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筋トレッチング。筋柔軟性も上げる筋トレ法


📖 文献情報 と 抄録和訳

遠心性筋力トレーニングはハムストリングスのサイズと筋力を増加させながら、受動的筋硬度を減少させることができるか?

📕Kawama, Raki, et al. "Can Eccentric-only Resistance Training Decrease Passive Muscle Stiffness while Increasing Size and Strength of Hamstrings?." Medicine and science in sports and exercise (2023). https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000003516
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 筋力トレーニングは、経験的に筋硬度を増加させると考えられている。一方、最近の研究では、特定のハムストリング筋の受動的硬度が、長い収縮持続時間(LL)を有する長い筋長での遠心性のみのレジスタンス運動後に急性的に低下することが示された。この知見を拡張するために、本研究では、異なる週頻度でLLを伴う遠心性抵抗トレーニングがハムストリングス二関節筋の受動的硬度に及ぼす慢性的な影響について検討した。

[方法] 健康な若年男性36名を、週2回と週3回の2つのトレーニング群(それぞれW2とW3、n=12)と対照群(CON、n=12)に割り付けた。両トレーニング群の参加者は、遠心性のみのスティッフレッグ・デッドリフトを運動可動域の50~100%(0%=直立位)で1回5秒間の反復を10週間行った(筋肉を大きく且つ1回あたり長時間伸ばす筋力トレーニング)。介入期間の前後に、ハムストリングス二関節筋のせん断弾性率、膝屈曲の最大等尺性随意トルク、個々のハムストリングス筋の体積を測定した。

[結果] W3では、半膜様筋の剪断弾性率(-11.4%)が有意に低下したが、他の二関節筋の剪断弾性率は変化しなかった。W2およびCONでは、ハムストリングス二関節筋のせん断弾性率に有意な変化はみられなかった。等尺性トルク(それぞれ20.3%と26.2%)と半膜様筋量(それぞれ5.7%と7.4%)は、W2とW3で有意に増加した。

[結論] 特定の筋の受動的硬度は、LLを用いた遠心性のみのレジスタンストレーニングを比較的高い週頻度で、高いトレーニング総量で実施することにより、慢性的に低下する可能性がある。我々のトレーニング方法は、筋力と筋サイズを増加させながら、受動的筋硬度を低下させる有望な戦略である可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前の文献抄読において、『筋トレはROMを増大する』と結論した論文を抄読した(関連note参照)。
その抄読の考察を以下に示す。

唇歯補車(しんしほしゃ)という言葉があって、僕はこの言葉が好きだ。
たとえば、唇と歯は食べるときに一緒になって働く。
このように、密接な関係にあって、お互いが助け合うことによって成り立つこと、持ちつ持たれつの関係を指す言葉。
筋力トレーニング(筋力の動員)と関節可動域は、まさに唇歯補車の関係だと思った。
例えば、膝を曲げようと思えば、膝の屈曲可動域と、膝の屈伸筋力が双方働く必要がある。
つまり、筋力と関節可動域の関係性は、以下のように捉えられる。
片方を動員することは、もう片方も動員されること。
片方を鍛えることは、もう片方も鍛わる可能性がある、ということ。
そして、今回抄読した研究は、まさにそのことを明らかにした。
筋力トレーニングは、関節可動域を増大し、その効果はストレッチと差がないという。
具体的に、この筋トレが関節可動域を増大する仕組みは何だろう?
これまでの文献抄読からの2つの仮説を紹介する。
①筋力トレーニングが筋膜を伸ばす→ROM↑
②インターナルショートニング→腱・筋腱の伸張→ROM↑
注目すべきは、論文アブストの結論。
“外部負荷による筋力トレーニングは可動域を向上させることができるため、筋力トレーニング前後のストレッチは柔軟性を高めるために必要ない場合がある。”
ストレッチ→筋トレ、ではなく筋トレがストレッチも包含しているかもしれない。

今回抄読した研究では、筋トレにおけるストレッチ要素を『強調』した筋トレッチングという新たな方法を開発してその効果検証を行なった。
その結果としては、筋トレの効果を得ながらも、筋の柔軟性を改善するという効果を得ている。
“筋トレッチング”・・・、実に興味深い方法だ。

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