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スポーツと完璧主義。完璧主義は双刃の剣である


📖 文献情報 と 抄録和訳

完璧主義とパフォーマンスに関連した心理生物社会的状態: 競争評価の媒介的役割

📕Ruiz, Montse C., et al. "Perfectionism and performance-related psychobiosocial states: The mediating role of competition appraisals." European Journal of Sport Science 23.5 (2023): 797-808. https://doi.org/10.1080/17461391.2022.2049374
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🔑 Key points
🔹完璧主義的な努力は機能的な心理生物社会的状態と正の相関がある。
🔹完璧主義的な懸念は機能不全的な心理生物社会的状態と正の相関がある。
🔹競争的課題評価は、完璧主義的努力と機能的心理生物社会的状態との関係を媒介した。
🔹競争的脅威の評価は、完璧主義的関心と機能不全的心理生物社会的状態との関係を媒介した。

[背景・目的] 多状態(multi-states, MuSt)理論を枠組みとして、本研究は心理生物社会的状態の個人(人格)先行因子に焦点を当てた。心理生物社会的状態とは、感情的主観的経験とその相関関係(認知的、動機づけ的、意志的、身体的、運動・行動的、操作的、コミュニケーション的)から構成され、パフォーマンスにとって機能的(有益)であることもあれば、機能不全(有害)であることもある。具体的には、完璧主義の2つの側面(完璧主義的な努力と懸念)と、機能的および機能不全的な心理生物社会的状態との関係を検討した。また、競争的評価の媒介的役割の仮説も検証した。

[方法] 参加者(N=271、女性138人、男性133人、M年齢=22.74±7.01)は、対象とした変数を評価する質問票に記入した。

✅ 完璧主義の評価
・完璧主義的努力:MIPSの完璧への努力(Multidimensional Inventory of Perfectionism in Sport, 📕Stoeber, 2008 >>> doi.)下位尺度とSport-MPS-2の個人基準(Sport-Multidimensional Perfectionism Scale-2, 📕Gotwals, 2009 >>> doi.)下位尺度で測定
・完璧主義的懸念:MIPSの不完全さに対する否定的反応下位尺度とSport-MPS-2のミスに対する懸念および行動に対する疑念下位尺度から測定

✅ 機能的状態, 機能不全状態の評価
・感情状態は心理生物社会的状態の個別化プロファイリング(📕Ruiz et al., 2019 >>> doi.)に基づく心理生物社会的状態尺度(PBS-S尺度) を使用
・PBS-Sは、合計20行の項目と74の記述子を含む

[結果] 構造方程式モデリングにより、完璧主義的な努力は、直接および挑戦的評価を介した機能的状態の正の予測因子であることが明らかになった。一方、完璧主義的な懸念は、直接および脅威の評価を介した機能不全状態の正の予測因子であった。

[結論] 結果は、MuSt理論を支持し、アスリートのパフォーマンスに関連した感情状態の先行要因に関する文献を拡張した。結果はまた、機能性の次元を包含する心理生物社会的状態の全体的な概念化を支持するものである。この結果は、完璧主義的な懸念が高いアスリートが状況を挑戦として評価し(脅威でなくなり)、知覚資源を増加させることを目的とした介入を開発することの重要性を強調している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

究極の一打を、一投を、演技を!
そのためには、些細なことも疎かにはできない、細部にこそ女神は宿るのだから。

その完璧主義が、人々を感動させる演技をつくる、1つの道かもしれない。
だが、完璧主義は人を鍛える錘(おもり)であると同時に、人を疲弊させる重荷でもある。
良い解釈(挑戦的評価)は良き感情を、不良な解釈(脅威の評価)は不良な感情を引き起こす。
とても扱いに注意が必要な主義であることは確かだ。

完璧を追い求めようとすればするほど、現在が足りなく見えてしまう。
120点を追い求める勇者にとって、現時点の90点はなんと味気なく見えることか。
だが、その不測の感情をポジティブな挑戦として捉える眼があれば、その不足が次への努力の起爆剤ともなり得る。
よく聞く話だが、現時点に満足しきってしまっては、そこで終わりなのだから。

だからこそ、今回の研究の中に示されているような客観的な尺度が役立つと感じた。
あなたの完璧主義は、刀の良い使い方になりそうか、不良な使い方になりそうか。
不良な使い方になりそうなら、どのようなサポートができるのか。
それを主観ではなく、客観的に捉え、選手と共有し、前に進める可能性を提供してくれるかもしれない。

自分自身も悩みきったことがあるだけに、完璧主義という言葉、どうも気になってしまう。

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