キャラ弁 (1分小説)
今朝も、ウーバーイーツが、家の郵便ポストにキャラクター弁当を届けてくれた。
私は、小学校の教室で、このキャラ弁を開ける瞬間が好きなんだ。
「あなたのお母さん、本当に器用な人ね」
「アートの域。おもしろい」
友達が、喜んでくれるから。
「ピカチュウ」「プリキュア」「クレヨンしんちゃん」の時は、とてもリアルで、大きな歓声があがった。
でも、誰も気づいていないけれど、私の家は、6年も前に両親が離婚している父子家庭。
お父さんが作ってくれたマズい夕食を、家で食べながら私は言った。
「そういえば、キャラ弁って、実際には、お弁当屋さんで売っているのを見たことがないよね」
「うん、そうだな。毎日代わりに作ってくれて、お父さんはすごく助かってるんだが」
私も、イケてない弁当をさらけ出してイジメに合うこともなく、快適な小学校生活を送っている。
プラスチック製の弁当箱を洗い、郵便ポストに返す時に、手紙を添えることにした。
『おいしいお弁当をありがとうございます。ところで、いつも誰が作ってくれているのですか』
もしかして、別れたお母さんかな。
【翌日】
教室の隅で、こっそり、弁当箱のフタを開けてみて驚いた。
白米の中に、梅干しがひとつ埋められているだけの、シンプルな日の丸弁当。
私はこの時、初めて、自分が公的支援に支えられていたことを知った。
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