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重症ベル麻痺患者のための『顔面リハビリWebsite』の開発

📖 文献情報 と 抄録和訳

重症ベル麻痺のためのオープンソースかつ無償の顔面リハビリテーションウェブサイトの開発:MEPP-websiteのユーザーエクスペリエンスと患者のコンプライアンスに関する被験者内研究

📕Martineau, Sarah, et al. "Development of an open-source and free facial rehabilitation website for severe bell’s palsy: a within-subject study on user experience and patient’s compliance with the MEPP-website." Disability and Rehabilitation (2021): 1-10. https://doi.org/10.1080/09638288.2021.2012846
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※ Connected Papersとは? >>> note.

🔑 Key points
🔹最近のデータでは、薬物療法と組み合わせたミラー効果療法が、重度のベル麻痺の回復をサポートすることが示唆されている。
🔹Mirror Effect Plus Protocol(MEPP)-ウェブサイトは、ミラーセラピー中に患者の運動学習を促進し、認知負荷を軽減するために開発されたコンピュータベースの臨床ツールである。
🔹MEPP-ウェブサイトは、臨床医がミラーセラピーのための特別な顔面リハビリテーションツールにアクセスする機会を増やす。
🔹また、MEPP-websiteを使用することにより、顔面治療のコンプライアンスを客観的かつ容易に測定することができる。

[背景・目的] オープンソースかつ無料のウェブサイトMirror Effect Plus Protocol(MEPP)-ウェブサイトを開発し、顔面運動時の認知負荷の軽減と運動学習を支援する機能を持たせた。患者の使用意欲はリハビリテーションプロセスへの関与に強く影響するため、リハビリテーションツールを開発する際には患者の認知を評価することが重要である。本研究では、MEPPウェブサイトと趣味で作成したウェブサイトの臨床医と患者さんの使用感を比較しました。

[方法] 急性期重症ベル麻痺患者10名と臨床医5名を被験者内・クロスオーバーデザインで登録した。ユーザーエクスペリエンスは、Modular evaluation of Components of User Experience質問票を用いて評価した。Wilcoxon-Signed-Rank 検定によりユーザーエクスペリエンスを分析し,記述的分析により順序効果を検討した.MEPPウェブサイトでは、統合された機能により治療コンプライアンスが検証された。また、臨床医の記述統計と主観的な観察結果も報告された。

[結果] 患者および臨床医は、MEPP-websiteを最初に使用したか、2番目に使用したかにかかわらず、MEPP-websiteを好むことが示された。また、MEPP-websiteを最初に使用した場合、コンプライアンスが向上する傾向が見られた。

[結論] 顔面リハビリテーション中の MEPP-web サイトは、ユーザーエクスペリエンスを向上させた。より良いユーザーエクスペリエンスは、患者がどのようにエクササイズを行い、促進するかを最適化すると思われる。顔面リハビリテーションのコンプライアンスに影響を与える要因については、まだ解明されていない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

MEPP-website、アカウント登録が必要らしく、実際には試せていない…。
今回の文献を読んで感じたことは、インターネットを用いた医療サービスにも大きく2つの種類があるということ。

1つは、今回のMEPP-Websiteのような内容がある程度固定されたウェブアプリケーションや動画などといったサービス。
この種のサービスは、ひとたび良い適応者にアクサスされれば絶大な効果を発揮するだろう。
そして、決まった運動プログラムなどは、属人的に繰り返しコストを割く必要がゼロになる。
リンクを送れば終わり、となるから。同じ話、同じプログラムをする必要が永遠になくなるから。
ただし、良い適応者が、適切にアクセスできるかが大きな障壁である。
ヘルスリテラシー(適切な健康情報を自分で探索し活用する能力)が低いことが高齢者や患者の特徴の1つであることを考えると、これは大きな障壁だろう(関連 note✨参照)。
自分で探し獲得しなければならない、固定されたサイトという意味で、『固定探索型』サービスといえよう。

他方、zoomを用いた遠隔医療やチャット形式のサービスなど、半対面式、対話形式のサービスがある。
この種のサービスは、探索型サービスに高いヘルスリテラシーが求められるのとは異なり、必要な情報はセラピストなどの対話者が提供&サポートしてくれる。
そして、その患者の状況に応じて、対話者が必要なエクササイズや、見て欲しいサイトへの誘導の役割を果たす。
デメリットとしては、常に属人的なサービスで、繰り返しコストを割く必要性があるということ。
対話者が適切な情報を提供してくれ、一緒に歩いてくれるという意味で、このような対面/対話式のサービスは『属人誘導型』サービスといえる。

そして、強みと弱みから考えると、ヘルスリテラシーの高い患者には固定探索型サービスが、ヘルスリテラシーの低い患者には属人誘導型サービスが良い適応になると思われる。
一口にインターネットを用いた医療サービスといっても、それぞれの型に応じた長所・短所がある。
それをしっかりと使いこなせるよう、理解を進めたい。

⬇︎ 関連 note✨

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