すみたに

とあるBL小説書きです。2016年に一万人に一人という、MCTD(混合性結合組織病)確…

すみたに

とあるBL小説書きです。2016年に一万人に一人という、MCTD(混合性結合組織病)確定診断。以降、大量の薬と共存する日々。病気のことを綴っておきたいと思い、ここへたどり着きました。他にも、商業ブログでは書かないこと、書けないことを保管していきます。目指すは雑感エッセイ……

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  • 小説 トライアングル

    デビュー前に「小説家になろう」で連載していた小説です。基本的にBLですが、女の子との恋愛、近親恋愛(いずれも行為描写なし)も含みます。商業誌未発表。十数年前に書いたものなので拙いところも多々ありますが、そのまま掲載します。時代的にそぐわないもの(SNSツールなど)のみ修正しています。

最近の記事

トライアングル18

第十章 二人の夜 1 <side カオル>  よく眠れなかった。  うとうとしては、浅い眠りから覚める。身体も気持ちも疲れているのに、隣に人が眠る緊張感からなのか、どうにも落ち着かない。一方、桜子は僕の隣で規則正しい寝息をたてていた。取り合えず、桜子が僕の側で安心して眠っているので、これでよかったんだ、と思う。  もう眠ることをあきらめて、僕はベッドから抜け出してソファに移動した。もう明け方なんだろうけど、ラブホテルというのは窓が閉ざされていて、明るいんだか暗いんだか、

    • トライアングル17

      第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 3 <side トモ>  午前七時。  起きたら、カオルはもういなかった。そんなに寝過ごしたつもりはないから、ずいぶんと早く出て行ったようだ。たぶん、俺が起きる前にと急いで。 「遅くなるからメシは待つな」という、一方的なLINEを残して、まるで逃げるようにカオルは居なくなっていた。  逃げるように? 何から? 俺から? 本当に最近のあいつときたら……昨夜のことにしてもそうだ。急にああいうことをしたと思ったら、勝手にテンパって飛

      • トライアングル16

        第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 2 <side カオル>  駅へ向かう終バスは、すでに出たあとだった。午後五時が最終って何だよ、と怒りたくなったが、昼間の利用状況からすれば仕方ないことだろう。  運よく、ドライブ帰りのカップルの車に乗せてもらうことができたが、僕たちの神妙な雰囲気に「まさか駆け落ちじゃないよね。ヘンなこと考えてないよね」と、心配されてしまった。親切な彼らにお礼を言って、「ヘンなこと」を考えないように約束させられてから彼らと別れ、駅前に唯一あった

        • トライアングル15

          第九章 センチメンタルジャーニーと、一人の夜 1<side カオル>  昨夜、家に帰ったら午前零時を過ぎていた。もう少しで終電を逃すところで、かなりあせった。  桜子と終電を逃しそうになるようなことをしていたからだが、その間、僕は家に帰ってトモと話さなきゃいけないことを、考えないようにしていたのだと思う。桜子と話したことで落ち着いて、ちゃんと話す決心がついたつもりだったのに、電車で一人になると、反動で現実が押し寄せてきた。だから、どうかトモが寝ていますようにと、ひたすら及

        トライアングル18

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        • 小説 トライアングル
          18本

        記事

          トライアングル14

          第八章 秘密 4<side カオル>  約四十分後。駅前のショッピングモールの大きな仕掛け時計の扉が開いて、楽器を持った人形たちが、午後十時を告げた。何するでもなく、ぼうっと人形たちが踊るのを眺めていたら、桜子が目の前に現われた。 「ごめんね」  走ってきたのか、ちょっと顔を上気させた彼女に、僕は小さく頭を下げた。 「ううん。理由が何でも、カオルくんから会いたいって言ってくれたの、初めてだったから……」 「ごめん」  そんなことを言われたらあやまるしかなくって、僕はいたたま

          トライアングル14

          トライアングル13

          第八章 秘密 3<side カオル> 「カオル、いるの?」  トモの声がして、同時にリビングが明るくなった。帰ってきたトモが電気をつけたのだが、急に目に飛び込んできた照明の明るさが痛くて、僕は目をぎゅっと閉じて、そして返事をした。 「いるよ」 「何だよ、電気もつけないで……」  トモは買い物袋を二つ、テーブルの上に置いた。 「メシ買ってきた。今日遅くなったから」  トモの言い訳を聞きながら、今日がトモの食事当番だったこと、そして坂崎と並んで歩いて行ったトモの後ろ姿を思い

          トライアングル13

          トライアングル12

          第八章 秘密 2 <sideカオル>  僕は、イライラしながら、ある人物を待っていた。  ここは、桜子と出会った駅前のファミレスだ。それから何度か待ち合わせにも使っている。誰かに見られているようで、それだけでも居心地が悪いというのに、待ち合わせの相手は自分が呼び出したにもかかわらず、すでに十分遅刻している。イライラもしようというものだ。  それに、僕を呼び出した相手自身がまた、僕を不愉快にさせるには十分だった……もちろん、あくまでも僕の個人的な感情ではあるけれど 『トモには

          トライアングル12

          トライアングル11

          第八章 秘密 1 <stdeトモ> 「はあ……」  カオルを見送って玄関のカギを閉めると、俺はため息をついた。  そそくさと出て行くあいつ。夏原からの呼び出しなんて言ってたけれど、あれでごまかしたつもりなのか、バレバレだろ、と俺はちょっと苛々する。でも、まあ、そんなとこが可愛いんだけど、と思いながら、一方で一生懸命にウソをつくカオルに、俺は不審感と寂しさを感じずにいられない。でも、俺もカオルに隠し事をしている。いや、何度も言おうとしたのだけれどーー  午後九時三0分。彼

          トライアングル11

          今でもわからない母の日の思い出

          小説以外の更新は久しぶりです。 先日、母の日に娘に買ってもらったつぼみのカーネーションが、花を咲かせ始めています。ある程度咲いたら地面に植え替えるんですが、去年、YouTubeで見て枯れかけたカーネーションを急いで植え替えたら、小さいながらも、秋頃まで花が咲いたのです。冬を越して今もしっかりつぼみをつけて凜と茎を立ち上げていますが花はまだ。 (なんだかなー私がつぼみとか茎とか書くとなんかやらしいな) 去年のと、今年の分と共に花を咲かせてくれるのを楽しみにしています。 それに

          今でもわからない母の日の思い出

          トライアングル10

          第七章 その先にあるもの 3  <sideカオル>  ……これはもしかしなくても、デートの誘いなのか? 「了解」と打ったものの、いざ返信しようとなると、妙に気持ちがふらついた。  言葉があっさりしすぎてる? でも、長々と関係ない事柄を知らせるのもなんだし。つき合ってるならまだしも、微妙な間柄の女の子と距離感を図りながらLINEするなんてことは、僕にとっては至難のワザだ……だいたい、夏原なんかとするLINEはほとんど用件のみなんだから。慣れてないんだよ、こういうの…… 「も、

          トライアングル10

          トライアングル9

          第七章 その先にあるもの 2 <sideカオル> 「たーだいま……」  僕が家に帰ると、トモが晩ご飯を作っていた。僕たちのメシ当番は土日を除いて一日おき。週末は臨機応変だ。 「遅かったじゃん?」  トモは器用にフライパンを振りながら言った。 「うん……」  女の子にナンパされてたなんて言ったら、トモはどんな顔をするだろう。しかも、その女の子が自分に似ているのだと聞いたら? 単なる今日の出来事として話のネタにすればいいのに、でもなぜか言えなかった。それはやはり、彼女がトモに似

          トライアングル9

          トライアングル8

          第七章 その先にあるもの 1 <side カオル>  四月になり、僕たちは高校二年生になった。  新学期をはさんで、トモは十七歳になり、僕は十六歳になったけれど、トモが言うところの「誕生会」は前倒しで母さんがやってくれたので、自分たちでは特に何もしなかった。普段はできるだけ家で食事を作っているけれど、お互いの誕生日に、奢り合って外食したくらいだ。 「来年はケーキ買うかなあ」と僕が言うと「ケーキはお前が買いに行けよ」とトモは言った。 「トモってさあ、よっぽどケーキ買いに行

          トライアングル8

          トライアングル7

          第六章 デイ・ドリーム2 <side カオル>  トモの腕が、僕の背中をぎゅっと抱いた。  悪い夢を見て、うなされて、何かに怯えるトモを僕は抱きしめ返してあげるべきだったのかもしれない。彼がきっと、そう望んでいたように。  それは本当によくわかっていたけれど、でもそうしてしまったら自分は引き返せなくなることもわかっていた。トモは癒しや救いを求めているのに、僕はあっさりとその信頼を裏切ってしまうだろう。僕は傷ついていた。そして、苛立っていた。触れることも、キスすることも一瞬

          トライアングル7

          トライアングル 6

          第六章 デイ・ドリーム 1 <side トモ>  その家は、昼なお暗く、暖かい陽射しも、人の笑い声も、そこに住まう者が、伸び伸びと呼吸することすらも拒絶するような、そんな家だった。  ごく普通に、家というものが育むはずの、そこに住んでいる人々の息づかいとか、存在の痕跡とか、もっと具体的に言えば、生活の匂いとか足音とか……そんなものさえ感じられない、そこは家という名の、ただの容れ物にすぎなかった。  俺はそこで九歳まで暮らしていた。一緒に住んでいたのは、祖父母と、母と、そし

          トライアングル 6

          トライアングル 5

          第五章 曲がり角<side カオル> 「シアトルに行く」  僕はとっさに答えていた。  トモから離れる。離れたい。距離を置きたい。好きなのに? 好きだからーー  疲れたんだ。自分の気持ちを抑えることがこんなに辛いなんて思わなかった。離れたって、トモを忘れられるわけじゃない。何も解決しない。そんなことはわかっている。わかっているけれど……僕は悶々と同じ問いと同じ答えを繰り返した。  トモはどう思っただろう?  あいつは、きっとこちらに残るだろうと思っていたけれど、僕の

          トライアングル 5

          トライアングル 4

          第四章 2  片思い<side トモ>  夏になった頃から、カオルの様子が変わった。俺とカオルと、女の子二人で遊びに行った、あの頃からだ。夜遊びしたり、今までつき合いもなかったようなやつらとつるんでみたり、前はよく笑う無邪気なタイプだったのに、口数も少なくなって、あまり喋らなくなった。  そして何よりーー  まったく俺に干渉しなくなった。むしろ「避けられてる」気がしないでもないが、いい加減に「俺離れ」したんだろうと、軽く考えていた。そして、悪ぶってみたい時期が、やっとあ

          トライアングル 4