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下肢筋力・筋肥大を最大化したい?だったら、 『最大可動域』でやりなさい

▼ 文献情報 と 抄録和訳

可動域がレジスタンストレーニングの適応に及ぼす影響;システマティックレビューとメタアナリシス

Pallarés, Jesús G., et al. "Effects of range of motion on resistance training adaptations: A systematic review and meta‐analysis." Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports31.10 (2021): 1866-1881.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 今日、傷害のリスクを最小限に抑え、レジスタンストレーニングの適応を最大限に高めるための最も効果的な可動域(ROM)については、コンセンサスが得られておらず、論争が続いている。目的は、フルROMおよびパーシャルROMのレジスタンストレーニング介入が神経筋、機能、構造の適応に及ぼす効果を検証する科学的証拠のシステマティックレビューとメタアナリシスを行うこと。

[方法] オリジナルのプロトコル(CRD42020160976)をPROSPEROデータベースにプロスペクティブに登録した。Medline,Scopus,Web of Scienceの各データベースを検索し,最も古い記録から2021年3月までの関連論文を特定した。バイアスのレベルとエビデンスの質の判断には,RoB 2およびGRADEツールを使用した。メタアナリシスは、小サンプル補正を用いたロバスト分散推定を用いて行った。

[結果] 最終的に16件の研究がシステマティックレビューとメタアナリシスの対象となった。筋力(ES = 0.56, p = 0.004)および下肢の肥大(ES = 0.88, p = 0.027)については,フルROMトレーニングがパーシャルROMよりも有意に大きな適応をもたらした。さらに、統計的には有意ではないが、機能的パフォーマンスの変化はフルROMトレーニングによって最大化された(ES = 0.44, p = 0.186)。最後に,筋肉の厚さ,ペネーション角,筋膜の長さの変化については,いずれのROMにも有意な優位性は認められなかった(ES = 0.28, p = 0.226)。

[結論] 筋力と下肢筋肥大を最大化するためには、フルROMレジスタンストレーニングがパーシャルROMよりも効果的である。同様に、機能的パフォーマンスもフルROMエクササイズの使用によって有利になるようである。逆に、筋構造の変化を生じさせるには、フルROMとパーシャルROMの介入に大きな違いはない。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

筋力トレーニングの3原則に『特異性の原則』がある。

トレーニングはやり方によって効果が変わります。これを「特異性の原則」といいます。筋力を高めたいのに筋持久力を高めるやり方をしていては、求める成果は現れません。どんな目的であれ、目的に合った正しいやり方を行う必要があります。
>>> 参考site

特異性の原則を考えると、「歩行の立脚中期での大腿四頭筋筋力を強めたいから、膝関節伸展域だけでの筋トレをやろう!!!」という感じになりがちだ。
だって、そのほうがかっこいいから!『鍵穴の形をバッチリわかった上で鍵を作ってます!狙いすまして、すべてわかった上で効果出してます!余分なことは何一つしないミニマリストです!』の方がかっこいいPTだから!

しかし、今回の論文を見て、その考え方は検討される必要があると思った。
こと筋力や筋肥大においては、特異性に対する針の穴を通すような思考・コントロールよりも、全部ひっくるめて「なるべく大きな可動範囲でやりましょう!」の方が、実際、効果的だったという現実。
今後は、筋力トレーニングにおける関節可動域について、以下のように考えてみようと思う。

①なるべく大きな関節可動域で行う
②機能需要が高い可動範囲(特異性)は意識や負荷量で強調する

それにしても、筋トレは奥が深い・・・。
1日1日、患者さんとの筋トレの中で課題や疑問を発見し、都度、0.1mm進もう。
いつか、雨垂れが石を穿つだろう!!!

つるべ縄も長い間には、のこぎりと同じく井桁の木を切るし、雨だれも久しい間には、石に穴を開ける
これによっても道を学ぶ者は、努めて粘り強く求める心がけを持つべきである
菜根譚

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