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まずチャンネルを構築すべし。脳卒中者/介護者のヘルス・リテラシー

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中患者およびその介護者のための情報提供

📕Crocker, Thomas F., et al. "Information provision for stroke survivors and their carers." Cochrane Database of Systematic Reviews 11 (2021). https://doi.org/10.1002/14651858.CD001919.pub4
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
✅ 前提知識:能動的な情報行動と受動的な情報行動
- 能動的な情報行動と受動的な情報行動は、情報資源の利用や情報が利用者に届くまでの経路に関する総合的な人間行動の一部を構成している。
- 能動的な情報行動:目的を達成するために意図的に情報を探すことであり、通常、情報探索者はリクエスト、検索、クエリーという形で情報システムに対して要求を行う必要がある
- 受動的情報行動:情報の日和見的発見を指し、他の活動に従事しているときに、有用な情報に予期せず出会うことを指す。
📕Nwone, Simeon A., and Stephen M. Mutula. South African journal of Information management 22.1 (2020): 1-12. >>> doi.

[背景・目的] 脳卒中は、血液の供給不足により、突然、脳の機能が失われる。脳卒中は、死亡や身体・認知機能障害につながる可能性があり、心理的・社会的に長期にわたる影響を及ぼすことがある。脳卒中の患者さんやそのご家族は、提供される情報に不満を持ち、脳卒中やそれに関連する問題に対する理解が不十分であるという調査結果がある。第一の目的は、脳卒中患者(脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)と臨床診断された人)またはその介護者に対し、能動的または受動的な情報行動の効果を評価することである。主なアウトカムは、脳卒中および脳卒中サービスに関する知識、および不安である。

[方法] 2020 年 9 月 28 日に Cochrane Stroke Group Specialised Register の検索を更新し,以下のデータベースについては 2019 年 5 月/6 月までの検索を行った(databaseは実abstract参照)。選定基準:脳卒中生存者、その特定された介護者、またはその両方を対象とした無作為化試験で、情報介入を標準ケアと比較したもの、情報と他の療法を他の療法単独と比較したもの、または治療に他の差を設けず能動的な情報行動か受動的な情報行動かの比較であったもの。

[結果] 脳卒中患者にとって、能動的な情報行動は、脳卒中や脳卒中医療に関する知識を向上させる可能性がある。不安や抑うつをわずかに軽減する可能性があるが、顕著ではない可能性がある。また、QOL(生活の質)を向上させる可能性がある。受動的な情報行動については、エビデンスはあまり明確ではない。しかし、不安や抑うつをわずかに悪化させる可能性がある。ここでも、これは顕著な量ではないかもしれない。介護者については、証拠は非常に不確実であるか、存在しない。

[結論] 我々は一般に、証拠に対する信頼度は低いか非常に低い。脳卒中患者の抑うつ症状が能動的な情報行動によってわずかに軽減されることに中程度の確信があった。この自信は、以下の要因によって制限されることが多かった。

- 研究対象者は、通常より多くの情報を提供するか、受け取るかを知っていた。このことは、彼らの行動や気持ちに影響を与えたかもしれない。
- 研究対象者が少なすぎる。
- 結果が正確でないため、有益か有害かのどちらかを示す可能性がある。
- 個々の研究結果が十分に一致しなかった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

脳卒中者やその介護者は高齢である可能性が高い。
高齢者は、概してヘルスリテラシー(健康情報を自分で得る能力)が低い
その要因の1つはインターネット利用が困難であること(🌱 >>> note)。
それを解消するために、近年、高齢者のためのデジタルスキルトレーニングが注目されている(🌱 >>> note)。

「ヘルスリテラシーを上げる❗️そのためにデジタルスキルをアップさせる」

そう思っていた。
しかし、そのひとつ手前で重要なことがある。
それが、「チャンネルをもつ」ということだ。
世の中には、あらゆる情報が溢れている。
その情報のすべてが、1人の脳に流入しきることは、当然ながらできない。
だからこそ、個人の小さな脳には情報の門がある。
どういう情報が、その門を通過できるか。
それは、「自分の興味の持っている情報」である。
たとえば、新築の家を建てたいと思っている人は、車で走っているときに、妙に新築の家が目に入る。
腹が減っている人は、飲食店が光って見える。

そういう機能のことを、RAS機能と呼ぶ。
このRAS機能は、人間における電波を受信する「チャンネル」のような機能だ。

✅ RAS (Reticular Activating System: 網様体賦活系) 機能とは?
脳の一部にはRASと呼ばれ、生死に関わるものや成功に必要なもの以外の情報を全て排除してしまう機能がある
RASは中脳から脳全体に張り巡らせた脳の情報ネットワークシステムだ
だからこそ、あなたが目標を明確にして、脳に何が重要かを教えなければ、気づくこともなく、夢を叶えるための脳機能も働かないのだ
しかし、ひとたびモック表を明確にしてRASのスイッチを入れると、この神経は磁石のように、目標をすばやく達成するための情報や機会を引き寄せる
文字通り、数日から数週間で人生が変わるのだ
アンソニー・ロビンズ

そして、今回のコクランレビューが明らかにしたことは、脳卒中者の抑うつ症状を軽減するためには、能動的な情報提供が効果を有する、すなわち「患者自身のチャンネル構築が功を奏する」こと。
逆にいえば、いかに医療側で情報を提供しようが、また当事者のデジタルスキルが上がろうが、本人にチャンネルが構築されていなければ、そのすべての情報がノイズとして処理されるのみ。
情報提供の前に、デジタルスキル。
デジタルスキルの前に、チャンネル構築。
ヘルスリテラシーを高めるための 3 stepの介入の着眼点が示唆された。

チャンネルがあって、得る手段があって、適切な情報がある

スライド2

とどのつまり、「その人を変えてから」、何かを始めなければならない。

景色は気分である
アミエル

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