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上海の金沢へ豆腐を買いに行く 〜穴鎮めぐり 金沢古鎮〜

石川県金沢市、北陸を代表する地方都市。北陸新幹線が開通してからは首都圏からの観光客増加や、冬には蟹だブリだとメディアでちやほやされている。私自身金沢市出身なのだが、昨今の感染症により三年近く金沢に帰っていない。ちやほやもされていない。

2019年9月、上海市の金沢へ行ってみた。金沢料理の和食店や北陸物産展などではない、上海西部の青浦区に位置する水郷古鎮「金沢古鎮」だ。

上海の金沢には有名な豆腐工場の直売所があるらしい。よし、豆腐を買いに金沢へ行ってやろうではないか。突然サッポロラーメンが食べたいと言いだしてジャンボジェットで北海道へ向かうスネ夫家族のようだ。これで私も骨川家の仲間入り。


先日紹介した「新場古鎮」以上に観光っ気の少ない金沢古鎮、上海近郊にはこの「穴場の鎮スポット」が多数存在する。日本ではちやほやされている金沢だが、上海ではひっそりしている。でもそれが穴鎮の魅力なのだ。

二大王者の隣の穴鎮

超代表的水郷古鎮、上海市西部の「朱家角」と蘇州市の「周庄」と位置的にはそれほど離れていないが、知名度は大きく離れている。がんばれ金沢。そんな控えめな金沢古鎮を今から紹介してもよろしいでしょうか。私も控えめにしてみた。ちやほやされたいからだ。




高速バスという路線バス

上海市中心部から金沢古鎮までは、高速バスを利用するのが最も簡単なアクセス方法だ。街中のバス停から乗り換え要らず、わずか二駅で到着する。一見すぐ着くように思えるが、高速道路を含めて70分ほど走行するので、距離はなかなかのものだ。

一つめが乗車駅、三つめが目的地

高速バスといっても見た目は普通の路線バス。車内も普通の路線バスだが、高速道路を走行するので、シートベルトの着用が必要となる。路線バスの座席とシートベルトの組み合わせがアンマッチで新しい。

また、単一運賃ではないため、車掌さんも乗車している。座席に座っていれば車掌さんが巡回するので、行き先を伝えて運賃を支払えばOK。

超路線バス
車内もいつもの路線バスだが
シートベルト付き
目の前は車掌席
高速に乗ったらスリープモード




1000年以上の歴史をもつ金沢古鎮

金沢古鎮は北宋太平興田三年(978年)に形成され、魚や米が豊富に獲れる沢地から金沢と名付けられた。中国語簡体字では「金泽 ジンゼー」と表記する。「江南第一橋郷」とも呼ばれ、宋代から元、明、清の四王朝にかけて建造された十数座の古い橋が、今なお保存状態の良いまま残っている。

街の雰囲気としては観光地化もされていないただの庶民的な生活圏。その中に商売っ気の薄い水郷古鎮があるのだから、控えめにもほどがある。もっと派手にアピールしてもいいのだが、この奥ゆかしさがたまらない。

金沢鎮の入り口
金沢の台所 金沢農貿市場


街のメインストリートをどれだけ進んでも水郷が見当たらない。いくらなんでも水の近くに有るだろうと、小川沿いを歩くとようやく水郷の景色が広がった。どれだけ引っ込み思案なんだ。

ここは本当に観光地なのかと疑うほど、人がいなければお店もない。その静かさが晴天と相まって最高だ。レストランどころか土産物屋も営業していない。お腹が空いたがあとで豆腐を食べればいい。

1267年創建の普済橋
水面に映る建物と自然の色が美しい

水路沿いにずっと進めば、お寺や竹林が目の前に広がり、路地へ入れば小さなもの一つ一つに中国を感じることができる。遠くを眺めれば人々の生活様式がそのまま水郷古鎮に溶け込んでいるので、そのコントラストがとても面白い。

右手の黄色い建物が寺院
お寺の中はまっ赤っか
路地の瓦ひとつとっても素敵
急な生活感

本来であれば、昔の建物をそのまま利用した茶館に行ってみたかったが、この日はお休みだった。とにかく商売っ気が少ない、金が嫌いなのだろうか。




思っていた豆腐屋と違っていた

バスの走っていた大きな道路に一旦戻り、北へ向かって歩き続ける。右手に豆腐屋が見えるはずだがとにかく遠い。方角だけ調べて距離を調べていなかった。ドジっ子だ。かわいい。

わざわざ遠方から買いに来る人が大勢いるほどの有名な豆腐屋なので、さぞかし立派な建物かと思ったが、そうではなかった。

おんぼろい

柵の向こうが豆腐工場、この建物が直売所を兼ねた守衛室となっている。中に守衛はいないがおばちゃんが二人いたので恐る恐る声をかけてみる。

「可不可以买豆腐?(豆腐買える?)」

「有(有るよ)」

よかった。安心と同時に空腹感が加速した。

商品は油揚げ・厚揚げ・干し豆腐などさまざまな豆腐製品を取り扱っているが、いわゆる普通の豆腐、白い豆腐は売っていない。どちみち白い豆腐は持ち帰りに困るので、油揚げや干し豆腐を購入した。

どの袋も豆腐で満たされる

とにかくお腹が空いていたので、干し豆腐をむしゃむしゃ食べながら帰りのバス停へ向かった。醤油味とピリ辛味がとても美味しい。どこかに冷たいビールが落ちていないだろうか。




あれから三年が経過したが、あの豆腐屋はまだ存在しているのだろうか。茶館は営業しているのだろうか。金沢古鎮そのものはこれからも1000年以上の歴史を刻み続け、これまでと変わることなく静かな風景を楽しませてくれるだろう。

暑さが和らぐ秋頃に、またバスに揺られて上海の金沢旅へ行ってみたい。その時は、冷蔵庫が豆腐で爆発寸前になるので、予めスペースを確保しておかなきゃ。

うっかり2kg買った

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