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高強度ストレッチング。筋硬度と関節可動域を改善

📖 文献情報 と 抄録和訳

中程度の痛みを伴う高強度ストレッチと痛みを伴わない最大強度のストレッチが柔軟性に及ぼす影響

📕Hatano, Genki, et al. "Effects of High-Intensity Stretch with Moderate Pain and Maximal Intensity Stretch without Pain on Flexibility." Journal of Sports Science and Medicine 21.2 (2022): 171-181. https://doi.org/10.52082/jssm.2022.171
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[背景・目的] 本研究では、異なる強度の静的ストレッチ(static stretch, SST)(痛みのない最大強度 vs 中程度の痛みを伴う高強度)が柔軟性に及ぼす時間経過効果を明らかにすることを目的とした。

[方法] 本研究では、健康な学生16名(男性8名、女性8名)を対象に以下4群に分けてランダムに実施した。

1)100%の強度で5分間のSSTを行う
2)110%の強度で5分間のSSTを行う
3)120%の強度で5分間のSSTを行う
4)ストレッチを行わない(コントロール)

スライド2

スライド3

SST実施中、静的受動トルク(static passive torque,SPT)、ハムストリング筋電図(hamstring electromyography, EMG)、疼痛強度を連続的に記録した。我々は、SST前とSST後0、15、30、45、60、75、90分後に、スティフネス、可動域(range of motion, ROM)、最大動的受動トルク(maximal dynamic passive torque, DPTmax)のマーカーを評価した。

[結果] 3つの異なる強度レベルにおいて、SST直後の筋硬度は減少し、ROMとDPTmaxは有意に増加した(p < 0.05)。120%の強度のSSTの効果は、110%および100%の強度のSSTの効果よりも強く、長く持続した(stiffness:それぞれ-17%、-9%および-7%;ROM:それぞれ14%、10%および6%;DPTmax:それぞれ15%、15%および9%)。

スライド4

SPTは、すべての強度でSST後に減少した(p<0.05)。120%の強度のSSTは、100%の強度のSSTよりもSPTの減少が有意に大きかった(p < 0.05)。疼痛強度と筋活動は、120%の強度のSSTの開始直後に増加したが(p < 0.05)、これらの反応は時間の経過とともに減衰した。ストレッチ強度はROMおよびスティフネスの変化の程度と有意な相関があった(p < 0.05)。

[結論] これらの結果は、ストレッチによる柔軟性は、疼痛閾値を超えてストレッチ強度を上げると増幅され、延長されるという我々の仮説を支持するものであった。これらの知見の一般化可能性を検討するためには、より多くの参加者と異なる人口統計学的属性による追加研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

『Does-dependent effect』が注目されている。
「介入において質よりも量が効果に対して影響が大きい」という考え方である。
一方、質の中でも注目されている領域がいくつかあって、その1つが『Intensity-dependent effect』だ。
すなわち『強度依存的な効果』、強度が大事だよね、ということだ。
そして、おそらく臨床上意識的に制御されにくいところに、「ストレッチングの強度」がある。

今回の研究は、高強度ストレッチングの威力を改めて証明した。
ただし、「高強度がいい」ことだけ知っていても臨床に生かせない。
何が高強度なのか、という定義を実践可能なレベルまで詳細に知る必要がある。
以前抄読した研究におけるストレッチ強度設定の定義は、『痛み』を基準とした定義だった。

今回の研究では、『関節可動域(ROM)』を基準とした定義が用いられていた。
より量的というか、客観的になるのはROMを基準とした方法だと思う。
ただし、120%の強度は、結構キツイのではないだろうか。
この研究内のNRSでも4-5位はいっていた。
疼痛に弱い方は、辛いかもしれない。
両刀というか、痛みベースの方法と、関節可動域ベースの方法、両方を並行してみようと思う。
疼痛感受性がノーマル、むしろそこが強い方はROMベースドで。
疼痛感受性が敏感な方、弱い方は疼痛ベースドで。
どちらにしても、人体の改善の仕組みに響くほどには、強い力で。

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