し、転倒による怪我との関連性を検討することである。

[方法] 多重対応分析および主成分による階層的クラスタリングを実施した。多変量ロジスティック回帰を用いて、HFプロファイルと傷害との関連を検定した。

[結果] サンプルは1467人(69%女性、平均年齢84.5歳;回答率は87.4%)であった。以下、5つのプロファイルが確認された。

■ プロフィール1:危険を冒して、高いところから転倒した若い高齢者(n = 83、サンプルの5.7%、平均年齢= 79.3歳)
- このプロファイルの患者の3分の2は男性で、半数以上が既婚またはパートナーと同居していた。
- 5人に1人(22.9%)が自分の健康状態を「とても良い」または「素晴らしい」と感じていた。
- 10人に8人は日常生活において自立しており、91.6%が個人住宅(注:マンションを除く)に住んでいた。
- 半数は高いところから転倒したことがあり、83.1%は転倒したときに中程度から激しい活動(主に家事)をしていた。
- 61.5%がガレージ、地下室、屋根裏、または「その他の部屋」で転倒し、27.7%がテラスやバルコニーなど自宅の屋外スペースで転倒している。
- ほぼ3分の1は、転倒したときに特に危険を冒していたと答えている。
■ プロフィール2:健康上の問題があり、住居が必ずしも適切でない若い高齢者で、階段から転落した人(n = 67, 4.6%, 平均年齢 = 79.6歳)
- このプロファイルの特徴は、主に階段からの転落(98.5%)であった。
- 回答者は比較的若いにもかかわらず、10.4%だけが非常に良いまたは優れた健康状態であると認識していた。
- ほぼ4分の3(71.6%)が運動障害を有していた。
- このプロファイルの患者は、比較的自立していた(10人に6人)。
- 半数(50.7%)は内分泌・代謝疾患の治療を受けており、47.8%は過体重または肥満であった。
- 最後に、このプロファイルでは10人中9人(88.1%)が個人住宅に住んでおり、19.4%が自分の健康状態に適した住宅でないと考えていることが示された。
■ プロフィール3:バランスを崩したり、自分の高さから落ちたりして転倒した自立した高齢者(n=476、32.4%、平均年齢=81.6歳)
- このプロファイルの転倒者10人中8人近くは、日常業務を行う上で自立しており、64.3%が専門家の助けを受けず、53.3%が衛生設備に補助技術装置を備えていなかった。
- 5人に1人(17.8%)が自分の健康状態は非常に良い、または優れていると認識しており、58.6%が健康状態は良好であると報告し、74.4%が身体活動をしていた。
- 半数以上が毎日、文化・スポーツ・レジャーの活動をしていた。
- 4分の3が個人住宅に、22.5%がアパートに住んでいた。
- ほぼ3分の1(30.5%)が、テラスやバルコニー、または住居のその他の屋外エリアで、バランスを崩して(34.2%)、または自分の背の高さからの転倒(?)で(falling from their own height; 36.8%)、転倒した経験があることがわかった。
- 転倒の瞬間、特に危険は感じていなかったと回答した人が大多数(88.2%)を占めた。
■ プロファイル4:低強度の活動中に転倒した依存性の高い高齢者(n = 792、54.0%、平均年齢=87.0歳)
- このプロファイルの患者の4分の3は女性であり、69.9%が85歳以上、63.0%が未亡人であった。
- このプロファイルの特徴は、依存度が高いことである。
- 94.2%が少なくとも1つの専門家の助けを必要とし、96.2%が運動障害を持ち、25.7%が日常生活動作を他人に依存し、61.0%が部分依存であった。
- 最終的に、81.9%が衛生設備に補助技術装置を備えていました。
- このプロファイルの患者の大多数は、自分の健康状態がかなり悪いと認識していた(41.4%が平凡、12.2%が不健康)。
- 4分の1(24.1%)と16.0%がそれぞれ神経系と心理系の問題で治療を受けており、84.1%が心血管系疾患で治療を受けていた。
- 10人中6人(61.3%)が身体活動を行なっていなかった。
- 5人に1人近くが老人ホームや養護施設に住んでいた(22.0%)。転倒の状況について、28.0%が寝室で、18.3%がリビングルームで起きていた。
- 4分の1は、転倒の状況について何も知らなかった。
- 転倒は、体位変換(立位から座位、座位から横位への移行など)(21.1%)、トイレ関連(18.3%)などの強度の低い動作時に多くみられた。
- 転倒は、自分の背の高さからの転倒やそれより低い高さからの転倒が多かった(45.1%)。
- 転倒は午前中に起こることが多かったが(38.6%)、このプロファイルの患者のほぼ4分の1(22.0%)が夜間に転倒したことがある。
■ プロフィール5:データの欠損が多い超高齢者(n=49、3.3%、平均年齢88.1歳)
- このプロファイルの特徴は、転倒の状況だけでなく、自己の健康状態、日常的なタスクの自律性、睡眠障害、身体的疲労、経済状況などに関して、多くのデータが欠落していることであった。
- 主に超高齢者(42.9%が90歳以上)から構成されている。
- 患者のほぼ3分の1は老人ホームやリタイアメントホームに住んでいた。
- 4分の3はパートナーと同居していなかった。
- 5分の2(40.8%)は日常業務を他人に依存していた。
- 32.7%は自律性に関するデータが不足していた。

骨折の頻度は、最初のプロファイルの方が、より依存的な個人で構成される最後の2つのプロファイルよりも高かった(p < 0.001)。

[結論] これらの結果は、高齢者が転倒する状況の異質性を強調するものである。目標とする予防措置を実施するためには、これらの状況をより深く理解することが必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

初回の理学療法において、『転倒歴』の問診は必須だ。
いつ、どこで、どうやって転倒したのか。
重要なことは、その聞き方である。
大きくオープンクエッションとクローズドクエッションに分かれる。

・オープンクエッション:「どうやって転んだのですか?」
・クローズドクエッション:「つまづいて転んだのですか?」

オープンクエッションの回答は自由記載形式、クローズドクエッションの回答はYes、Noの二択に近くなる。このうち、オープンクエッションの場合、聞きたい情報を取りこぼしてしまう場合が多い。
なぜなら、どの情報を出して、どの情報を出さないかの舵を患者側が握っているからだ。そして、患者側は、治療上重要な情報が何かを知らない場合が多いであろう。
だからこそ、医療者側からのピンポイントなクローズドクエッションが必要になる。
・「転んだ場所は屋内ですか、屋外ですか」
・「尻もちですか、つまづきですか、スリップですか」
・「朝ですか、昼ですか、夜ですか」
・etc・・・

今回の研究で示されたような転倒者のプロフィールの種類を知っていることで、クローズドクエッションの手札を増やすとともに、選択基準をより妥当なものに近づけることができる。
より良き、聴き手になりたい。

もしもある人が、そちそちどんな質問をしたらいいかをわきまえているならば、もうそれだけでその人が聡明な人であるという紛れもない証拠となる。なぜなら、もし質問自体が愚劣で無益な答えを求めるなら、それは、その質問をした人自身の恥でるばかりでなく、質問された相手もうっかり愚劣な答えをすることになるからである。そしてその結果、昔の話にあるように、一人が牡山羊の乳を搾れば、一人が節を当てがうという滑稽な場面が生ずるのである。
カント

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