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【詩】他山の鶏(とり)
黒い雲が空を覆った
鶏(とり)たちが隔離された
一羽残らず億万が迅速に処分された
視界から卵が消えた
豚たちのホロコーストが過ぎて
羊たちは沈黙の塚にあまねく落とされた
厩舎では馬たちの処理が始まった
殺戮するために肥らせた家畜の肉を
美味しくいただいてきたわたしたち
地の牛たちはすでに狂って
血の池で踊りつづけている
蟲食に飽きたわたしたちが
踊りのその輪に入る日がくる
2023・4・16
【詩】うどんレッスン
強いられて今日もうどんに向かう
拒む術なく望むところでなく
首の廻わらぬわたしのうどんレッスン
サヌキでもイナニワでもなく
三玉百円のうどんパラダイス
春夏秋冬一日三食自業自得の一年中
米に見放された男が毎日おめおめと
(ふざけんな!)
トウフの角に頭ぶつけてうどんパーティー
ロンドンへも香港へもハワイへも行けず
新聞読めず、誰が死んだかも知らず
二進も三進も行かない男のうどんレッスン
云うだけ
【詩】吊るされる男の始末について
何ももう出てきはしないと赦しを乞うのなら
まずその男のポケットを探れ
そこに何も手掛かりが残っていなければ
次いでいつも頸から引き摺っている詩嚢の中を調べてみろ
そこにも何もないと赤い目をして訴えるのなら
その男を裸にひん剥いて、衣服と躯の、表と裏まで調べあげろ
それでも何も出て来ないというのなら
その男の痩せこけた躯に聞いてみること、これに限る
その男の細い片足を濡れた繩で括り上げ
あの根元に根
【おしらせ】月刊『北方ジャーナル』2023年8月号発売中!
◎『北方ジャーナル』2023年8月号発売中。
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〇スガの連載「よいどれブンガク夜話」第163夜は小林秀雄『島木君の思い出』――「彼の顔には忍苦の刻印が捺されていた」であります。
札幌出身で昭和十年代の人気作家島木健作と小林秀雄の交友について書きました。
挿絵は笹木桃氏。
〇同じく『北方ジ
【詩】義姉(あね)の力
ひさしぶりに見る伯父と伯母と叔母と叔父たちだった
冷え冷えとした神社の大座敷に
大父や大母も座っている
得体の知れない女中も来ている
あいかわらず細い目の能面顔である
むかし行方不明になった犬のマルもいて
せわしなく尻尾を振っている
車座になって族(うから)やからは
みんな笑ってニコニコしている
正面に神主の叔父が鎮座ましまして
飴色に焼けた顔から目を光らせている
神主の娘の三人姉妹も揃ってい