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ストレッチ万能論。筋力・筋パワーも改善する

📖 文献情報 と 抄録和訳

健康な人の筋力とパワーに及ぼす静的ストレッチ運動の習慣的な影響(生涯を通じて): マルチレベルメタ解析によるシステマティックレビュー

📕Arntz, Fabian, et al. "Chronic Effects of Static Stretching Exercises on Muscle Strength and Power in Healthy Individuals Across the Lifespan: A Systematic Review with Multi-level Meta-analysis." Sports Medicine (2023): 1-23. https://doi.org/10.1007/s40279-022-01806-9
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🔑 Key points
🔹習慣的な静的ストレッチ運動は、筋力とパワーを向上させる可能性がある。
🔹静的ストレッチングエクササイズの筋力に対する習慣的な効果は、トレーニング状況に依存し、座りがちな参加者はレクリエーション活動的な参加者と比較して筋力の大きな向上を示し、トレーニングした参加者では不明な効果が観察された。
🔹習慣的な静的ストレッチ運動は、女性の割合が多いサンプルでより大きな筋力向上を誘発し、高齢の参加者ではより高い筋力とパワーの向上を促進するよう。
🔹ストレッチ運動1回あたりの反復回数が多いほど、またセッションが多いほど、より大きな筋力向上をもたらすようである。
🔹柔軟性は、アクティブな静的ストレッチングトレーニングよりもパッシブなストレッチングトレーニングの方がより効果があるよう。
🔹さらに、メタ回帰分析では、1セッションあたりの反復回数が多いほど、1セッションあたりのストレッチングを受ける時間が長いほど、そしてストレッチングを受ける総時間が長いほど、柔軟性の向上が大きいことが示された。

[背景・目的] 静的ストレッチング(static stretching, SS)エクササイズが筋力やパワーに及ぼす習慣的な影響に関する現在の文献は、不明確で議論の余地がある。
●目的:我々は、SSエクササイズの筋力・パワーおよび柔軟性に対する習慣的な効果を、生涯を通じた健常者において検討することを目的とした。

[方法] デザイン:ランダム化比較試験のメタアナリシスによるシステマティックレビュー。データソース2022年5月までのデータベースPubMed、Web of Science、Cochrane Library、SPORTDiscusで体系的な文献検索を実施した。研究選択の適格基準年齢、性別、トレーニングの有無にかかわらず、健常者において、SSエクササイズの少なくとも1つの筋力・パワーの結果に対する習慣的な効果を、能動・受動コントロール群または対側脚と比較して(すなわち、それぞれ研究間または研究内デザインを用いて)調査した研究を対象とした。

[結果]
■ 習慣的なストレッチングが筋力、筋パワー、柔軟性に及ぼす効果
・41件の研究の主な結果
・筋力:小さな効果(標準化平均差[SMD]=0.21、[95%信頼区間0.10-0.32]、p = 0.001)
・パワー:小さな効果(SMD = 0.19、95%信頼区間 0.12-0.26], p < 0.001)
・柔軟性:中程度から大きな効果(SMD = 0.96, [95% 信頼区間 0.70-1.22], p < 0.001)

■ トレーニング状況・条件
・レクリエーション活動をしている参加者(SMD = 0.16, p = 0.029)と比較して、座りがちな参加者(SMD = 0.58, p < 0.001)の方が筋力の向上が大きいことがわかった。
・さらに、能動的なSSエクササイズ(SMD = 0.59, p = 0.001)と比較して、受動的な(SMD = 0.97, p < 0.001)エクササイズでは、より大きな柔軟性の向上が観察された。
・筋力に対するSSの習慣的な効果は、サンプル中の女性の割合によって緩和され(β = 0.004, p = 0.042)、割合が高いほど、より大きな向上が見られた。
・その他の緩和変数としては、平均年齢(β=0.011、p<0.001)があり、高齢者ほど筋力向上が大きく、ストレッチ運動とセッションごとの反復回数(それぞれβ=0.023、p=0.004、β=0.013、p=0.008)は、反復回数が多いほど筋力向上が大きいことと関連していた。
・筋力は平均年齢によっても調節され(β = 0.006, p = 0.007)、高齢者ではより大きな向上が見られた。
・メタ回帰分析では、柔軟性の向上は、1回の反復回数が多いほど(β = 0.094, p = 0.016)、1回のストレッチ時間が長いほど(β = 0.090, p = 0.026)、ストレッチ時間が長いほど(β = 0.078, p = 0.034 )大きい。

[結論] 主な結果は、習慣的なSSエクササイズは、筋力とパワーを向上させる可能性があることを示した。このような改善は、レクリエーションに積極的な参加者よりも、座りがちな参加者に有益であると思われる。同様に、習慣的なSS運動は、柔軟性の著しい向上をもたらし、能動的なSSと比較して受動的なSSの方がより大きな効果をもたらす。筋力に関するメタ回帰分析の結果、女性や高齢者の割合が高く、ストレッチ運動やセッションごとの反復回数が多いサンプルでは、習慣的なSSエクササイズの効果がより大きいことが示された。筋力については、高齢の参加者ほど大きな効果が得られることが示唆された。柔軟性については、1回あたりの反復回数が多いほど、また1回あたりのストレッチング時間が長いほど、またストレッチングの総時間が長いほど、より大きな効果が得られることが示唆された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

最近、筋トレはROMを増大する、という結論のレビュー論文を抄読した。

このとき、ストレッチは思っただろう。

「おいおい、俺の領域に入ってくるんじゃねぇよ。仕事がなくなるじゃねぇか」

今回は、その逆のことが示された。
ストレッチが、筋力と筋パワーを効果量は小さいものの、確かに改善するという。
やはり、筋力と関節可動域は唇歯補車、2つの歯車で1つの機械。
だから、片方を動かせば、もう片方が動くことも、必然。
ただ、どちらをメインで動かす、ということでしかないのかもしれない。
まったく、面白い。

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