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顔を合わせない接客もラクじゃない。

コールセンターで働いていた時に思ったのは、
面と向かって行う接客よりも、電話のみ接客の方が気持ちとしてはラクなのかもしれない。

お客様の話が長かったり、やけに上から目線の話し方をされて、オペレーターが少々ムッとして顔をしかめていたとしても、電話口のお客様には見えない。

私が働いていたコールセンターは、主にフリーダイヤルでかかってくるものばかりと聞いた。
無料通話できるからか多種多様な電話がかかってきていた覚えがある。

どんな流れでそんなことをお客様から言われたか分からないが、電話口で「殺すぞ」と脅されたことがあるという同僚のオペレーターがいた。

いくらフリーダイヤルだからといって、何を言っても許される訳ではないと思うが、全国には本当に様々な方がいらっしゃるんだなあと思った。

でも、「殺すぞ」「おまえは馬鹿だ。無能だ」とかどれだけ罵倒されたり攻撃されようが、目の前に攻撃されていない限り、こちら側は無傷だ。

お客様に対して「こんなことを言ってくるなんて許せない」「腹立たしい、イライラするなあ」と思っても、また別のお客様とお電話で話していたらイライラなどの負の感情はだんだん静まっていく。

お客様もコールセンターへ電話をかけることに慣れていない方もいらっしゃると考えれば、少しぐらいオペレーター側で契約情報を調べたり、ご案内に手間をとることがあっても、場数を踏んでいくと、自分のなかで乗り越える流れが自然と見えてきて何とかこなせた。

コールセンター業務をしていた中で、たくさんの場面において気分を害するケースもまあまああったけれども、対面で接していない以上は精神的なダメージは少ないと思う。
もちろん電話で繋がっていらから、その場でナイフで切り付けられるなんてこともない。

電話対応を接客と考えると、電話をされるお客様は常連のお客様ではないわけだし、基本は1回限りのお客様。
接客時間は長くても20分、短ければ5、6分で終わる。

でも、この短い接客でも自分の気づかないうちに精神的な疲労やストレスが蓄積されていっているのは、何となくわかっていた。

当時は1日7時間勤務していたが、仕事で1日に20人の人と話しているとすると、週5日で100人、1ヶ月だと400人、1年だと4800人。
リアルの世界でこんなに大勢の人と1対1で直接話すことなんてなかなかないし、仕事で誰かと話しすぎると話すことに疲れてしまい、リアルの世界では誰とも話したくない気分になった。

もともと内向的な性格のために、人とお喋りすることがそこまで得意ではない。

色んな人と話しすぎて疲れたなと感じた日の休憩時間は、とにかく1人の時間がほしく、
同僚や先輩など誰とも話さないように1人で喫茶店に行ったりして逃げていた。

たまに愚痴を話したくなる時があって、そういう時は職場の比較的仲のよい同僚の方と喫茶店に行って話した。

コールセンターの仕事はストレスに耐えられず長く続けることが難しいと言われるが、
電話で話すことがそこまで億劫ではなく精神的なストレスとの付き合い方を自分なりに見つけた人は、割りと継続して働くことができるかなと思う。

あとは、丁寧に電話に対応しながらお客様が話す内容を素早く正確に聞き取れる人が重宝されるだろうか。

でも、コールセンターの仕事は離職率がとにかく高い。
求人情報を見ていて、いつもどこかで募集が出ていることと、やけに時給が高いことの理由がわかった気がする。

早い人で1週間経たずと退職し、大体の人が半年か1年で辞めていく。
2年も続けば長いと言われる。

私は1年で辞めた。
決められたマニュアルに沿ってひたすら電話に対応して聴取するという仕事に心も疲れてしまったのもあったと思う。
それと、仕事の流れを覚えるまではもっと上手くできるためにあれこれ頑張ろうと新鮮な気持ちで取り組んでいたが、仕事の流れをひと通り覚えてしまうと業務自体に飽きてしまったのもあった。

さらに、1年いた中でも周囲の同僚が毎月数名ずつ辞めていくのをみていると、残された人間は不安になっていく。

「私もいつまでもこの仕事を続けていてもダメだな」と、自分の将来が漠然と不安になって退職を決意した。

風の噂で聞いたが、私が働いていた部署はなくなってしまったらしい。 
いずれにせよ退職しないといけない結末だったが、コールセンターで経験したことは、人間や心理のこととか色々考えさせられることが多かったような気がする。

とにかくこの時がたくさんの人間と接した期間だったようにも思う。
どこの職場に行っても電話をする機会はあるし、今後生きていく中で電話に対する苦手意識を払拭するために、まずはコールセンターで働いてみようと軽く思ったのがキッカケで働きだした。

本来は内向的な性格なのに、ここまで頑張ってコールセンターで働いたものだなと、
退職から数年経った今、ちょっと自分をほめたくなった。





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