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漢字の解剖学的意味


📖 文献情報 と 抄録和訳

漢字は解剖学的に特別な意味を持つ

📕Xia, Xin, et al. "Chinese characters carry special anatomical connotations." Anatomical Science International (2024): 1-5. https://doi.org/10.1007/s12565-024-00771-9
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[レビュー概要] 解剖学の領域では、解剖学用語の漢字の中には独特の形態学的意味を持つものがある。漢字は絵文字から発展したもので、絵文字の中には古代の人々が自分の体の構造に基づいて作ったものもある。このことは、漢字が誕生した当初から、人体の構造を理解し、表現することが不可欠であったことを意味し、その知識は漢字の継続的な継承を通じて受け継がれ、発展してきた。今日でも、人体構造を反映する外観を持つ文字がある。椎骨、頭蓋前庭、心臓に関連する文字を調べることで、漢字と解剖学および中国伝統医学のユニークで永続的なつながりを見出すことができる。

■ 脊 × 脊椎

この図は、中国語の「脊」(jǐ)という文字の歴史的変遷と、
現代の文字形状と脊椎(椎骨)の比較を示している。

・図a-cは、「脊」の骨刻文字と青銅器文字である。これらの形は、動物の骨格や魚の骨格を象徴しており、脊椎全体と肋骨などを表現している。この段階では、文字は脊椎全体を表しており、その特徴的な形状が強調されていた。
・図d-eは、篆書体における「脊」の変形である。dの形は、脊椎と肋骨の接続を強調し、上向きに突起する曲線が肋骨を、縦の線が脊椎の一部を、そして横線が腰部を表している。eの形では、下部に追加された部分が筋肉の存在を示し、脊椎を支えていることを表している。
・図fは、隷書体における「脊」の形状である。この段階で、横線と縦線が「人」の形に変わり、肋骨を表す四つの突起は点に変わり、視覚的な表現が簡略化された。
・図gは、隷書体の「脊」と典型的な椎骨の形状の比較を示している。「脊」の「月」部分は椎骨体と対応し、「人」の形は椎弓に対応している。また、「人」と「月」の間の空間は椎孔と対応しており、「人」の上部の点は棘突起、下部の二つの点は横突起に対応している。さらに、「人」の両側の四つの点が上下の関節突起に対応している。

■ 囟 × 頭蓋の大泉門

この図は、中国文字「囟(xìn)」の進化と、それが描写する頭蓋の大泉門(前頭骨と頭頂骨の間の未骨化の結合組織)を示している。

・上図は、「囟」の甲骨文字の形と乳児の頭蓋の上部からの視点との比較を示している。この視点では、頭頂骨と前頭骨、そしてその間にある未骨化の膜(大泉門)が確認できる。水平と垂直の線は、これらの骨と結合組織を表しており、その交差点が大泉門の位置を示している。
・下図は、「囟」が異なる複合漢字の構成要素として使用されている様子を示している。「腦(nǎo)」は「脳」を意味し、頭部の柔らかい組織を示している。「兒(ér)」は「幼児」を意味し、まだ閉じていない泉門を強調している。「思(sī)」は「思考」を意味し、心臓を表す「心(xīn)」と結びつけられている。

■ 心 × 心臓

この図は、中国の「心(xīn)」という文字の進化と、
その形状が心臓の解剖学的構造に基づいていることを示している。

・図aでは、「心」という漢字の甲骨文字、金文、篆書、隷書における形状の変遷が示されている。甲骨文字の段階では、この文字は心臓の断面図に似ており、心房、心室、弁を象徴する輪郭を持っていた。心房が上部に位置し、心室が下部に位置し、これらの間に弁が存在する。このように、古代の段階から「心」は心臓という器官を指し、現代の解剖学的定義と一致している。
・図bでは、「心」の甲骨文字の形状と、実際の心臓の断面との比較が示されている。心房、心室、弁、心尖部の位置が明確に対応しており、この文字が心臓の解剖学的な形状をもとに作られたことがわかる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

“Form follows function” という言葉を知っているだろうか。
この言葉は、19 世紀後半から 20 世紀初頭の建築や工業デザイン全般に関連するデザインの原則であり、ルイス・サリヴァンによって述べられた。
日本語訳としては、「形態は機能に従う」で、多くの建築家にとって試金石となった。
その意味は、建物や物体の形状は主にその意図された機能や目的に関係するべきである。

今回の抄読論文を読んでいて、この言葉を思い出した。
漢字は、独特の成り立ちをもっている点で、英語とは異なるように思う。
何が違うかといえば、漢字はその文字が指し示すものの『姿』から出発しているものが多い。
それは、今回抄読したような、脊→脊椎、囟→頭蓋の大泉門、心→心臓、のように。

漢字においては、『その文字の形態は解剖学的構造に従う』という公理が成り立つものが複数あるようだ。
1つ1つの文字の成り立ちに想いを馳せる、時にはそんな時間を持ってみたい。

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