すみたに

とあるBL小説書きです。2016年に一万人に一人という、MCTD(混合性結合組織病)確…

すみたに

とあるBL小説書きです。2016年に一万人に一人という、MCTD(混合性結合組織病)確定診断。以降、大量の薬と共存する日々。病気のことを綴っておきたいと思い、ここへたどり着きました。他にも、商業ブログでは書かないこと、書けないことを保管していきます。目指すは雑感エッセイ……

マガジン

  • 小説 トライアングル

    デビュー前に「小説家になろう」で連載していた小説です。基本的にBLですが、女の子との恋愛、近親恋愛(いずれも行為描写なし)も含みます。商業誌未発表。十数年前に書いたものなので拙いところも多々ありますが、そのまま掲載します。時代的にそぐわないもの(SNSツールなど)のみ修正しています。

記事一覧

トライアングル19

第十章 二人の夜 2 <side カオル> (注 BL要素多いです) 「いつから?」  トモの口調は硬かった。戸惑っているのはわかるけれど、少なくとも拒否や嫌悪は感じら…

すみたに
1日前
2

仕方ないことと、書くこと

今日は雑記の更新です。いつも「トライアングル」をお読みいただいている方、ここを見ておられましたらありがとうございます。あとで更新しますね。  昨日は、補聴器の調…

すみたに
1日前
22

トライアングル18

第十章 二人の夜 1 <side カオル>  よく眠れなかった。  うとうとしては、浅い眠りから覚める。身体も気持ちも疲れているのに、隣に人が眠る緊張感からなのか、ど…

すみたに
5日前
4

トライアングル17

第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 3 <side トモ>  午前七時。  起きたら、カオルはもういなかった。そんなに寝過ごしたつもりはないから、ずいぶん…

すみたに
9日前
2

トライアングル16

第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 2 <side カオル>  駅へ向かう終バスは、すでに出たあとだった。午後五時が最終って何だよ、と怒りたくなったが、昼間…

すみたに
2週間前
5

トライアングル15

第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 1<side カオル>  昨夜、家に帰ったら午前零時を過ぎていた。もう少しで終電を逃すところで、かなりあせった。  桜子…

すみたに
2週間前
6

トライアングル14

第八章 秘密 4<side カオル>  約四十分後。駅前のショッピングモールの大きな仕掛け時計の扉が開いて、楽器を持った人形たちが、午後十時を告げた。何するでもなく、…

すみたに
3週間前
5

トライアングル13

第八章 秘密 3<side カオル> 「カオル、いるの?」  トモの声がして、同時にリビングが明るくなった。帰ってきたトモが電気をつけたのだが、急に目に飛び込んでき…

すみたに
3週間前
4

トライアングル12

第八章 秘密 2 <sideカオル>  僕は、イライラしながら、ある人物を待っていた。  ここは、桜子と出会った駅前のファミレスだ。それから何度か待ち合わせにも使って…

すみたに
1か月前
3

トライアングル11

第八章 秘密 1 <stdeトモ> 「はあ……」  カオルを見送って玄関のカギを閉めると、俺はため息をついた。  そそくさと出て行くあいつ。夏原からの呼び出しなんて言…

すみたに
1か月前
7

今でもわからない母の日の思い出

小説以外の更新は久しぶりです。 先日、母の日に娘に買ってもらったつぼみのカーネーションが、花を咲かせ始めています。ある程度咲いたら地面に植え替えるんですが、去年…

すみたに
1か月前
5

トライアングル10

第七章 その先にあるもの 3  <sideカオル>  ……これはもしかしなくても、デートの誘いなのか? 「了解」と打ったものの、いざ返信しようとなると、妙に気持ちがふ…

すみたに
1か月前
4

トライアングル9

第七章 その先にあるもの 2 <sideカオル> 「たーだいま……」  僕が家に帰ると、トモが晩ご飯を作っていた。僕たちのメシ当番は土日を除いて一日おき。週末は臨機応…

すみたに
1か月前
4

トライアングル8

第七章 その先にあるもの 1 <side カオル>  四月になり、僕たちは高校二年生になった。  新学期をはさんで、トモは十七歳になり、僕は十六歳になったけれど、ト…

すみたに
1か月前
4

トライアングル7

第六章 デイ・ドリーム2 <side カオル>  トモの腕が、僕の背中をぎゅっと抱いた。  悪い夢を見て、うなされて、何かに怯えるトモを僕は抱きしめ返してあげるべきだ…

すみたに
1か月前
6

トライアングル 6

第六章 デイ・ドリーム 1 <side トモ>  その家は、昼なお暗く、暖かい陽射しも、人の笑い声も、そこに住まう者が、伸び伸びと呼吸することすらも拒絶するような、…

すみたに
1か月前
4
トライアングル19

トライアングル19

第十章 二人の夜 2 <side カオル>

(注 BL要素多いです)

「いつから?」
 トモの口調は硬かった。戸惑っているのはわかるけれど、少なくとも拒否や嫌悪は感じられない。
「ちゃんと自覚したのは、一年くらい前から。でも、部屋のことでケンカしたあの頃から、きっと、もう好きだったんだと思う」
 いったん言ってしまえば、言葉はよどむ事なく流れ出る。長い間のつかえから解放されて、僕は心が軽くさえ

もっとみる
仕方ないことと、書くこと

仕方ないことと、書くこと

今日は雑記の更新です。いつも「トライアングル」をお読みいただいている方、ここを見ておられましたらありがとうございます。あとで更新しますね。

 昨日は、補聴器の調整に行ってきました。
 トレーニングしてつけ初めて約一年、正式に自分のものを着用して約半年、順調だと思っていたものの、ここ数ヶ月ほど聞こえが悪くなって……。テレビの音量を三〜四段階上げ、かつiPhoneでの操作も、レベルをデフォルトからや

もっとみる
トライアングル18

トライアングル18

第十章 二人の夜 1 <side カオル>

 よく眠れなかった。

 うとうとしては、浅い眠りから覚める。身体も気持ちも疲れているのに、隣に人が眠る緊張感からなのか、どうにも落ち着かない。一方、桜子は僕の隣で規則正しい寝息をたてていた。取り合えず、桜子が僕の側で安心して眠っているので、これでよかったんだ、と思う。

 もう眠ることをあきらめて、僕はベッドから抜け出してソファに移動した。もう明け方

もっとみる
トライアングル17

トライアングル17

第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 3 <side トモ>

 午前七時。

 起きたら、カオルはもういなかった。そんなに寝過ごしたつもりはないから、ずいぶんと早く出て行ったようだ。たぶん、俺が起きる前にと急いで。
「遅くなるからメシは待つな」という、一方的なLINEを残して、まるで逃げるようにカオルは居なくなっていた。
 逃げるように? 何から? 俺から? 本当に最近のあいつときたら…

もっとみる
トライアングル16

トライアングル16

第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 2 <side カオル>

 駅へ向かう終バスは、すでに出たあとだった。午後五時が最終って何だよ、と怒りたくなったが、昼間の利用状況からすれば仕方ないことだろう。
 運よく、ドライブ帰りのカップルの車に乗せてもらうことができたが、僕たちの神妙な雰囲気に「まさか駆け落ちじゃないよね。ヘンなこと考えてないよね」と、心配されてしまった。親切な彼らにお礼を言っ

もっとみる
トライアングル15

トライアングル15

第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 1<side カオル>

 昨夜、家に帰ったら午前零時を過ぎていた。もう少しで終電を逃すところで、かなりあせった。

 桜子と終電を逃しそうになるようなことをしていたからだが、その間、僕は家に帰ってトモと話さなきゃいけないことを、考えないようにしていたのだと思う。桜子と話したことで落ち着いて、ちゃんと話す決心がついたつもりだったのに、電車で一人になると

もっとみる
トライアングル14

トライアングル14

第八章 秘密 4<side カオル>

 約四十分後。駅前のショッピングモールの大きな仕掛け時計の扉が開いて、楽器を持った人形たちが、午後十時を告げた。何するでもなく、ぼうっと人形たちが踊るのを眺めていたら、桜子が目の前に現われた。
「ごめんね」
 走ってきたのか、ちょっと顔を上気させた彼女に、僕は小さく頭を下げた。
「ううん。理由が何でも、カオルくんから会いたいって言ってくれたの、初めてだったか

もっとみる
トライアングル13

トライアングル13

第八章 秘密 3<side カオル>

「カオル、いるの?」
 トモの声がして、同時にリビングが明るくなった。帰ってきたトモが電気をつけたのだが、急に目に飛び込んできた照明の明るさが痛くて、僕は目をぎゅっと閉じて、そして返事をした。
「いるよ」
「何だよ、電気もつけないで……」
 トモは買い物袋を二つ、テーブルの上に置いた。
「メシ買ってきた。今日遅くなったから」
 トモの言い訳を聞きながら、

もっとみる
トライアングル12

トライアングル12

第八章 秘密 2 <sideカオル>

 僕は、イライラしながら、ある人物を待っていた。
 ここは、桜子と出会った駅前のファミレスだ。それから何度か待ち合わせにも使っている。誰かに見られているようで、それだけでも居心地が悪いというのに、待ち合わせの相手は自分が呼び出したにもかかわらず、すでに十分遅刻している。イライラもしようというものだ。
 それに、僕を呼び出した相手自身がまた、僕を不愉快にさせる

もっとみる
トライアングル11

トライアングル11

第八章 秘密 1 <stdeトモ>

「はあ……」

 カオルを見送って玄関のカギを閉めると、俺はため息をついた。
 そそくさと出て行くあいつ。夏原からの呼び出しなんて言ってたけれど、あれでごまかしたつもりなのか、バレバレだろ、と俺はちょっと苛々する。でも、まあ、そんなとこが可愛いんだけど、と思いながら、一方で一生懸命にウソをつくカオルに、俺は不審感と寂しさを感じずにいられない。でも、俺もカオルに

もっとみる
今でもわからない母の日の思い出

今でもわからない母の日の思い出

小説以外の更新は久しぶりです。

先日、母の日に娘に買ってもらったつぼみのカーネーションが、花を咲かせ始めています。ある程度咲いたら地面に植え替えるんですが、去年、YouTubeで見て枯れかけたカーネーションを急いで植え替えたら、小さいながらも、秋頃まで花が咲いたのです。冬を越して今もしっかりつぼみをつけて凜と茎を立ち上げていますが花はまだ。
(なんだかなー私がつぼみとか茎とか書くとなんかやらしい

もっとみる
トライアングル10

トライアングル10

第七章 その先にあるもの 3  <sideカオル>

 ……これはもしかしなくても、デートの誘いなのか? 「了解」と打ったものの、いざ返信しようとなると、妙に気持ちがふらついた。
 言葉があっさりしすぎてる? でも、長々と関係ない事柄を知らせるのもなんだし。つき合ってるならまだしも、微妙な間柄の女の子と距離感を図りながらLINEするなんてことは、僕にとっては至難のワザだ……だいたい、夏原なんかとす

もっとみる
トライアングル9

トライアングル9

第七章 その先にあるもの 2 <sideカオル>

「たーだいま……」
 僕が家に帰ると、トモが晩ご飯を作っていた。僕たちのメシ当番は土日を除いて一日おき。週末は臨機応変だ。
「遅かったじゃん?」
 トモは器用にフライパンを振りながら言った。
「うん……」
 女の子にナンパされてたなんて言ったら、トモはどんな顔をするだろう。しかも、その女の子が自分に似ているのだと聞いたら? 単なる今日の出来事とし

もっとみる
トライアングル8

トライアングル8

第七章 その先にあるもの 1 <side カオル>

 四月になり、僕たちは高校二年生になった。

 新学期をはさんで、トモは十七歳になり、僕は十六歳になったけれど、トモが言うところの「誕生会」は前倒しで母さんがやってくれたので、自分たちでは特に何もしなかった。普段はできるだけ家で食事を作っているけれど、お互いの誕生日に、奢り合って外食したくらいだ。
「来年はケーキ買うかなあ」と僕が言うと「ケー

もっとみる
トライアングル7

トライアングル7

第六章 デイ・ドリーム2 <side カオル>

 トモの腕が、僕の背中をぎゅっと抱いた。

 悪い夢を見て、うなされて、何かに怯えるトモを僕は抱きしめ返してあげるべきだったのかもしれない。彼がきっと、そう望んでいたように。
 それは本当によくわかっていたけれど、でもそうしてしまったら自分は引き返せなくなることもわかっていた。トモは癒しや救いを求めているのに、僕はあっさりとその信頼を裏切ってしまう

もっとみる
トライアングル 6

トライアングル 6

第六章 デイ・ドリーム 1 <side トモ>

 その家は、昼なお暗く、暖かい陽射しも、人の笑い声も、そこに住まう者が、伸び伸びと呼吸することすらも拒絶するような、そんな家だった。

 ごく普通に、家というものが育むはずの、そこに住んでいる人々の息づかいとか、存在の痕跡とか、もっと具体的に言えば、生活の匂いとか足音とか……そんなものさえ感じられない、そこは家という名の、ただの容れ物にすぎなかった

もっとみる